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19世紀後半、中国海関のジャンク船課税と内地市場の開拓に関する調査研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K01623
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分07070:経済史関連
研究機関龍谷大学

研究代表者

濱下 武志  龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90126368)

研究分担者 小泉 順子  京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (70234672)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードジャンク交易 / 条約交渉 / ジャンク船課税 / 内地貿易統計 / ジャンク貿易 / 朝貢貿易 / 内地市場 / 海関貿易統計 / 外国の市場開拓
研究開始時の研究の概要

アジア近代史の中で注目されてきた19世紀中葉の欧米との条約締結と開港という事態は、欧米から見たアジアの歴史であり、清朝と周辺諸国との朝貢関係が条約関係に取って代わったわけではない。またアジア域内貿易は基本的にはジャンク貿易によって継続されており、内地貿易の拡大を目指す欧米諸国はジャンク貿易の活用を企図するに至る。
本研究では、この欧米諸国と清朝との内河・沿岸ジャンク貿易への課税をめぐる条約交渉を、徴税の当事者となる海関の視点から追跡する。

研究実績の概要

1860年代以降、長江貿易を始め内地貿易を拡大するため外国船の内河航行やジャンク船の借り上げが開始され、1861年には、「長江各口通商暫定章程」により、鎮江・九江・漢口の開港と、長江への蒸気船の乗り入れ、外国商人による民間ジャンク船の借り上げによる内地市場との交易が進められた。2023年度は、この過程に注目して海関によるジャンク船貿易の統計資料の収集を重点的に行った。並行して、中国海関の課税対象外とされてきたジャンク船貿易への課税問題をアジアの主要貿易相手国であったシャム側資料との関連において検討した。中国側の貿易統計では、商品別統計に現れるシャム米の他に外国人所有のシャム船は海関統計に含まれているが、その他多くのシャムとのジャンク貿易は海関統計にはおそらく「その他の国」あるいは「ローチャ船」などという項目の中に一括して含まれるか、或いは海関を経由することなく地方的な常関経由の貿易となると推測される。シャム側の統計によれば、主要な輸出品であったコメは、シンガポール、香港を介して大量に中国に輸出されていたことから、シャムの多くのジャンク船は中国海関の統計には直接に現れることは極めて少なかったと推定される。そこで、香港という自由貿易港におけるジャンク船貿易掌握の実態を検討するために、香港における船舶統計と香港に近接する九龍海関や、香港水道を囲んで、マカオとのジャンク貿易を管理する洪北海関における統計資料についても検討を継続した。
これらの資料検討の成果の一部を、研究代表者はオンラインで参加した香港中文大学アジア研究所主催『全球潮人与一帯一路』国際会議において、「亜洲沿海港口城市網絡与潮州商人網絡」という題目で発表した。また研究分担者は、「ラーマ五世(チュラーロンコーン)」(重松伸司他著『アジア人物史第11巻 世界戦争の惨禍を越えて』集英社、2023年)として刊行した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ後にも継続した資料調査予定地の警戒態勢の影響を受け、現地資料調査が出来なかったことから、現地資料の収集とそれに基づく統計資料の検討についてはやや遅れているが、新たに公刊された内地市場における厘金税に関する海関資料の検討を進めたことにより、実質的なジャンク船貿易に関する調査研究は着実に進んでいると考える。
具体的には、海関の統計資料に現れるジャンク船については、いくつかの異なる背景があることを検討した。まず、東アジア域内ならびに東アジアと東南アジア海域において行われるジャンク交易については、シャムのコメ貿易に見られるように、朝貢貿易を背景としており、そこに西洋の商品も参入したと考えられる。そこには、香港で収集された船舶統計があることから、清末の中国海関においても船籍に基づくジャンク船貿易の範疇を踏襲して統計が取られていると考えられる。中国の各開港場におけるシャムのジャンク船ならびにシャム米の海関資料に現れる商品統計については、1850年代末よりすべて収集しており、特に1860年代に入りジャンク船貿易による内地市場の開拓が本格化するなかで、ジャンク船に関する統計は多様化していくことが分かる。更に1861年、「長江各口通商暫定章程」の取り決め以降に、輸出品の内地通行税である厘金税が登場していることから、海関が対応するジャンク船交易の歴史的な転機をなしていることを確認した。これら多様化する統計資料を分類整理する作業を進めているが、内地市場問題を検討するときに不可欠の厘金税という通行税についても、近年『海関総署档案館蔵未刊中国旧海関資料』全50巻が刊行され、資料研究の上でも海関資料の統計を地方市場において検討可能な資料として検討している。

今後の研究の推進方策

アジアを含む外国商人は、19世紀後半期には、中国の沿海航行・内河航行へと交易の範囲を拡大していくが、その過程で活用された運搬手段は民間のジャンク船であった。今後はこうした外国商人がジャンク船交易に進出することにより、内地市場への交易活動を拡大していく過程を海関の内地市場における通行税課税の統計からまとめる予定である。
このような内地市場の新たな開拓の動きの中で、シャムのコメなど、従来からジャンク船で運ばれてきたアジア商品も、それを運ぶジャンク船の船籍が外国であり、積み荷が外国産である場合には、海関の統計・課税対象に含まれることになったと考えられる。そしてこの点は、香港並びにシンガポールにおけるシャム船の取り扱いに倣うと考えられるが、ジャンク船貿易がどのように海関統計に含まれていくかという過程については、バンコク・香港・シンガポールなどの現地統計資料の補足調査をする予定である。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 「国王モンクットとシャム・イギリス修好通商条約(1855)」2023

    • 著者名/発表者名
      小泉順子
    • 雑誌名

      『国立歴史民俗博物館研究報告』

      巻: 第239集 ページ: 75-94

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「海関資料に生かされるー旧中国海関資料群の活用と次代の東アジア研究」2021

    • 著者名/発表者名
      濱下武志
    • 雑誌名

      『史学雑誌』

      巻: 130-1 ページ: 36-38

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「全球歴史視野下晩清海関資料的新挑戦与新途径」2021

    • 著者名/発表者名
      濱下武志
    • 雑誌名

      『清史研究』(中国人民大学清史研究所

      巻: 2021年第6期 ページ: 1-5

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 亜洲沿海港口城市網絡与潮州商人網絡2023

    • 著者名/発表者名
      濱下武志
    • 学会等名
      香港中文大学アジア研究所主催《全球潮人與一帯一路》国際学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「歴代宝案から考えるグローバルヒストリー:東アジア海域論の再構成」2022

    • 著者名/発表者名
      濱下武志
    • 学会等名
      沖縄県教育委員会史料編纂室
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 『アジア人物史第11巻 世界戦争の惨禍を越えて』(「ラーマ五世(チュラーロンコーン)」)2023

    • 著者名/発表者名
      重松伸司他著
    • 総ページ数
      927
    • 出版者
      集英社
    • ISBN
      9784081571116
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 『世界歴史 17 近代アジアの動態 19世紀』 小泉順子「焦点: 近代シャムにおける王権と社会」239-2602022

    • 著者名/発表者名
      吉澤誠一郎・林佳世子編集責任
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000114271
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 「シャムの自立」吉澤誠一郎監修・石川博樹他編著『論点・東洋史学 : アジア・アフリカへの問い158 』2022

    • 著者名/発表者名
      小泉順子
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623092178
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] 「トンチャイ・ウィニッチャクン 2003『地図がつくったタイ―国民国家誕生の歴史』石井米雄(訳) 明石書店 」中西嘉宏・片岡樹編『初学者のための東南アジア研究』2022

    • 著者名/発表者名
      小泉順子
    • 出版者
      京都大学東南アジア地域研究研究所
    • ISBN
      9784906332526
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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