研究課題/領域番号 |
21K01608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
池尾 愛子 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70176080)
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研究分担者 |
大槻 忠史 摂南大学, 経済学部, 講師 (20809066)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 日本経済思想 / 天野為之 / 学理と実際 / 山口高等商業学校 / 経済学・経済学教育の制度化 / 朝河貫一 / E.F.ペンローズ / 名古屋高等商業学校 / 長崎高等商業学校 / 東洋経済新報 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の経済思想史を振り返るとき、近世から近代へと継承された観念や方法がある。言い換えれば、近世から近代へと継承された観念や方法には、近代経済思想のグローバル・ヒストリーと重なるものがある。明治期の経済思想・経済学方法論をみるとき、「学理と実際」が共通スローガンに掲げられていたことに注目する。明治時代の傑出した経済学者 天野爲之(1861-1938)にスポットライトをあて、日本経済思想史の連続性とグローバル・ヒストリーとの共通点を照らし出す。天野は経済学を使って経済問題を考察し、一つの経済問題・経済政策を考察する際には賛成と反対の両方の見解をみるように教育されていた。
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研究実績の概要 |
池尾の天野為之伝の和文原稿については、2022年10月に出版社より勧められて加筆し、2023年3月に加筆原稿を提出した。5月現在、9月出版に向けて準備が進められている。アメリカ人の研究書に対して、オランダの専門誌向けに書評を書き、欧米の経済学の相違を観察することができた。 日本経済思想史学会と台湾中央研究院台湾史研究所との合同シンポジウム(テーマ「経済思想と産業経営からみた台湾―18世紀から20世紀-」)は2022年8月からさらに延期されたものの、現時点では、8月に東京で2日間にわたるシンポジウムを開催することになっている。2023年2月にオンラインで顔合わせ会議を実施し、自己紹介とシンポジウム論文の概要について伝えあった。 本プロジェクトメンバーは、日本経済思想史学会の会員の一部と協力して英文書籍 A History of Japanese Economic Thought の準備を進めたところ、企画案がイギリスの出版社の査読をとおり、2022年8月に契約を結ぶに至っている。16世紀以降、400年の歴史をカバーできそうで、本プロジェクトの一環に位置づけることにした。池尾は貝原益軒の家道訓や楽訓に注目して、彼の家計管理や幸福思想が西洋の経済思想とよく似ていることを日本経済思想史学会の例会などで発表してきている。 大槻は、2022年度は、昨2021年度後半に収集した資料に基づく報告と新たな資料収集を主に行った。前者については、特に山口高等商業学校を対象として、20世紀初頭の日本の地方部における経済学の制度化及び人材の排出について考察した。後者については、1920年代に新たに設置された地方部の高商を対象として、同様に経済学、及び経済学教育の制度化に関する資料を収集した。これらについては、赤松要(名古屋高商)の与えた影響にも注目し、分析の上、次年度に報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
池尾の天野為之伝の和文原稿は、2022年10月に出版社より勧められて加筆し、2023年3月に加筆原稿を提出した。ひとえに天野為之の偉大さにより遅延が生じたといわざるをえない。しかしながら、天野研究の進展は、日本の経済思想史400年のプロジェクトにプラスの影響を与えているので、プロジェクト全体としてはそれなりの速度で進んでいるといえる。 大槻は、COVID-19による社会的状況により、部分的にできていなかった資料収集に時間を割いた。これにより、昨年度は山口を主な対象とした地方部における経済学、及び経済学教育の制度化に関する報告を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
日本経済思想史400年を英語で書きとおすプロジェクトは、2024年10月に原稿をイギリスの出版社に提出すべく準備を進めてゆく。天野為之伝の英語版を作成する。 コロナ禍で止まったり遅れたりしていた、国際交流・国際共同研究プロジェクトも再開しつつある。王新生 北京大学教授は、2020年の来日は叶わなかったものの、2023年6月に来日し、2024年3月まで日本に滞在する予定である。G.ディステラート・ボン大学准教授が2023年9月に来日予定で、9月半ばに東京でセミナーを開催する予定である。 日本経済思想史学会と台湾中央研究院台湾史研究所との合同シンポジウム(テーマ「経済思想と産業経営からみた台湾―18世紀から20世紀-」)は昨2022年8月さらに延期されたが、2023年2月にオンラインで顔合わせ会議を実施し、8月に東京で2日間にわたるシンポジウムを開催することになっている。 大槻忠史はまず、引き続き資料収集を行い、昨年度後半の資料分と合わせ、1930年代における経済学、及び経済学教育の制度化について、考察を進める。次に、昨年度に引き続き、そこでの赤松要やE. F. ペンローズらの実証分析が与えた影響に焦点を当て考察を進める。また、赤松ら本人についても、彼らの分析手法や理論の展開がどのようなものであったか、戦後も含めて、分析を行う。
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