研究課題/領域番号 |
21K01726
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
安藤 直紀 法政大学, 経営学部, 教授 (50448817)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 国際経営 / 多国籍企業 / 地理的多角化 / 海外子会社 / 子会社間協業 / 制度理論 / 地理的地域 / 協業 / 制度 / コオペレーション |
研究開始時の研究の概要 |
経済統合や地理的近接性によって創出される地域レベルの制度の下で、多国籍企業の海外子会社は地域内で他の子会社と協業を行っている。このため、制度や海外子会社の活動を、国を単位として分析すると、多国籍企業の理解に限界が生じる。これを克服するために本研究は、地域レベルの制度という概念を導入する。そして、国及び地域の制度が創出する複雑な環境の下で、地域内に立地した複数の海外子会社がどのように協業を行うのか、その結果である地域業績が複雑な制度的環境にどのように影響されるのかを分析する。この分析を通して、多国籍企業の地域内での地理的多角化と地域内パフォーマンスをつなぐ1つの経路を提示する。
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研究実績の概要 |
多国籍企業の海外子会社は、単独で活動しているのではなく、姉妹子会社と協業を行っている場合が多い。多くの場合、海外子会社同士の協業は、地理的地域の中に形成される海外子会社のネットワーク内で行われ、多国籍企業はこれにより地域戦略を遂行している。地理的地域内で子会社間の協業がどのように行われ、地域戦略が遂行されているのかを研究するのが本研究の目的である。 本研究の目的を踏まえ、ある地理的地域に立地する多国籍企業の海外子会社が、地域レベルの要因にどのような影響を受けるのかを分析した。そのために、地域レベルの公式的及び非公式的制度や、多国籍企業の地域内経験及びパフォーマンス等の、地域レベル変数の操作化を行った。日本企業の海外子会社のパネルデータに、これら地域レベルの変数を加え、多国籍企業の地理的地域内多角化と地域内海外子会社のパフォーマンスとの関係に関する分析や、地域レベルの制度と地域内海外子会社の人材戦略との関係に関する分析を行った。パネルデータの分析から、ある地域に立地する海外子会社のパフォーマンスは、多国籍企業の地域内地理的多角化から影響を受けることが示された。また、地域レベルの制度からも、海外子会社は影響を受けることが示された。さらに、地域内地理的多角化や地域レベルの制度は、単独で地域内海外子会社に影響を与えるだけでなく、地域レベルの変数や、ホスト国レベルの変数と作用しあって影響を与えることも示された。これら結果からは、海外子会社の地域内協業は、地域レベルの要因とホスト国レベルの要因との複雑な交互作用の影響を受けることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、量的研究と質的研究の両面からアプローチすることを計画していた。これまでの研究の蓄積が少ない分野なので、仮説構築には質的研究によるアプローチが有効であると考えられる。そこで、主に東南アジアやヨーロッパ地域に立地する日本企業の海外子会社で質的アプローチの1つであるインタビュー調査を実施することを計画していた。しかし、22年度までは、パンデミックの影響により、日本企業の海外子会社を訪問することが非常に困難であった。その時期には、国際間の移動制限という状況を考慮し、日本国内で質的データの収集を行ったが、地理的地域の制度や、国レベルの制度と地域レベルの制度との関係等に関して探求し、研究フレームワークを精緻化するためには、インタビュー調査を当初の計画に近いかたちで進める必要がある。23年度には、国際間の移動制限が多くの国で廃止されたが、企業側も、研究者側も、引き続き、国際移動には慎重にならざるを得なかった。そのため、23年度は、22年度に続き、質的研究を当初の計画通りに進めることができなかった。一方で、量的研究に関しては、おおむね当初の計画通りに進行した。新たに作成した地域レベルの制度や地域と本国との距離等の変数を用いて、様々な分析を遂行することができた。これら分析結果の一部を用いて、学術誌への投稿論文を作成することもできた。このように、量的研究がおおむね当初の計画に近い形で進捗しているのに対して、質的研究に関しては、パンデミックの影響もあり当初の計画通りに進んでいない。これらを総合的に判断し、研究の進捗状況はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
質的研究に関しては、当初の計画よりも遂行が遅れている。パンデミックによる国際移動の制限はほぼなくなっているが、海外子会社を訪問してインタビュー調査を行うことが、企業側の情報漏洩対策等から難しくなっている。そのため、研究開始当初は、ヨーロッパや東南アジアでのフィールドワークを計画していたが、オンラインでのインタビュー調査や、日本本社でのインタビュー調査等、実現可能な手法を用いて、質的調査を進める方向に切り替える。また、インタビュー調査の対象も、日本企業のみでなく、外国企業にも拡大することで、質的調査を充実させていく。外国企業も調査対象に含めることで、より一般化可能な研究結果を得られると思われる。 量的研究に関しては、地域レベルの制度や距離を測定する変数を精緻化し、日本企業の海外子会社のパネルデータセットに組み込んでいく。また、これまでは、パネルデータの最終観察年は2017年であったが、2018年以降のデータも付け加え、パネルデータを充実させていく。このデータセットを用いて、多国籍企業の地域レベルの活動やパフォーマンスに影響を与える要因に関する分析を行っていく。さらに、質的研究からの結果を仮説構築に反映させ、拡充したパネルデータセットを用いて仮説検証をしていく。これまでの研究から、分析結果が一定程度蓄積されてきたので、これらを学会報告したり、さらに分析を精緻化して学術誌への投稿を行っていく。
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