研究課題/領域番号 |
21K01622
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07070:経済史関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
梅垣 宏嗣 南山大学, 経済学部, 講師 (50709053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | イギリス福祉国家 / 国民健康保険制度 / 認可組合制度 / 歯科医療 / 国民保健サービス / イギリス国民健康保険制度 / イギリス国民保健サービス / 歯科疾患 / 歯科治療 / イギリス社会政策史 / 口腔衛生リテラシー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、20世紀前半のイギリスにおける歯科治療について、国民健康保険制度に代表される公的なルートによるもの、私費診療・民間保険・慈善活動といった私的なルートによるものの双方から分析し、その実態を明らかにしていく。さらに、歯科治療においては予防が極めて重要であることから、歯磨き習慣や定期的な歯科検診の受診といった、口腔衛生リテラシーを浸透させるための様々な試みや、各地域・各階層における浸透度の違いとその原因、浸透したことによって生じた変化を明らかにする。そして、社会政策史の文脈において、予防医療という側面をも含めた歯科治療の全体像を、包括的・統合的に描き出す。
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研究成果の概要 |
イギリス国民健康保険制度(NHI、1911~46年)における歯科治療の実態を明らかにした。NHIは、認可組合と呼ばれる民間組織が保険実務を担う形を採っており、各組合は財政的に独立していたため、可処分余剰が豊富な組合と乏しい組合が存在した。そして、前者は加入している被保険者に対して歯科治療を提供することができたが、後者はそれが困難であった。すなわち、組合間の経済的格差が、そのまま歯科治療をめぐる医療格差に直結していたのであり、そうした状況は、国民保健サービス(NHS、1948年~)を通じてようやく解消された。ただし、無料を原則としたNHSにおいて、歯科治療は、最も早期に利用者負担が導入された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の学術的意義は、20世紀前半のイギリスにおける歯科治療について、とくに当時の社会福祉制度の特徴との関連性を明確にしつつ、その実態を明らかにした点にある。すなわち、イギリス国民健康保険制度(1911~46年)は、社会保険制度に自由選択・自由競争・分権的自治といった自由主義的要素を採り入れたが、その結果、認可組合間の経済的格差、ひいては歯科治療をめぐる医療格差が生じたということを明らかにした。そして、こうした事実は、今日の社会福祉制度における効率性と公平性の問題について、自由主義的なアプローチが包括的な解決をもたらすとは限らないということを示唆しており、その点に社会的意義がある。
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