研究課題/領域番号 |
21K01728
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07080:経営学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
戸谷 圭子 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (20350308)
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研究分担者 |
藤岡 資正 明治大学, グローバル・ビジネス研究科, 専任教授 (20817994)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | サステナビリティ / 製造業のサービス化 / サービス・エコシステム / 国際比較 / 高コンテクスト / 不確実性回避 / サービタイゼーション / 北欧 |
研究開始時の研究の概要 |
世界規模で持続可能な経済活動・企業活動への移行が検討されているなかで、製造業が、 製造物の大量生産大量廃棄から脱する方法の一つとして、製品単体の製造・販売から、製品とサービスを組み合わせたソリューションとプロセス提供へ移行する製造業のサービス化(サ ービタイゼーション)が活発化している。本研究はサステナビリティ型のサービ ス研究で先行するスウェーデンと日本の製造業の比較を行い、両者の共通点と相違点から、サービス化類型の移行パターンへの影響要因を明らかにし、時間要素を加 えたサービス化成功モデルを研究するものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、社会文化的背景をベースに北欧と日本の製造業のサービス化ビジネスの共通点と相違点を明らかにし、停滞している日本の製造業のサービス化促進に役立つ知見を得ることを目的とする。 前年度に構築した仮説による①定性調査の実施、②適切なサービス化の仮説概念モデルの構築に加え、③北欧向け予備的定量調査を実施した。定性調査は典と日本で行った。典では現地製造業(SKF、VOLVOカーズ他)の他、現地に拠点を持つ日系製造企業(日立エナジー、マキタ他)および商社(三菱商事、住友商事他)に実施した。これらの結果から仮説モデルを構築し、リンショーピン大学の研究会での議論を経て仮説モデルを精緻化した。 日本向けは過去7年間行っている調査を継続実施し、企業情報データベースから2万社を層別無作為抽出し郵送依頼・Web回の方式とした。北欧向け調査は予備的定量調査の位置付けとして、送付数(4カ国各々500社)以外は日本と同じプロセスとした。北欧向け調査は、回収率の向上や送付方法、調査項目などを中心にリンショーピン大学、ストックホルム商科大学の研究者らと議論を重ねた。特に、回答依頼内容や調査項目は、日本と北欧で齟齬が生じないように共同で翻訳した。2023年1月から3月にかけて調査を行い、回収数は日本2,636社(完全回答1,947社)、北欧75社(同32社)であった。 記述統計レベルで不確実性回避と長期志向文化は日本の方が必ずしも高いとはいえず、ものづくり文化は国によらず製造業では高いという結果を得ている。サービス化への影響は現在分析中である。 北欧向け調査方法で2つの改善の方向性が明らかになった。1つ目は企業への郵送不届に対する改善、2つ目は被験者負担の低減である。これらについては国文化レベルの違いや作業レベルなど様々な観点から対策を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の2点から研究は順調に進捗している。1点目は定量調査分析結果についてである。文化側面とサービタイゼーションの関係について北欧と日本で違いが見られることが明らかになった。日本は北欧より厳格な仕事上のルールが必要と考える経営者が多いが、北欧ではこの項目はサービス化の進展にネガティブな影響を与えている。サービスは多様なステークホルダーが関与しコミュニケーションやプロセスが複雑になる。無機物を資源とする人工物の製造に比し、人が資源として加わるサービスでは、柔軟性が必要で、厳密なルールだけでは活動が滞る。この点での企業文化の違い、もしくは、サービスプロセスへの理解度の違いが北欧と日本で異なる可能性がある。また、ものづくり文化については、日本特有のものではなく、製造業一般に定着しており、それに加えて価値共創というサービスに必須の要素を理解できるかどうかが鍵となることが新たな仮説として導出された。 2点目は、予備調査の目的である本調査設計のための貴重な情報が得られた点である。デジタル化の進展の違いや調査に対する姿勢の違いなどが明らかになった。これらの情報から、先述した回収数を高めるための依頼方法および被験者負担低減の再検討を行う。日本では従来方法を踏襲する予定であるが、北欧はメール依頼の可否を含めて検討している。また、郵送依頼を継続する場合に備えて送付先の住所リスト作成プロセスとそのエラー発見方法についても同時にすすめている。同時に、被験者負担を極力少なくするため、調査項目数についても議論を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として以下を計画している。予備的調査データの分析は、北欧のサンプル数75は少ないとはいえ、有意差検定には耐えうるものであった。今後、分析を記述統計段階から、推測統計を使用した分析に進めるにあたり、混合ガウス分布を想定してシミュレーションを実施するなど、小サンプルのための分析方策を検討する。 仮説は北欧企業に関して概ね支持されたが、日本企業では棄却されるものが多かった。北欧とは対照的に、日本企業は約2,000社という大規模サンプルで業種や規模、業歴などが異なる企業の回答が混在するため、分布を踏まえて、日本企業のサンプルの分類を行い、仮説検証を実施する予定である。 さらに、予備的調査の結果を踏まえて定量調査設計の修正を行い、仮説検証のための定量調査を行う。対象企業は従来通り、日本、北欧ともB2B企業とし、日本は約2万社、北欧は数千社へ依頼することを計画している。回収率は双方とも10%程度となるように調査設計について議論を重ねる。分析は、統計ソフトを使用し、共分散構造分析や階層的回帰分析などを使用することを検討している。
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