研究課題/領域番号 |
21K01612
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀樹 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (20452112)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | イングランド銀行 / 欧州連合(EU) / 欧州銀行同盟(EBU) / 国際銀行監督 / 英国銀行法 / バーゼル銀行監督委員会 / 欧州第一次銀行指令 / 金融安定理事会 / 銀行監督 / EU統合 / 欧州資本市場同盟 / 欧州復興基金 / グリーンディール政策 / EU離脱 / 欧州委員会 |
研究開始時の研究の概要 |
英国はEU離脱を正式に決定したが離脱後の取りまとめに苦心している。本研究は英国のEU離脱の要因の一つに「英EU間の銀行監督の溝」があると考え、アーカイブを用いて英国とEUの銀行監督のアプローチが異なることを実証する。特に英国が国際協調を目指すバーゼル銀行監督委員会とどのように歩調を合わせ、逆にEUの銀行指令と一線を画してきたのかを明らかにする。具体的には1974年から88年までを対象に内部史料を使って英国とバーゼル委員会の銀行監督の方針を分析する。EU離脱問題については移民やEU拠出金負担の問題が主な要因として俎上にあがる傾向にあるが、本研究は銀行監督の視点からその淵源に迫ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は英国とEUとの銀行監督の相違点と共通点を析出するにあたり、第1に、EUの銀行監督方法論を欧州銀行機構(EBA)の政策分析を通して、その特徴を明らかにした。ユーロ域(2023年現在20か国)をベースとする欧州銀行同盟(EBU)を軸心とするブリュッセルの法規制による統治方法は現在3分の2が発足に至り政策を実施している。また、EBAは英国離脱後のEU27か国を包摂する、より広範な銀行規制機関である。EBAは詳細なガイドライン(指針)の発出とストレステストの実施による膨大なデータベースの集積、そして監督当局同士の利害関係を仲裁する役割まで担っている。 第2に、グローバルな銀行規制・監督に焦点を移し、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)の政策分析と意義を説いた。これは、BCBSが発足当初から英国のエキスパートを中枢に据えた銀行監督協調の取り組みを行っており、英国、特に中央銀行であるイングランド銀行の方法論とも重なるところが大である。 以上の第1の点、及び第2の点について、申請者は単著のディスカッションペーパーとして発表した。 さらに、日本金融学会全国大会の英語セッションにて、①EUと②国際機関の銀行監督アプローチに多大な差異があることを論じ、報告することで、討論者との有意義な学術交流を実施した。さらに、日本EU学会の全国大会では、EBUの10年間を総括し、欧州資本市場同盟(CMU)といかに相互に作用しているのかを探求すべく論文を執筆し発表した。これはフロアからの関心を集め、多くの質問を受けることで申請者にとって不可欠な今後の課題を得た。 最後に、2023年3月に英国での研究を行った。具体的にはイングランド銀行歴史資料室で現地でのみ閲覧できるアーカイブを解析した。また英国公文書館、LSEアーカイブでの現地史料の閲覧を通し、未開拓領域の研究の基盤となる史料に当たる機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国と大陸欧州(EU)との銀行規制のアプローチの相違を解明すべく、英国の歴史的な銀行監督の法制化の解析をアーカイブを用いて実施した。 また、フランス・パリ第8大学、フランス・リール大学等との研究者で構成する国際共同研究により刊行される銀行監督史のプロジェクトに参加することとなり、本の出版に取り組めた。 さらに、2023年3月に実施した、英国での短期出張により、イングランド銀行アーカイブ(Bank of England Archives)でバーゼル銀行監督委員会と同行との関係に関する重要な文献に当たることが可能となった。なお、英国国立文書館(The National Archives)においても、今後の布石となる銀行監督の多様性と協調に関する基盤となるサーベイを行えた。 そして、時代がやや新しくなるが、1999年の欧州単一通貨ユーロに関する英国からの分析を集積させたLSE(The London School of Economics) Libraryのアーカイブを閲覧することができ、EUと英国の観点の差異を汲み取るべく研究を進める現代的な材料を分析する機会を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は基盤研究(C)を進めつつ、当該時期の具体的な政策課題を詳細に取り上げることを目標とする。さらに、国際共同研究研究強化(A)の採択による英国在外研究に繋げていく予定である。 具体的には、①これまで収集した4か所のアーカイブ(英イングランド銀行歴史文書室、英国公文書館、フランス中央銀行歴史文書室、国際決済銀行歴史文書室)をここで一度整理し、論点を明らかにすること、そして、②英国イングランド銀行の銀行監督の特質を金融政策を含めた同行の重厚な経験値から総合的に位置付ける。そのために、先行研究の成果を着実にサーベイすることの2点を準備として取り組んでいく。
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