研究課題/領域番号 |
21K01617
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
山本 裕 獨協大学, 経済学部, 准教授 (10550113)
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研究分担者 |
前田 廉孝 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90708398)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 日本経済史 / 戦後復興期 / 闇市場 / 煙草 / 専売 / 山梨県 / 日本専売公社 / 大蔵省専売局 / 流通 / 闇物資 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,戦後復興期日本の闇物資流通・取締とそれに対する民衆の認識を考察し,双方間の関連性を解明する。 本研究は,甲府専売支局が闇煙草の摘発時に作成した『専売取締事件簿』と山梨の地方紙に掲載された関連記事を分析し、①闇物資の流通実態,②闇物資取締の実態と限界,③闇物資流通・取締に対する民衆の認識を解明する。 これにより本研究は,(ⅰ)闇物資流通の解明から経済史研究,(ⅱ)闇物資流通と取締に対する民衆の認識の解明から社会史研究にそれぞれ貢献し得る。 近年は海外でも闇市場(black market)の考察が進展しつつある研究動向を踏まえれば,本研究は闇市場の国際比較へ向けた端緒を開く意義も有する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の2年目にあたる令和4年度は,本研究課題の遂行に必要な史料・データの収集・分析と先行研究のサーベイを令和3年度に引き続いて実施した。研究代表者と研究分担者が実施した作業は以下の通りである。 研究代表者(山本)は,令和3年度に国立国会図書館で収集済の『山梨日日新聞』と『山梨時事新聞』の記事を精読し,分析を進めた。両紙の論調は前者が山梨県の「御用新聞」的正確,後者が革新的と異なったが,いずれも山梨県を基盤とする地方紙であった。それゆえに,全国紙が扱わないような地元の詳細な情報が掲載されている。しかし,掲載された地名・人名等の情報を把握する必要があり,それに必要な関連情報の収集を進めることによって分析した。 研究分担者(前田)は,西南学院大学図書館所蔵『専売取締事件簿』(大蔵省専売局・1948年)の分析を進めた。同史料は甲府専売支局が1948年に実施した煙草専売法違反関連取締の対象者約500名の取調内容を網羅的に記録し,令和3年度までに記載内容のデータベース化を完了している。そこで,令和4年度には同データベースの分析を進めた。その結果,第1に甲府専売支局管内の煙草専売法違反事件は,農業が盛んな同地域の性格を反映し,種子・苗の密売買と密栽培を中心としていたことが判明した。戦後混乱期における闇物資流通の形態は,流通地域の特性に規定されていた。第2に同支局管内における紙巻煙草の闇流通は,同地域もしくは茨城県など近隣県を含む農村地域で密栽培された葉煙草を原料としていたことが判明した。既往研究は東京など主要都市の闇市が広域的な闇物資流通のハブとして機能していたことを指摘した。しかし,上記史料の分析より農村地域の自給自足的な闇物資流通の実態が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は, (1)塩事業センター塩業資料室・西南学院大学図書館所蔵『局報』など大蔵省専売局関係史料に依拠し,闇煙草取締に関する法令と取締体制の整備過程を分析する, (2)『専売局年報』など大蔵省専売局刊行統計資料に依拠し,戦後復興期における全国的な取締状況を概観する, (3)西南学院大学図書館所蔵『専売取締事件簿』に依拠し,甲府専売支局管内における闇煙草流通の実態と取締状況を分析する, (4)国立国会図書館・山梨県立図書館所蔵『山梨日日新聞』・『山梨時事新聞』に依拠し,(1)-(3)の分析結果を踏まえつつ,闇煙草流通・取締に対する民衆の認識を考察することが目的である。これらの作業に必要な史料・データの収集はほぼ全て完了し,令和4年度より研究代表者(山本)と研究分担者(前田)はそれぞれ個別論文の執筆に着手している。したがって,3年計画である本研究課題の2年目として順調に進展させることができたと判断しうる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に研究代表者(山本)と研究分担者(前田)はそれぞれ以下の作業を進める予定である。研究分担者(前田)は,本研究課題の基礎的な史料である『専売取締事件簿』を令和4年度に分析した成果をまとめ,あわせて令和3年度収集の『専売統計年報』(大蔵省専売局/日本専売公社・各年版)記載統計データより把握した煙草専売法違反の全国的動向とあわせて,”Japan’s Suburban Black Market in the Late 1940s: Illegal Tobacco at the Periphery of Mount Fuji”と題したディスカッションペーパーにまとめる。本ディスカッションペーパーは既に執筆を開始しており,令和5年度夏頃を目処に完成する予定である。 以上の成果を踏まえ,研究代表者(山本)は『山梨日日新聞』・『山梨時事新聞』の精読より得られた分析結果をまとめ,闇物資流通・取締に対する民衆の認識を考察する。 上記の作業と並行し,論文執筆に必要な補充的な史料の調査・収集を甲府市,富士宮市,静岡市の各中央図書館で実施する。こうして得られた成果は国内外の学会・セミナー等で報告し,同分野の研究者と議論を進めていきたい。そして,令和5年度内に査読付き学術誌へ投稿する計画である。
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