研究課題/領域番号 |
21K01547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
白石 浩介 拓殖大学, 政経学部, 教授 (10456303)
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研究分担者 |
岡崎 哲郎 拓殖大学, 政経学部, 教授 (20275960)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | Value Added Tax / Pass-through / Tax incidence / B to B transactions / Difference-in-difference / Point-of-Sales / Value Added tax / Market condition / Imperefect competition / 消費税 / 税の転嫁と帰着 / 不完全競争 / ゲーム理論 / POSデータ |
研究開始時の研究の概要 |
消費税の増税においては、税抜き価格が増減することにより、必ずしも税率通りに税込み価格が変化しないことがあります。これが消費税の転嫁問題です。本研究では軽減税率、転嫁対策など転嫁に影響する要因が増えている消費税に関して、理論および実証研究を行うことにより、転嫁メカニズムを巡る新たな知見を得ることを目指しております。消費税の転嫁をより厳密に分析する手法を開発した上で、独自性のあるデータを導入することにより、消費税の実態を明らかにしていきます。以上の研究を通して、日本の消費税制の有効性を高めるための政策の選択肢を提示します。
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研究実績の概要 |
本研究は、日本の消費税研究において、これまで見落とされがちであった価格転嫁の問題を取り上げ、実証分析を中心とする研究を行うことを目的とする。その際に最先端の理論・実証研究の成果を取り込むことにより、国際比較が可能な研究の推進を目指す。本年度においては、実証研究を深化させ、さらに研究分担者による共同研究を実施した。 国際財政学会(IIPF)における報告は、昨年度の研究論文を大幅に改変したものであり、日本の2019年の消費増税における転嫁の実態をより厳密に検証し、それを海外研究者に発信した。日本財政学会における報告は、中間財の取り引きにおける転嫁という新テーマに取り組んだものであり、実証分析を実施した。並行して研究分担者が、中間財における転嫁に関する理論研究に従事することから理解を深めた。さらに研究成果を上述の実証分析と融合する共同研究を展開した。 これらの研究の意義は以下の通りである。第1に、一昨年度における国際学術誌における論文掲載に加えて、国外にて報告をすることにより、本研究が目指す国際水準の学術研究の展開を実現した。第2に、中間財における消費税の転嫁については、国際的にみても研究蓄積に乏しく、この未解明のテーマに先駆的に取り組んだ。消費税における仕入れ税額控除の存在により、実務家などは中間財では消費税が完全転嫁されると見なす傾向がある。欧州諸国では消費税の転嫁が日本に比べると円滑なので、この問題が顕在化することが少ない。しかし、本研究では完全転嫁が保証されないことを、理論面、実証面の両面から明らかにした。第3に、共同論文の作成である。理論家と実証家という異なる専門性を有する研究者が互いに知見を出し合い、さらに本務校を同じくするというメリットを生かして密接な協力体制を構築することから、上述の新分野に取り組んだ。以上により当該分野における研究の蓄積に寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度までは、進捗状況がやや遅れていたが、令和4年度には順調に進んだ。昨年度までの遅れについては、実証分析における因果推論の手法(DIDほか)を習得し、これを用いた研究論文を作成することにより挽回した。国際学会における報告討論により、さらに先進的な実証分析方法について助言を得ており、将来にわたり研究内容の高度化が期待できる水準に達した。また、当初計画においては、(i)未解明分野である中間財取り引きにおける転嫁の実証分析が望まれること、(ii)国際的にみても近年の消費税における転嫁研究は、実証分析に偏りがちであり、理論研究を進める必要があること、という課題を掲げていた。これらの課題に取り組み、日本のデータを用いて実証分析を行い論文を作成し、国内学会において研究報告をした。さらに国際学術誌における先行研究を発展させる形で理論モデルの構築を図った。上述の実証分析と融合することにより新論文を作成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は研究最終年度である。研究の推進方策は、以下の2つである。 第1に、当初計画において、POS日次データを用いた実証分析を計画した。計画通りに新たな実証研究に取り組むものとする。但し、当初計画において意図した価格の粘着性分析ではなく、2021年4月の日本の消費税改革を取り上げた研究を行う。具体的には、消費税における総額表示方式への復帰が、転嫁に与えた影響について検討する。共同研究であることの強みを生かすべく、実証分析に加えて理論分析を進めるものとする。 第2に、研究のまとめである。前年度までは、当初計画に掲げた研究テーマになるべく多く取り組むことを優先させていた。研究報告の場とした国際財政学会、日本財政学会は、いずれも完成論文の提出を求めるので、多くの学術論文を作成することができたが、国際学術誌への投稿出版までには至ったものが少ない。研究のまとめとして投稿出版の作業に取り組むものとする。
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