研究課題/領域番号 |
21K01530
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
水落 正明 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50432034)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 引退 / 健康 / 因果推定 / 操作変数法 / 認知機能 / 引退過程 / 高齢者 / シークエンス分析 / 縦断調査 / 新しい経験 / 高年齢者 / 格差 / 多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
引退が高齢者の健康に与える影響について、国内外においてこれまで多くの研究が行われてきたが、その結果は一致を見ていない。国内においては、近年の公的年金改革により引退の遅れや引退過程の多様化が生じており、その健康への影響を明らかにすることは、医療財政をはじめとした社会保障財政の持続可能性を考える上で重要である。そこで引退が高齢者の健康に与える影響について、同一の高年齢者を長期に渡って観察した縦断調査を用いて分析する。特に、これまでの研究で注目されてこなかった引退過程の多様性(緩やかな引退や異なる企業への部分引退など)を類型化し、そうした多様な引退過程が健康格差に及ぼす影響に注目して研究を進める。
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研究実績の概要 |
本研究では、以下の3つの研究を行い成果として公表した。 第1に、独立行政法人経済産業研究所などが実施している「くらしと健康の調査(JSTAR)」を用いて、就業継続と比べた、新しい雇用主のもとでの部分引退、同じ雇用主のもとでの部分引退、完全引退が、認知機能に与える影響について推定した。操作変数法による推定から、同じ雇用主のもとでの部分引退は、就業継続に比べて、認知機能に有意な負の効果を持っていることがわかった。一方、新しい雇用主のもとでの部分引退と完全引退は、就業継続との間に有意な差はなかった。これらの結果は、同じ職場での就業継続促進政策が、予期せぬ負の効果を認知機能にもたらしている可能性も示唆している。 第2に、厚生労働省が実施している「中高年者縦断調査」を用いて、仕事への復帰、就業継続、完全引退の間で、身体的・精神的健康がどのように異なるのかを推定した。固定効果モデルでは、完全引退に比べて、仕事への復帰は身体的・精神的健康の双方を改善させるという結果となった。固定効果操作変数法による推定では、完全引退に比べて、仕事への復帰は精神的健康を悪化させる一方、身体的健康については有意な差はなかった。先行研究とは異なり、仕事への復帰は健康を悪化させるか影響はないという結果を得たが、これは、厳密な因果推定を行うことの重要性を示している。 第3に、「中高年者縦断調査」を用いて、就業継続と比べた緩やかな/急な引退の健康効果について推定した。緩やかな引退も急な引退も、固定効果推定では身体的健康が悪化する一方で、精神的健康では有意差なしという結果が得られた。固定効果操作変数法による推定では、緩やかな引退は有意差なしとなった一方で、急な引退は身体的健康を悪化させ、精神的健康を改善するという結果を得た。健康格差を考える上で、引退過程に注目することが重要であることが明らかになった。
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