研究課題/領域番号 |
21K01546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
中馬 宏之 成城大学, 社会イノベーション学部, 名誉教授 (00179962)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | プラスチック成形 / プレス成型 / トヨタ九州工場 / トヨタ高岡工場 / CAE / AI/人工知能 / 金型保全・機械保全 / 技術員 / トヨタ / MES / 製造現場 / デジタル化 / 知的熟練 / 変化と異常への対応 / トヨタ生産方式 / AI化 |
研究開始時の研究の概要 |
研究では、生産職場の過去の知的熟練(SI)の事例と当該職場の現在のSIとをつぶさに比較検討する形で、それらの職場に特徴的なSIの進化プロセスを臨場感をもって辿る。さらに、各時代を特徴付けてきた生産システムやその構成要素である材料・金型・機械装置及び製品/部品特性などの類似性や異質性をも明確に考慮する。その結果、各々の時代に典型的なSIの動態特性を明らかにすることができるだけではなく、SI自体が、投入材料・金型・機械装置やそれらの均一性・複雑性・デジタル化度、それらを包摂する生産システム上のハードウェア・ソフトウェア特性によってどのような形で規定されがちであるかをより的確に同定できる。
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研究実績の概要 |
本年度は、コロナ禍の到来と共に遅れていた次のような実地調査をトヨタ九州工場ならびにトヨタ本体の高岡工場にて実施し、すべての調査箇所についての詳細なフィールド調査録を作成した。各々の調査に際しては、全トヨタ労働組合連合会ならびに中部産業・労働政策研究会事務局からの全面支援をいただき、各々の調査箇所につき2日間に亘る綿密な聞き取りを約10名前後の方々に五経局頂きながら実施した。1)トヨタ九州工場・プラスチック成形部門の製造現場、金型保全・機械保全、これらの現場・保全部門を統括する技術員室、2)トヨタ九州工場・プレス成型部門の製造現場、金型保全・機械保全、これらの現場・保全部門を統括する技術員室、3)トヨタ九州工場・鋳造部門の製造現場、金型保全・機械保全、これらの現場・保全部門を統括する技術員室、4)トヨタ高岡工場・プラスチック成形の製造現場、金型保全・機械保全、これらの現場・保全部門を統括する技術員室、5)トヨタ高岡工場・プレス成型製造現場、金型保全・機械保全、これらの現場・保全部門を統括する技術員室。これらの調査終了後には、昨年度に実施した6)小島プレス工業本社工場・プラスチック成形職場の製造現場、金型保全・機械保全、これらの現場・保全部門を統括する技術員室、ならびに、トヨタ系列のほぼすべての生産職場にCAE関連技術で貢献しているトヨタプロダクションエンジニアリングへのプラスチック成形・プレス成型部門担当のエンジニア達からの聞き取り録も作成した。加えて、調査実施前後において、現在のトヨタ生産システムのさらなる進化プロセスに必須のDXならびにAI関連の諸技術の動向やLLMs(「Large natutral Language Models)に代表される最新AI技術の特性やその社会に与えるインパクト等々について、包括的な文献サーベイを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
先にも触れたように、深刻なコロナ禍の到来により、包括的な実地調査をトヨタ九州工場、トヨタ高岡工場共になかなか受け入れていただけず、2年以上の足踏み状態がつづいていたが。ただし、昨年度は、コロナ禍からの急速な回復が見られた結果、全トヨタ労働組合連合会ならびに中部産業・労働政策研究会事務局からの全面支援がいただけたおかげで、後れていた上記工場への調査を一気に実施することができて。現在は、上記の1)トヨタ九州工場・プラスチック成形部門、2)トヨタ九州工場・プレス成型部門、3)トヨタ九州工場・鋳造部門、4)トヨタ高岡工場・プラスチック成形部門、5)トヨタ高岡工場・プレス成型部門、6)小島プレス工業本社工場・プラスチック成形部門、7)トヨタプロダクションエンジニアリングに関する調査録がほぼ完成し、研究論文にまとめるべく、鋭意努力中である。なお、こういう現場にかなり入り込んでの調査であるため、調査時に聞き取りできた内容について、受け入れ先の方々からのフィードバックが必須であるが、この点に関しては、特に、中部産業・労働政策研究会事務局の協力を得て、これから該当職場に事実確認を含めて送付予定となっている。また、調査時点では、まだLLMsの代表格としてのChatGPTなどのAIツールが利用可能でなかったが、昨年の12月から同種ツールの急速な普及が進展してきたので、本研究でも、この分野のプロ達への聞き取りと共に、文理に跨がる関連文献について包括的なサーベイを開始している。
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今後の研究の推進方策 |
本調査のインプリケーションを探るために、マクロ的にはxEV車等で大きく後れをとっている日本の自動車産業の行く末に関する論点整理を行うと共に、半導体産業に続いて自動車産業の競争力低下まで起きてしまうと大変なことになるので、調査で明らかになったミクロ的な生産現場の弱み・強みを押さえながら、DX化やAI化が、同産業にどのような変容が必要なのか、そのために日本の自動車産業にとってどのような対応が可能なのかについて、調査に参加してくれた外部研究者(東洋大学・久米功一教授、一橋大学(現武蔵大学)・神林龍教授、東京大学・大橋弘教授)と共に包括的な議論を展開したい。また、本調査では、DX化で先端を走っているはずのトヨタ諸現場でも、想像以上に導入が遅れていたこと、特に各装置がほぼStand Alone状態で、それらをネットワーク化するためのMESの導入など未だ未だ夢のその先状態であったことに仰天してしまった。実際、リアルタイムで生産情報(プロセス処理情報+設備・機械の状態等々)をGoogle Map風にズームイン・ズームアウト可能にするMESの導入がされておらず、技術員の方々からも「MESってなんですか」という驚くような質問が数回寄せられた。たしかに、何のためのDX化やAI化なのかという本質的な問に答えることなくむやみにDX化やAI化を進めることがとても危険である。ただし、おそらく製造現場におけるDX化やAI化のインパクトは、担っておられる方々への人的資本投資という側面を考えると、避けては通れない製造現場の進化過程だと考えられる。さらに、製造業のサービス化の流れを追求して製造業の競争力を全体最適の視点から強化するためには、製造現場のDX化・AI化と共に、企業ならびに企業群におけるERP等に代表されるICTシステムとの統合が必須だと思われる。今後の研究では、この点にも十分に留意したい。
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