研究課題/領域番号 |
21K01796
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
稲葉 知恵子 拓殖大学, 商学部, 准教授 (10440140)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 税務コーポレートガバナンス / 情報開示 / CSR(企業の社会的責任) / 税務戦略 / タックスポリシー(税務方針) / BEPS / 租税回避 / 税務会計 / 税務ガバナンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、CSRの観点から企業はいかに税務をコーポレートガバナンスに組み込み、その情報開示を行うか明らかにすることを目的とする。研究目的の達成に向けて日英の税務情報に関する開示内容の比較分析とインタビュー調査を行う。 これまで税務情報の開示は積極的に行われていなかったが、OECDの勧告を受けてイギリスは税務戦略開示の義務化に踏み切った。一方、わが国では一部の企業がCSR報告書や統合報告書等において自主的にタックスポリシーの開示を行っている。 税務コーポレートガバナンスの情報開示は国際的租税回避を防ぐことにつながり、競争の歪み、投資決定の歪みといった問題を回避することに貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、CSRの観点からいかに税務をコーポレートガバナンスに組み込み、その情報開示を行うかを明らかにする。研究2年度目にあたる2022年度においては、「研究計画・方法」に記載した通り、日本の制度研究および事例分析に取り組み、イギリスの税務コーポレートガバナンスの開示状況と比較研究を行った。 日本企業は、法令遵守(税務コンプライアンス),租税回避行為の禁止,税務当局との関係,税務ガバナンス(税務の責任者、担当者のトレーニング、税の問題があった場合の内部告発の窓口等)を中心に情報開示を行っている。税金を費用と捉えて株主価値を最大化するために優遇税制を積極的に活用すると明記している企業と,納税をCSRの一環と捉え租税回避を目的としたタックスヘイブン地域を利用しないと明記する企業があったため、その理論的背景についてステークホルダー理論から考察を行った。イギリス企業は、詳細な国別の納税額やリスク管理のフレームワークにおいて具体的に想定される税務リスクとリスクを軽減するための措置を示している点で日本企業の開示傾向とは異なる。 これまでの研究成果の一部は、日本会計研究学会第81回全国大会(東京大学)の自由論題報告において「日本企業の税務ガバナンスの開示」の報告を、税務会計研究学会第34回全国大会(横浜国立大学)の自由論題報告において「英国企業によるTax Transparency Report等の特質」の報告を行った。また、以下の通り学術誌に論文を投稿している。稲葉知恵子(2023)「タックスガバナンスとその開示に係るアプローチの日英比較」『拓殖大学経営経理研究』第123号、稲葉知恵子(2023)「日本企業の税務ガバナンスの開示」『會計』第203巻第6号。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビュー調査による情報収集が難航している。この困難さの一因は、企業秘密である税務戦略に関係するインタビューが容易ではないことにある。企業は税務戦略を重要な競争要素として位置づけており、情報の開示を制限している。 さらに、日本においては、まだステークホルダーからの税務情報の開示要請があまりないという状況も影響を及ぼしている。日本の企業は、一般的には税務情報を公にする必要性を感じていないため、税務情報の開示に関するインタビューには「答えられることがない」という理由で辞退されるケースが多い。 海外の調査に関しては、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、2022年度は現地での調査活動を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年度目にあたる2023年度は、インタビュー調査を推進するとともにこれまでの研究成果の総括と発表を行う。 インタビュー調査に関して、一般社団法人企業研究会が開催する企業税務研究部会への参加が許可されたことで、多くの企業の税務担当者とのコネクションを構築することができた。この貴重なネットワークを活かし、インタビュー調査を進めたい。さらに、情報開示を行う企業だけでなく、投資家、基準設定団体、NPO法人、政治家、研究者、ESG評価の格付け機関など、多角的な視点から分析するためインタビューの調査対象を広げ、より包括的な情報収集を目指す。2023年度は、共同研究を行っているShahzad Uddin教授を招聘し、研究を進める予定である。Uddin教授はガバナンスに関する専門知識を有し、豊富な経験を持っている。Uddin教授の協力を得ることで、インタビュー調査の実施や収集した情報の分析を効果的に進めることができる。 新型コロナウイルス感染症の扱いが5類に移行したことにより、海外出張が可能となったため、海外での調査活動を推進する。現地の企業や関係者と直接対話し、税務ガバナンスとその情報開示に関するデータを収集する。 研究成果の発表については、インタビュー調査の分析を含む研究論文を海外の学術誌に投稿することを目指す。英文校正や査読期間等を勘案すると、本年度中に公表することは困難になる可能性もあるが、少なくともサブミットまでは本年度中に行うよう努める。
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