研究課題/領域番号 |
21K01557
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07060:金融およびファイナンス関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
伊藤 彰敏 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80307371)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ユニバーサル・バンク / IPO / 設備投資 / 独占力 / 期間構造 / 経済効率性 / 利益相反 / 資産運用 / 金融グループ / メインバンク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ユニバーサル・バンクが経済効率性にどのような影響をもたらすかを再検討することを目的とする。具体的には、我が国でユニバーサル・バンクを形成している金融グループに焦点をあて、商業銀行、投資銀行、資産運用を併せ持つことでグループ全体としてどのようなインセンティブが生じるかを詳細で長期のデータを用いて検討し、またユニバーサル・バンクを形成するプロセスや組織としての統合形態がそうしたインセンティブを実現する能力にどのように影響するかを検討する。
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研究実績の概要 |
令和4年度における第一の研究実績は、ユニバーサル・バンクにおける商業銀行業務と投資銀行業務の相互関連について示唆を得るために、新規株式上場(IPO)を実施した企業の価格形成過程(ロードショウ、ブックビルディング、公開日の初値形成)に関するデータを用いて分析したことである。分析結果によれば、(1)機関投資家を対象にしたロードショウではIPO企業の価値評価に関する私的な情報は表明されるものの、市場における初値形成には個人投資家を中心とした市場センチメントが大きな役割を果たしていること、(2)ユニバーサル・バンク・グループが主幹事を務める場合にも、IPO銘柄の機関投資家への配分が私的情報の表明とは相関しておらず、ユニバーサル・バンクの持つ情報優位性がIPO株の効率的な価格形成に生かされていないことが示唆された。第二の研究実績は、企業とユニバーサル・バンクとの借入関係が企業の設備投資にもたらす影響を、借入銀行集中度と期間構造の観点から分析したことである。分析結果によれば、(1)借入をユニバーサル・バンク一行に集約するよりも、ユニバーサル・バンク間で分散化した方が設備投資を誘発する確率が高まること、(2)借入期間を長くした方が、設備投資の実施には有利であることが判明した。企業が借入をする場合、ユニバーサル・バンクは情報独占力を行使するが、企業側は借入行を多様化して交渉力を高めることや借入期間を長くすることで対処している実態が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユニバーサル・バンクが色々な金融事業を内包することの影響を、IPO株の価格形成と貸付先企業の設備投資行動の二点を通じて分析できた。どちらの場合も、ユニバーサル・バンクの独占力が必ずしも圧倒的ではなく、企業は何らかの緩和手段を行使していることが示唆され、新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、研究計画書にある③顧客企業の財務業績、ユニバーサル・バンク自身の財務業績に関する分析を推進する。具体的にはユニバーサル・バンクの顧客企業のリスク・テイク、業績などを検討し、さらにユニバーサル・バンク自身のリスクとパフォーマンスの分析を実施する。
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