研究課題/領域番号 |
21K01754
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
玉置 了 近畿大学, 経営学部, 教授 (40434849)
|
研究分担者 |
若林 靖永 佛教大学, 社会学部, 教授 (70240447)
堀川 宣和 星城大学, 経営学部, 講師 (20761604)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | SNS / オンライン・コミュニティ / 内容分析 / テキスト分析 / 画像認識 / 機械学習 / アイデンティティ / リアクション / 倫理的消費 / テキストマイニング / 画像 / 動画 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,SDGsやESG投資への注目と相まって製品の購買や使用により社会的課題の解決を目指す倫理的消費(エシカル消費)が注目されている。本研究は,この倫理的消費についてSNSで盛んに行われている消費者の画像や動画の投稿とその投稿への反応という行動から研究するものである。また,倫理的消費は消費者の自己表現やアイデンティティ形成の手段として行われることが知られている。本研究はこの点に着目し,消費者はSNS上で倫理的消費に関するどのような情報を画像や動画を用いて発信探索,反応するのか,またそれによりどのような影響を受けるのかということを消費とアイデンティティを切り口に解明するものである。
|
研究実績の概要 |
本年度は2つの研究を実施した。まずオンライン・コミュニケーションの萌芽期である2000年代初頭の消費者間コミュニケーションに着目し,その内容と参加者の意識の関係を検討した。2000年代以降,インターネット上では特定の消費やブランドを絆にしたコミュニケーションが行われるようになるなかで,本研究が理論的な視点の1つとして位置付けている消費者アイデンティティはその研究視点1つとされてきた。本研究の目的は近年のSNSにおける情報発信として特徴的な画像・動画による情報発信をアイデンティティの視点から検討するものであるが,この画像や動画を用いた発信のの特徴を浮き彫りにするために,画像・動画による情報発信が普及する前のテキストによる情報発信を検討した。方法としては過去に研究代表者か調査を行った2000年代初頭の掲示板を研究対象とし,その投稿データをWebアーカイブを用いて収集した。投稿データをトピックモデルによって内容を分類し,分類された投稿内容と参加者の動機と影響の関係を研究代表者が過去に掲示板の参加者に対して実施したWebアンケートをもとに分析した。その結果,製品の高度なカスタマイズに関する情報交換を行う掲示板では,アイデンティティの基盤となる独自の自己イメージを形成する動機が強く,参加者間の関係意識は弱いこと,他のユーザーの問題解決や返信をする掲示板は自己表現動機が強く,関係意識が強いことが明らかになった。第2の研究として動画投稿の内容分析手法の検討を行った。動画を音声部分と画像部分に分け,本年度は音声による発信に着目した。倫理的消費の1つであるオーガニック消費に関する動画投稿をTwitterより収集し,Open AI社のWhisperを使用して動画内の音声をテキストデータに変換し,動画投稿の内容分類を試行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,消費による社会的課題の解決を志向する倫理的消費に関するSNS上の画像や動画を用いた情報探索・発信に着目するものである。また,SNSの画像・動画の発信及び探索と反応を,情報の認知性・感情性とアイデンティティの視点から検討することを研究課題としている。本年度の第1の成果である2000年代初頭のインターネットコミュニティにおけるコミュニケーションの分析により,今日の画像や動画を用いたコミュニケーションの特徴をアイデンティティの視点から明確にする上で, 自己表現の手段となる発信内容の質がテキストと画像・動画とで異なることを示唆する結果が得られている。また画像を持ちいた発信についても,昨年度よりオーガニック消費を題材に投稿のエピソード性と非エピソード性によりいいねやリツイートというリアクションの違いがあることを実証的に解明しており,現在国際的な学術誌に投稿中の段階である。また本研究の最終的な課題である動画投稿の分析についても,本年度は機械学習・深層学習をもちいた内容分析手法の検討をすすめており,特に音声部分については動画中の音声をテキストデータに変換することで既存の自然言語処理の分析手法を応用できる手法を検討した。その結果,画像部分の分析は未着手であるが,動画内の音声部分に基づいた動画内容の分類や個々の動画のエピソード性,感情性の分析可能な段階まで達している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究が検討してきた倫理的消費に関する研究はオーガニック消費のみであり,その他フェアトレードやローカルフードなど関連しつつも異なる倫理的消費のカテゴリーがあることから,これらの未だ対象としていない倫理的消費におけるSNS上の画像や動画を用いた情報発信の検討を行い,本研究がこれまで明らかにしたオーガニック消費における画像や動画を用いた発信との共通点と違いを検討する必要がある。また2000年代初頭のテキストのみの情報発信についても,本年度の研究は研究代表者が過去に実施した質問紙調査とクロスした分析を実施することを目的としたため倫理的消費以外のカテゴリーの情報発信を検討している。より適切に倫理的消費における画像・動画を用いた発信の特徴を検討するために2000年代初頭まで遡って倫理的消費に関する過去の消費者の情報発信をすることを検討している。また,動画を用いた情報発信については音声部分の分析についてはその方法に目処がついているため早急に関連する先行研究を検討した上で仮説の構築と検証を行い学術誌に投稿を行いたい。具体的には動画中の音声データをもとに動画の内容分類を行い,その分類の特徴の解明といいねやリツイートなどのリアクションとの関係を先の画像分析を用いた研究と同様にエピソード性の視点から研究することを予定している。
|