研究課題/領域番号 |
21K01544
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
野村 容康 獨協大学, 経済学部, 教授 (90383207)
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研究分担者 |
栗林 隆 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (30306401)
山田 直夫 公益財団法人日本証券経済研究所(調査研究部及び大阪研究所), 研究調査部, 研究員(移行) (30638391)
望月 正光 関東学院大学, 経済経営研究所, 客員研究員 (40190962)
高松 慶裕 明治学院大学, 経済学部, 教授 (90454016)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 直接投資 / 外国子会社 / 企業立地 / 法人税 / 税率弾力性 / 資本所得税 / 海外直接投資 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日本の国際法人課税の基本原則が全世界所得課税方式から国外所得非課税方式へと転換された状況を踏まえて、国際的な資本移動、とりわけ日本の海外直接投資と内外の税制との関係を企業のミクロデータを用いた計量分析により解明することを目的としている。その特色は、日本と諸外国で実施される課税の実態を最大限に考慮した制度分析と、国際投資論に加えて租税競争論を考慮した理論分析に基礎づけられる点にある。国際間資本移動への効果という実態的側面に照らして、日本におけるこれまでの法人税・資本所得税政策のあり方を検証することを企図している。
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研究実績の概要 |
国際的な企業立地の決定要因に関する主要な理論モデルにおいて、課税要因がどのような位置づけにあるのか整理するとともに、この分野でのミクロデータを用いた実証研究についてサーベイを行った。先行研究では、企業の異質性によって課税の効果が異なることや、どのような制度的要因か(例えばSTR(法定税率), EATR(平均実効税率),EMTR(限界実効税率)等)によって立地が左右されることなどが分かった。 以上の点を踏まえ、本研究では、東洋経済新報社「海外進出企業データ」に基づき、外国子会社配当益金不算入制度の対象となると想定される日系多国籍企業について5つの業種別のカウントデータ(被説明変数)を作成した。これにより、現地での税制を含めた、企業立地の決定要因が業種別にどのように異なるか分析を行った結果、これまで以下の諸点が明らかとなった。 第1に、立地を阻害する効果の強さでは、ほとんどの業種でEMTR<STR<EATRの順番であり、概ね理論と整合する結果であった。第2に、現地での配当支払いに適用される源泉徴収税率が高くなるほど、すべての業種において有意に立地を妨げる影響を持つことは確認できたものの、その影響はSTRに比べると遥かに低い。第3に、業種別にEATRの効果を比べると、卸売・小売業<製造業<サービス業<金融業であった。第4に、卸売・小売業における税率効果が最も弱い。STRが非有意であることに加えて、他の全ての税率尺度について業種別の弾力性は最低であった。 また、クロスボーダーの配当が間接税額控除制度の対象となる現地関連会社数(被説明変数)を推定したところ、EMTRが非有意となったほか、他の税率尺度について相当程度弾力性が下がった。同制度の下では、最終的に日本の法人税が適用されるため、現地での税制の効果は弱まると想定されるが、本分析の結果はこの点を実証面から裏付けるものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、合計6回の研究会を開催し、各研究者がそれぞれ分担する課題に沿って研究経過の報告を行うことができた。これら一連の活動を通じて、本研究の基本テーマである海外直接投資と課税との関係性について、この領域で先行する理論・実証研究についてサーベイを行うとともに、日系多国籍企業の立地に関するカウントデータを用いた実証分析により、暫定的ながら概ね想定される理論と整合的な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
日系多国籍企業の立地選択に対する課税の効果について、これまで業種別に異なる結果が得られたことの要因や背景を明らかにすべく、それぞれの産業ごとの国際経営戦略について引き続き調査を進める。また、企業立地に与える課税要因以外の経済的・制度的な要因の効果について検討し、想定される理論と対照してその意味するところを考察する。加えて、頑健性の観点からも、内生性を考慮しながら説明変数の組み合わせを変更するなどにより分析方法の改善・精緻化に努める。
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