研究課題/領域番号 |
21K01680
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
金 倫廷 北海学園大学, 経営学部, 准教授 (20611255)
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研究分担者 |
大月 博司 中央学院大学, 商学研究科, 教授 (50152187)
古田 駿輔 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (40879673)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | アイデンティティ / 制度 / 制度化 / 制度維持 / ミクロ的基礎付け / アイデンティフィケーション |
研究開始時の研究の概要 |
先行研究では、制度と組織をリンクさせるにはアイデンティティが重要であることが指摘されてきた。しかしながら、従来の制度維持に関する研究では、行為者のアイデンティティの異質性と新しい制度の定着・維持の関係、そしてその影響過程は十分に議論されてこなかった。特に制度と個人レベルのアイデンティティの関係はほとんど明らかにれておらず、社会的相互作用の主体である個々人の視点にたつミクロ・ダイナミズムのアプローチが必要と考えられる。したがって本研究では、アイデンティティ概念を援用し、ミクロ的基礎付けの視点から制度維持の新たな理論モデルの構築とその実証を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、制度維持のメカニズムを、新制度派組織論とアイデンティティ論の観点から明らかにすることを目指し、①アイデンティティの異質性とサブ制度間の摩擦の関係性、②サブ制度間の摩擦による新しい制度への影響、③不安定性を前提とする社会における制度の定着・維持プロセスの3つの研究課題を設定した。 当該年度においては、上述の研究課題①②を中心に、引き続きアイデンディティと制度の関係についての文献を検討しつつ、制度化と個人レベルのアイデンティティの関係に注目したインタビュー調査を実施してきた。そこでわれわれが注目したのは、学術政策に対する各大学の行為であり、上位・中堅・下位という大学グループの行為がサブ制度化していく様子も一部確認した。また、理論モデルの実証の面では、過去20年間の大学データを活用した分析を行ったものの、アイデンティティの異質性とサブ制度の摩擦といった構成概念の操作化の点でまだ多くの課題が残されており、今後さらなる検討が必要と考えられる。 さらに、ミクロ的基礎付けの関連研究の動向を調査していたところ、理論モデルの拡張の可能性が窺えたのは1つの収穫と言える。換言すると、制度はある社会において「ゲームのルール」や「共有された戦略のルール」としての役割を果たすものであり(North, 1990)、法律のような公式的ルールと規範や文化などのような非公式的制約に分けられる。特に政治的および社会的制度が企業の特徴を決定づけるため(Hall & Soskice, 2001)、制度に対する理解がサブ制度の形成とアイデンティティの異質性に大きく影響すると予想される。次年度以降は、こうしたダイナミック・ケイパビリティをはじめとする戦略論の知見を援用した理論モデルと研究手法の再検討も行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、組織フィールドにおける価値観の多様化が進む中、新しい制度の定着と維持に関する理論的枠組みの構築を意図している。その結果として、制度維持におけるアイデンティティの異質性とサブ制度の関係が新しい制度の形成・定着・維持されるプロセスを提示することが期待される。 当初、本研究は理論モデル構築と実証分析の2ステップに分けて研究を進めることとし、令和4~5年は主に実証分析と成果発表を計画していた。実証分析の定量研究の面では多少の試行錯誤をしているものの、定性研究や理論の拡張可能性の面では着実な進捗が見られている。具体的には、実務家を対象にしたインタビューを通じてわれわれの基本モデルに含まれる変数間の関係が定性的に確認されている点、研究対象を学術政策と直接関わる大学組織に限定せず、理論モデルの一般化を踏まえた多様な企業組織にまつわる現象も考慮に入れて調査している点、制度とアイデンティティの関係にダイナミック・ケイパビリティが介入しうるという示唆が得られた点などが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年は、昨年度に引き続き実証研究と成果発表を中心に研究活動を進めていく。すでにイギリス経営学会での研究報告が決定しているが、小規模であっても定期的に研究成果を発表する機会を作るなどして、理論と実証の両面においてより多くのフィードバックが得られるよう心がけたい。また、ダイナミック・ケイパビリティ論を含む理論の拡張可能性についても継続して検討していきたい。
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