研究課題/領域番号 |
21K01770
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07090:商学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
權 純鎬 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (40843941)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | デジタルマーケティング / 心理的所有感 / 感覚マーケティング / 製品の大きさ知覚 / オンライン環境における触覚経験 / 製品の提示形式 / 典型的ビュー / マーケティング・コミュニケーション / デジタル・マーケティング / 製品形態 / プロモーション |
研究開始時の研究の概要 |
インターネット通販をはじめとする電子商取引市場の拡大に伴い、デジタル環境における新しい消費者の行動を理解することに実務的にも学術的にも高い関心が寄せられている(權、2021)。デジタル環境とリアルな店舗での買い物の相違点の一つは、製品に触られないということが挙げられるが、製品に関する触覚情報が提供されないと消費者は製品を評価することがより困難になる。本研究は、既存の有形財とそれらがデジタル化されたデジタル財との比較を通して、デジタル環境における触覚経験の提供がデジタル財の利用を促進する要因となることを明らかにすることに目的がある。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、デジタル環境における製品評価に対する包括的な研究を目的としている。2022年度には、(1)インターネットにおける製品画像の視覚的要素が大きさ知覚に及ぼす影響、(2)電子媒体操作時における触覚経験が心理的所有感およびサービスの継続的な利用に及ぼす影響という二つのテーマに対して、オンライン実験を通した実証的研究を行った。 一つ目の研究は、デジタル空間において製品の大きさ知覚に及ぼす影響要因に焦点を当てたものである。先行研究では、製品の大きさ知覚の影響要因として、パッケージの形状を中心に議論されてきたが、本研究は製品画像の次元という要因に注目した。3つの調査を行った結果、3次元の製品画像は、2次元の製品画像に比べて、製品をより大きいと知覚させること、また大きさ知覚が重さ知覚に正の影響を及ぼすことを明らかにした。さらには、製品画像の3次元提示は支払い意思額を高めるという下流効果も示された。 二つ目の研究は、電子媒体の操作に伴う触覚経験が、モバイル決済サービスに対する心理的所有感および継続的利用に及ぼす影響に注目したものである。心理的所有感とは、対象を私のものと知覚する心理的状態を意味し、直接触ることのできないデジタル財や無形財に対して継続的利用を促す要因であることから、近年消費者行動研究領域で注目されている。2つのインターネット調査の結果、画面への接触回数が増加する金額入力型の決済方法(vs. 金額非入力型),決済サービスに対するコントロール感を高め,コントロール感の知覚は心理的所有感を高めることが示された。また,画面接触によって知覚された心理的所有感の向上は,決済サービスへの再利用意向を高めることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の進捗状況は、当初の計画からはやや遅れているところもあるが、全体的に一定の進捗はあったため、おおむね順調に進展していると考えられる。 まず、デジタル空間における製品の大きさ知覚要因に関する研究は、当初の計画より少し進捗が遅れている。その理由として、これまで依拠していた理論との整合性を見直した結果、やむを得ず原稿を大幅に書き直したため、当初の計画より投稿まで時間がかかってしまった。現在は、原稿の執筆が完了し、投稿先を検討している段階である。英文校正が終わり次第、研究成果の国際的発信に向けて、消費者行動研究を専門とする海外のジャーナルへの投稿を行う予定である。 一方で、今年度で成果が見られた研究もある。前年度の文献研究と学会報告から得られた知見に基づき、電子媒体操作時の触覚経験の影響に関する調査結果を論文としてまとめ、日本マーケティング学会の招待査読論文として投稿した。その結果、『電子媒体の画面接触が決済サービスのコントロール感と心理的所有感に及ぼす影響』というタイトルで論文投稿を行い、査読を経て受理された。上記論文は、「マーケティングジャーナル」2023年1月に掲載されたものである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、先行研究のレビューに基づいた実証的研究を行い、いくつかの研究知見を得ることが出来た。今後の研究推進に向けては、(1)の論文を投稿し、必要に応じて査読対応を行っていく。また、オンライン環境における製品の大きさや重さの知覚に関しては、これまでの研究蓄積によって多くの点が明らかになっている一方で、依然として不明な点も多く残されている。2021年度から2年間にわたる先行研究のレビューを通して、先行研究で明らかになっている知見を体系的にまとめるだけでなく、研究分野の現状問題とともに今後の課題も浮き彫りになった。2023年度は、オンラインのような非接触空間における製品知覚(大きさや重さ)の影響要因と課題という視点からシステマティックレビューを計画している。 また、これまで多くの研究がデジタル財の利用促進において心理的所有感の向上に焦点を当ててきたが、近年では心理的所有感が引き起こす負の効果も報告されている。同一製品の形態の相違が及ぼす影響について、引き続き心理的所有感という概念を中心に議論するが、その中でも心理的所有感の負の影響が生じるメカニズムについて調査を重ねていく。探索的な調査を実施し、一定の成果が得られた場合、投稿から報告までの期間を鑑み、国内の主要な学会で報告をする予定である。
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