研究課題/領域番号 |
21K01619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
浅井 良夫 成城大学, 経済学部, 名誉教授 (40101620)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 特需 / 経済援助 / 東アジア / 冷戦 / 開発 / 軍事基地 / 朝鮮戦争 / 日韓関係 / 援助 / 貿易 / 脱植民地化 / 経済成長 / 工業化 / 環太平洋経済圏 |
研究開始時の研究の概要 |
日本における特需(アメリカ軍の軍需物資・援助物資の日本における調達と、アメリカ軍人・家族の日本国内での消費)およびアメリカの日本に対する経済・軍事援助が日本の経済開発・経済成長に与えた影響を、冷戦期の東アジアの歴史状況のなかで実証的に解明することが本研究の目的である。本研究では、本土とは事情が大きく異なっていた施政権返還前の沖縄も含めることによって、トータルな把握と新たな視点の提起を目指す。また、1970年代以降に相互交流を深め、いちじるしい経済発展を遂げた東アジア地域の特殊性に着目し、その歴史的起源を解明するために、韓国・台湾の特需・援助との比較および日本との関係についても検討を行う。
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研究実績の概要 |
本課題研究の3年目の2023年度は、1950~60年の日本の特需に関して、以下の歴史実証的研究をおこなった。 「特需経済」と呼ばれた1950年代前半に限らず、特需は1950年代を通じて日本経済に大きな影響を与えた。1960年代に入ると、沖縄を除いて、経済に占める特需(米軍の需要)の比率は無視できるほど小さくなる。したがって、特需は1950年代に独自の現象であり、50年代の経済史を理解するための鍵となる。 特需は4つの側面からアプローチできる。第1は、「朝鮮特需」が日本の戦後復興に果たした役割である。このアプローチは、時期が1950~53年に限定される。第2は、アメリカの対日経済援助の一形態としての特需が、日本の国際収支に及ぼした影響である。第3は、国内の軍需生産を復活させ、東・東南アジアの冷戦を支えた側面である。第4は、特需によって国内経済が「基地経済」化した側面への注目である。第2~第4のアプローチでは、「新特需」も対象となり、1950年代全体が含まれる。 本研究は、これら4つの側面を総合的に検討することにある。本研究に有効と思われるのが、1970年代まで特需の影響が大きかった韓国、沖縄との比較である。私は、沖縄、韓国の専門家ではないので、2021・2022年度には韓国、沖縄に関する先行研究の吸収に力を注いだが、2023年度には、日本に関する実証研究に立ち戻り、一次史料の収集と分析をおこなった。具体的には、外務省外交史料館や日本銀行アーカイブ等に赴いて史料を収集するとともに、ネットを活用して、近年、公開が急速に進んでいる内外のアーカイブ史料の収集に努めた。基礎的な作業としては、通産省「特需月報」等のデータの集計・分析作業を継続中である。また、前年度に引き続き、韓国語の文献・史料の収集にも力を入れ、韓国の研究状況の把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響で、本研究の最初の2年間は調査活動が大幅に制限されたが、昨年度はほぼ平常に戻り、順調に作業が進展した。それは、アーカイブ等の利用制限が解除され、史料の利用が可能になったことと、研究の進め方を軌道修正したことによる。 当初の計画は、範囲が広範で、焦点が絞り切れていない懸念が生じたので、当初の研究の構想およびアプローチはそのまま活かしつつ、やや研究の進め方を変えた。すなわち、自分の本来の研究のフィールドである日本(本土)に関する史料の実証分析を中心に据え、韓国、沖縄等は参照軸として設定すれば、焦点が明確になるとともに、オリジナリティも発揮できると判断した。 進め方を変えたことにより、①主軸である日本(本土)に関する研究については、一次史料の収集が順調に進むとともに、その分析作業も捗った。コロナ期間中は利用が制限されていた外務省外交史料館の運用が通常に戻ったことによる恩恵も大きい。また、通産省、日銀等の文書についても、収集作業を進めることができた。 ②参照軸である韓国、沖縄については、研究史の検討を通じて、方向が明確になってきた。とりわけ、日本に紹介されていない韓国の研究を取り上げることにより、日本の学界に対して、何らかの寄与ができるのではないかと考える。2022年度の段階では、韓国の研究状況に通じていなかったために、基本的な情報を得るのに多大の労力を費やさざるを得なかったが、2023年度には適切な学術情報の取得することが比較的容易になった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究方法を継続し、研究のまとめに入っていきたい。 第1に、日本のアーカイブでの史料収集に力を注ぐ。日本(本土)に関する実証研究が本研究全体の核になるので、1950年代の日本の一次史料の発掘に引続き努める。あわせて、同時代の二次文献や、新聞・雑誌類にも詳細に当たり直し、それらの史料を総合して全体像を構成するように努める。本研究課題については、アメリカの史料の分析も重要な位置を占める。アメリカの史料については、すでに過去において、かなりの分量の史料を収集済みであるので、本年度はその解読を行いたい。 第2に、韓国、沖縄に関しては、先行研究の吸収に努めるとともに、可能であれば、現地調査も実施したい。本研究では、1950年代の日本(本土)と韓国・沖縄との関係の解明、1960~70年代の韓国・沖縄と1950年代の日本(本土)との比較を行う。韓国については、韓国語の文献・史料に当たり、研究を深めたい。韓国においては、韓米関係に関する研究は豊富であり、それらを十分に吸収することが課題となる。それに対して、1950~60年代の日韓経済関係の研究は乏しい。本課題研究で、一次史料を用いた分析ができれば、日韓関係史の研究にも寄与できるのではないかと考える。 第3に、本計画で当初予定していたアメリカ、台湾の調査は実施しない。アメリカ調査については、円安の影響で費用が高騰しているため、それを実施する場合には、他の調査や文献購入に妨げが生じるので断念せざるをえない。しかし、過去に他のプロジェクトで収集した史料を活用すれば、大きな問題は発生しないと見込まれる。台湾に関しては、予備的な文献やネットの調査の結果、特需について正面から論じることには無理があり、大きな成果は得られないと判明したので、中止することにした。 本研究の成果の一部は、本年度中に、学会報告ないし論文の形で公表する予定である。
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