研究課題/領域番号 |
21K01739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井原 基 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (00334144)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | マーケティング・チャネル / ECチャネル / 伝統的小売業 / 中国 / タイ / ベトナム / オンラインチャネル / 流通 / 東南アジア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、新興国における適切なチャネル選択の比較事例研究である。研究対象は中国、タイ、ベトナム、インドネシア、インドにおける日系・欧米系・現地系トイレタリー・男性化粧品メーカーである。各事例において当該企業がおかれた環境、特定のチャネル組織(内部統合化、パートナーシップ、市場取引)の選択経緯、管理方式の特性(取引サイトの管理、販売員の機会主義に対する対応)、経済的効果(利益率、チャネル・カバリッジ)を明らかにし、新興国の流通環境の下で特定のチャネル組織、中間業者、管理方式の選択が行われてきた論理的必然性を導き出し、最終的にどのようなチャネル戦略が望ましいかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、流通の分断・分散という状況が残り、近代化の途上にあるアジア新興国の流通環境において、外資系・現地系企業がどのようなマーケティング・チャネルを選択してきたのか、選択すべきなのかを明らかにすることにある。研究年度の4年目にあたる本年度は、コロナウィルスの収束という状況も幸いし、ベトナムでの現地調査を実現したほか、いくつかの顕著な展開を進めることができた。(1)ベトナム・ハノイにおいて現地の伝統的小売業とトイレタリーメーカーのチャネル戦略についてインタビュー調査や視察調査を行い、コロナ収束後の変化や、以前に調査したホーチミン市の流通環境との相違を確かめることができた。(2)日中越境ECにおける化粧品のマーケティング・チャネルとプロモーションについての研究協力者との共同研究を進めることができた。具体的には、日本ブランドの中国販売に関わるMCNや代理店に対するインタビューを行い、KOLの役割に注目したテーマで国際学会での研究報告をプロシーディングスとして刊行した。(3)昨年から継続してオンラインベースで多様なデータを収集した。Euromonitor社のデータベースにより、オンライン・オフラインのアジア各国の小売業の伸長状況の最新の変化を調査し、コロナ期に中国だけでなく東南アジア全体でECチャネルの顕著な進展が見られたことを再確認した。(4)2025年度の研究成果の単著出版に向け、具体的な出版社を決定し、先行研究の検討と理論フレームの構築を進めた。取引費用理論や学習理論の観点を強めてユニリーバ、P&G、花王、ライオンなどのアジアにおけるチャネル戦略に関する今までの研究を再整理し、より明確な理論視座を固めることができた。(5)タイのトイレタリーメーカーのマーケティングとチャネル戦略の歴史研究を共同研究者Patnareeと共に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は引き続き所属機関の経済学部長を務めており、ハラスメント問題や問題行動を起こす教員と学生の対応の場面などで、多大な時間と気力を削がれる時期があり、研究上は大きな支障となった。しかし、コロナウィルス感染症の収束によりアジアでの現地調査に支障なくなったことに加え、所属機関における研究強化教員制度のサポートにより、一定の研究時間を確保することもできた。ハノイへの調査によってベトナムの流通とチャネルに関する研究内容がより確固としたものになったことは、現地調査面での大きな進展である。さらに、研究成果を学術単著としてまとめる構想が固まり、具体的な出版社まで決定したことは、研究成果の学術的・社会的還元という意味で非常に大きな進歩であったといえる。他方、少し先の研究への布石として、日系化粧品メーカーの越境ECにおけるMCNや代理店に対する調査を通じてこれまであまり研究されてこなかった越境ECチャネルとKOLとの関わりの実態解明を進め、合わせて理論的枠組みの整備を進めることができた。これらの進展は、申請者らの将来の新興国チャネル戦略の研究を大きく推進するための貴重な手掛かりとなると考えられる。タイのトイレタリーメーカーのマーケティングとチャネル戦略の歴史研究に関するPatnareeとの共同研究については、英文の国際査読誌に投稿し、研究成果の公表に向けた一歩を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画について以下の修正が生じている。(1)実店舗型チャネルの研究については、研究計画の当初に組み込んでいたインドまでは本格的には手を広げられない可能性が高くなったので、主な調査研究対象地域を中国と東南アジア(タイ、ベトナム、インドネシア)に絞り、その部分については予定通り遂行する。インドについては、欧米系企業のインドでのチャネル戦略の側面から、必要に応じて調査・言及する。(2)ECチャネルの研究については、特に中国の化粧品及び日用品のチャネルとインフルエンサーの調査研究が進んだため、当初の予定よりも進展させる。このようにいくつかの修正は生じているが、来年度は研究期間の最終年度に当たるので、中国や東南アジアでの伝統的チャネルについての現地調査に一区切りをつけ、中国のECチャネルについての調査を継続するほか、Patnareeとの英文での共同研究の成果を実現すること、学術単著刊行に向けた具体的な作業を行うことを、基本的な研究の推進方策とする。
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