研究課題/領域番号 |
21K01675
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
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研究分担者 |
井川 浩輔 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (80433093)
開本 浩矢 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90275298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 心理的資本 / 系統的レビュー / 尺度開発 / ポジティブ研修 / 研修効果測定 / 看護師 / ポジティブ・マネジメント研修 / 医療組織 / 集団レベルの心理的資本 / 研修 / ポジティブ・アプローチ / 挫折経験 / ポジティブ実践 / ポジティブ組織行動論 |
研究開始時の研究の概要 |
VUCA時代の到来により,組織メンバーに変化適応力が求められ,昨今,その強化手法としてポジティブ組織行動論を基盤とした研修に着目される。ポジティブ研修は劇的変化を現場に与えるため,研修参加者は研修転移に挫折し,無力感に陥る。こうした問題に対処するうえで集団レベルの心理的資本の有効性を探求する。 従来,ポジティブ組織行動論では肯定的心理が強調され,挫折経験のようなネガティブ要因を統合した研究は不十分である。本研究では,日本語版集団レベルの心理的資本尺度を開発し,ポジティブ実践における挫折経験と無力感のネガティブな関係に集団レベルの心理的資本が及ぼす影響について検証し,その介入手法を提示する。
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研究実績の概要 |
2023年度においては,以下の3点を執り行った。第1に,心理的資本の尺度開発のためのインタビュー項目の精査である。今年度は尺度開発に向け,質的調査を執り行う予定であったが,調査を進めていく中でいくつかの課題が浮かび上がった。具体的には,大学生とビジネス・パーソン数名に学業や仕事で前向きな感情を抱いた経験について聞き取りを行ったところ,語られるエピソードには心理的資本それ自体に関するものだけでなく,心理的資本を促進する要因にまつわるものが混在することが判明した。そこで,形成型と反映型の両方の測定モデルを念頭において,インタビュー項目の精緻化が求められることが示唆された。 第2に,2019年以降に出版された心理的資本に関する定量研究の系統的レビューである。前年度にも本データベースをもとに文献的検討を行ったが,本年度は包含基準と除外基準にしたがって2名の評価者が2次スクリーニングを行い,評価の一致率を算出するとともに,評価者間で意見に相違があった場合は議論を重ね,レビュー対象文献の妥当性を高めた。分析の結果,心理的資本に影響する先行要因は下位次元別に異なること,逆に特定の下位次元には寄与しないものも同時に確認された。本研究成果は,評価者2名の共著で論文化が終了し,学術雑誌投稿に向けた最終精査段階にある。 第3に,心理的資本開発研修の効果の分析である。本年度は,A大学附属病院の看護師を対象とした心理的資本向上を目的とした研修の効果を定量的な観点から検討を加えた。具体的には,ポジティブ研修の前後で心理的資本が有意に向上し,心理的資本の中でもエフィカシーの変化が大きいことが確認された。ポジティブ研修で学習したことを現場で実践する際に直面する挫折に直面する際,特に研修で向上したエフィカシーを維持した状態を確保する工夫の探究が不可欠であることが認識された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は,日本版心理的資本尺度開発に向けたインタビュー調査の実施が予定されていたが,分析に値するデータ収集には及ばなかった。その理由は,上記のとおり,インタビューを重ねる中で,尺度開発には複眼的な要素から構成概念を測定することが肝要で,インタビュー項目の精査が必要であることが見出されたためである。また,本研究課題の研究分担者で質的調査の実施と分析の主たる貢献が予定されていた井川の今年度始まりに患った病気への長期療養も計画が順調に進まなかった理由として挙げられる。 当初の計画遂行には及んでいないものの,前述のとおり妥当性と信頼性の高い尺度の開発につながる重要な示唆が得られている。また,系統的レビューやA大学附属病院において収集されたデータの分析により,尺度開発後に求められる心理的資本を向上させる先行要因や介入方法について特定化できつつあり,尺度開発を超えた心理的資本研究発展への基盤となる知見が得られた点において,今年度の成果には一定の意義があるといえる。これらの点から,研究進捗の遅れを否定的に捉えられるものではないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,2023年度で遅延が生じている計画を中心に,具体的に下記の3点を進めていく。 第1に,複数の観点から心理的資本を測定可能なインタビュー項目の確定である。上記のとおり,構成概念を捉える測定モデルには形成型と反映型の2種類があった。両測定モデルを前提とした尺度開発研究の中で,インタビューを採用した文献を渉猟し,そこで用いられたインタビュー項目の抽出を行い,研究間の共通点と相違点を整理する。その作業を通じて,本研究におけるインタビュー項目を決定する。 第2に,日本版心理的資本尺度開発に向けた質的調査である。前年度に,既に複数人のビジネス・パーソンよりインタビューの承諾は得られている。今年度もラポールは築けており,倫理委員会の審査通過後,滞りなく聞き取り調査を行っていく。 第3に,日本版心理的資本尺度の質問項目の作成である。上記で収集された質的データおよび心理的資本を構成する4つの次元の元尺度に遡ってアイテムプールを作成し,その項目の妥当性と信頼性を確認するための定量調査で用いる質問項目を確定する。
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