研究課題/領域番号 |
21K01596
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
千葉 芳広 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20312340)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 帝国医療 / 医療史 / 病院史 / フィリピン史 / 経済史 / 病院 / 市場 / 慈善 / 貧困 / 医療 / 地域 / 社会経済史 / フィリピン |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀後半から20世紀前半のフィリピンにおける病院制度の形成を、地域社会との関係から考察することが研究課題となる。とりわけマニラと周辺農村を比較することで、現地住民にとっての病院制度の意義が明らかとなる。地域医療の形成過程における病院の存在および非存在の歴史的意義は、貧困問題や生活リスクへの弾力性(レジリエンス)と関連付けて調査することを焦点としている。またフィリピンの医療制度の特徴および問題を明らかにするため、公衆衛生や経済開発、貧困などの側面から包括的にアプローチする。病院制度の経済史的分析を通じて、パンデミックにおいて医療が抱える課題の解明に貢献することが可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究は、19世紀後半から20世紀前半のフィリピンにおいて、病院を内包する地域医療の形成を考察し、現地住民生活の近代化への影響を評価することを目的としている。2022~23年度には、都市と農村の比較を通じて、対象地域住民の生活と疾病を把握する計画である。すなわち地域独自の自然や産業を前提とした経済開発の結果として、階層性を反映した労働や生活が健康とどのような関係にあるのかを考察する研究の実施を予定している。そのために、1922年度にはスペイン調査などを計画していた。 1922年度の研究の実績としては、第一に、著書『帝国主義とパンデミック: 医療と経済の東南アジア史』(吉川弘文館、2023年)を出版することができた。近代東南アジアにおける医療の展開を帝国医療と現地社会の関係から論じ、フィリピンの病院制度の展開を広い脈略から考察することができた。病院制度の地域を超えた広まりや地域間の比較といった観点からも、重要な成果であった。 第二に、当初の予定通り、スペインの公文書館にて史料調査を行うことができた。19世紀後半におけるフィリピンの医療を、広く帝国統治の視点から調査し考える機会に恵まれた。また発見した史料によって、これまでの研究の史実を補完するだけでなく、スペイン統治下の病院は、ハンセン病患者隔離の性格が想定していた以上に強かったこともわかった。 第三は、アメリカ統治下の病院について、豊富な統計史料を整理することができた。地方病院の設立動向についてだけでなく、マニラの病院について入退院患者の職業分類のデータを限定ながら入手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究は、当初の計画以上に進展していると言ってよい。数量的データを中心として基本的史料を収集、整理し、全体的な論旨を形作ることができた。また東南アジア全体の医療史を俯瞰する著書を出版することで、本研究の分析視角や意義を確認することも可能となった。 ただし、史料の読み込みは未だ手付かずの部分もあるため、さらなる研究の進展が必要である。今後の海外調査では、渡航に伴うトラブルを回避しつつ、早めに調査を実施することが肝要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究作業では、引き続き海外調査を行うと同時に既存の史料を読み進めて、学会発表および論文の準備を行う。海外調査では、アメリカ合衆国とフィリピンの公文書館の調査を進める。アメリカ公文書館の調査は、当初の予定より1年前倒しで実施する。 2024年度には、研究発表、論文草稿作成を実現するようにしたい。そして、その他の研究と統合して、フィリピン医療の社会経済史に関する専門書の出版を進める。
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