研究課題/領域番号 |
21K01528
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
竹本 亨 日本大学, 法学部, 教授 (60551512)
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研究分担者 |
沓澤 隆司 武蔵野大学, 経済学部, 教授 (90418773)
赤井 伸郎 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | COVID-19 / ポストコロナ / 都市構造の変化 / 地価 / 人口データ / GIS / 地方財政 / コンパクトシティ |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウィルスの流行は、テレワークの推奨などを通じて人々の居住や就業形態に変化を促している。本研究課題では、将来の人々の居住に対する選好を反映している地価データや都市の中心部への人口の集中度を測る指標を活用して、ポストコロナにおける都市構造の変化、特にコンパクトシティとは異なった方向へと変貌していくのかを全国的かつ定量的に分析する。さらに、都市構造の変化が市町村財政に与える影響をシミュレーションにより明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による都市構造の変化を、①地価データと②地域メッシュ別人口データを使用して、全国の都市を対象に網羅的かつ定量的に分析する計画である。 まず令和3年度では、上記①の分析を行い、日本財政学会第78回大会での報告および『財政研究』第18巻で研究成果を発表した。次に令和4年度では、上記②の分析を行い、日本交通学会第81回研究報告会での報告で研究成果を発表した。 上記①と②の主な分析結果をまとめると、COVID-19の感染状況や被害が大きい地点ほど、流行後の地価の下落度合は大きく、地域メッシュ人口の変化率の低下幅も大きい。さらに、土地利用の高度化した地点の方がそうでない地点よりも地価の下落幅は大きく、中心から遠い地域メッシュほど人口変化率の低下幅は小さい。これらの結果は感染リスクが高い都市の中心部から郊外部に人々が移動する傾向を示しており、COVID-19の流行が都市構造を変化させる効果を持っていたことを示唆していた。 しかし、流行が3年目となると、そのような人々の動きにも大きな変化がみられるようになってきた。そこで本年(5年)度は、上記①の分析で使用した2021年までの地価公示価格データに加えて、流行2~3年目である2022~23年の地価データも使用した分析を行うこととした。これには、先行指標である地価を利用することで、23年まで分析期間を広げられるメリットがある。 分析の結果、以下のことが明らかとなった。(1)22年以降は土地利用の高度化した地点ほど概ね地価は上昇している。(2)22年以降はコンパクトな都市ほど地価は上昇している。これらは、上記①や②で示された都市構造の変化がポストコロナ下で定着するのではなく、流行前の状態に戻っていくことを示唆している。これらの成果を論文にまとめ、日本財政学会第80回大会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年(令和4年)度、新型コロナウイルス感染症の流行が研究当初に想定したものよりも長く続いており、より長い期間のデータで分析する必要性を認識するようになった。そこで、「研究実績の概要」でも説明したように、令和5年度はCOVID-19の流行2年目以降の影響を追加的に分析した。ただし、研究開始当初だけでなく、昨年度末と比べても人々の行動パターンが想定と異なる様相を呈していたため、地域別メッシュ人口データではなく、地価データを用いた追加分析を行うことで、(さらに時間の経過した)2023年までの影響を分析することとした。そしてこの結果は、すでに「研究実績の概要」でも述べたように、これまで予想していたものと異なるものであった。 その後、この結果も踏まえて、当初の計画履行のための再検討を行った。しかし、これまでの予想とは異なる追加分析の結果を受けて、その原因解明に時間を要したことから、当初計画の最終段階が予定通りには進まず年度内に完了しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で述べたように、当初の予想とは異なる追加分析の結果を踏まえ、計画を再検討する必要がある。一つは、COVID-19の流行による都市構造の変化が、それぞれの市町村の歳入や歳出に与える影響をシミュレーション分析する計画であったが、直近の人々の動きの変化の実情に即した分析手法の再検討を行う。また、地域別メッシュ人口データを使用した2022年以降の追加分析についても同様である。 その上で、ここまでの一連の研究成果の地方財政における意義を再検討するとともに、全体の取りまとめ作業とその成果発表を行う。なお、研究で得られた知見を広め、それを基にした政策を提言する著書を執筆することで、成果発表を充実させる計画である。
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