研究課題/領域番号 |
21K01595
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00334300)
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研究分担者 |
松中 学 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20518039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | コーポレートガバナンス / 会社法 / 経営組織 / 会社形態 / 経営慣行 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、企業に関する法的なデザイン、株主総会や取締役会等の機関の設計や権限配分、あるいは株式会社や有限会社といった会社形態の設計が、どのように経営との間で相互作用しながら発展し、その結果としてどのように経済発展に影響を及ぼすのかを、立法資料や企業内の資料、あるいは会社数や取締役に関するデータを使って検討し、そこから経済発展に貢献するような企業の法的デザインについて明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
今年度は、特に機関設計に注目しながら、法と経営との相互作用に関する歴史的な検討を行った上で現代の状況についても検討を行った。まず、戦前期の日本に関して機関設計と会社形態の両面において法と経営がいかに相互作用をしたかについて、まず機関設計と会社形態との関係についてロエスレル草案の内容を検討を行った上で、機関設計の発展とそこにおける経営の影響について、法律取調委員会の速記録を見ながら検討を行った。また、このような法が経営にどのような影響を与えるかについて、ステイクホルダー間の関係構築を法が支える側面に注目し、このような役割について戦前の判例にも踏み込んで検討を行った。以上の内容については『企業会計』誌、慶應義塾大学会計研究室における講演や立正大学経済研究所公開講座におけるパネルディスカッションにおいて報告されている。また、関連して、戦前における労働法制と企業経営の相互作用に関しても検討し、労働法による保護が弱い状況において企業が労働者保護の主体となる過程を明らかにしてきた。この内容は『組織科学』誌掲載論文に含まれている。また、新しい検討として、戦前における税法と経営との関係についても予備的検討を行った(『税務弘報』)。 現代における取締役会の役割、とりわけ近年の取締役会の構成の変化やそれに伴う役割の変化については松中が検討を行ってきた。まず、買収防衛策との関係で取締役会の役割の変化について論じ(MARR Onlineに掲載)、また取締役会が経営者の利益相反等を判断するための枠組みのあり方についても検討した(『資料版商事法務』における2件の判例評釈)。また、関連して株主の影響力は増大した状況における経営者の役割については清水が検討を行った(『運輸と経済』)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記で述べたように、戦前期の日本における機関設計と会社形態の関係やこの両者に関する法と経営の相互作用についてはかなり詳細に踏み込んだ検討を行っており、その状況がある程度明らかになっている。また、労働法制についても労働法制の変化を先取りする形で経営が労働環境の向上に取り組む姿についてもある程度検討を行うことができている。さらに、現代の取締役会の役割の変化についても法と経営の相互作用という側面から検討を行う等、総じて順調に進んでいる。また英国や米国の比較についてもコーポレートガバナンスの変化についての検討を進める等、一定程度の視点が見られる。 一方で、新型コロナウイルス感染症による出入国制限や学内における出張制限等が予想以上に長引き、参加を予定していたGlobal Meeting on Law and Societyの参加を取りやめざるを得なくなり、また現地調査についても見送らざるを得なくなった。このため、英国・米国との比較についてはインターネット上の資料の調査のみとなっており、予定していたほどの進展が見られなかった。 しかし、総じてみれば研究としては順調に推移していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は清水・松中がアメリカ法社会学会(Law and Society Association)において本研究の成果報告を予定しており、また海外における調査なども開始する予定である。とりわけ、現代の株主の影響力の増大や取締役会の役割の変化を踏まえて、いわゆるモニタリングボードの方向に変化しつつある日本の取締役会とすでにそのような変化がある程度起こっている米国・英国の状況との比較やそのような状況に至るまでの歴史的な経緯に関する検討を予定している。 また、これに並行して、本研究を踏まえた社会的な貢献の可能性も探っている。すでに公益社団法人関西経済連合会とはコンタクトしており、今後は研究会での講演や同会がコーポレートガバナンスに関して出す提言へのアドバイス等を行う予定である。
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