研究課題/領域番号 |
21K01810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
徳賀 芳弘 京都先端科学大学, 経済経営学部, 教授 (70163970)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | IFRS / 開発途上国 / 訪問面接調査 / 質問票調査 / コンフリクト / 環境要因 / 共進化 / 発展途上国 / 会計基準 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、IFRSがグローバルに受け入れられているとはいえ、IFRS導入によって発生するコンフリクトを回避するために「カーブアウト」や「カーブイン」(公式の事前回避)が行われている。また非公式の事前・事後の回避によって、IFRSの実務も法域ごとに大きく相違している。本研究では、資本市場志向の強いIFRSをASEAN諸法域で最初に導入しているが、資本市場が未発達のミャンマーとカンボジアに焦点を絞って、IFRSの導入によって発生するコンフリクトを両法域が公式・非公式に、また導入の事前・事後に回避・解消する実態を分析し、環境要因と会計基準との関係に関する理論化へ貢献する。
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研究実績の概要 |
2022年度に収集した先行研究のレビューを包括的・網羅的に行った(下記のa、b、c、dそれぞれ、上位ランキングのジャーナルに掲載された関連論文、及びランク外の開発途上法域を扱う2種類の専門ジャーナル、最新のワーキングペーパー、並びに関連書物を調査)。a. 先進諸法域におけるIFRS導入の実態や経済的帰結についての調査・研究。b.開発途上法域におけるIFRS導入の実態や経済的帰結についての調査・研究については2023年度も開発途上国におけるIFRS導入の影響に関する新制度学派経済学の理論に基づく研究成果が多数公表されており、これらの先行研究のレビューを行った。また、c. 新制度派経済学・社会学による「同型化」や新古典派経済学による「ネットワーク外部性」のような、当該法域のIFRS受容の理由を説明する理論研究、および、d.「コンフリクト理論(紛争理論)」も、本研究で扱うコンフリクトの発生を異なる視点として取り上げて論点整理を行った。 関西学院大学で開催された(国際会計研究学会第2回カンファランス「国際会計研究とは何かを問い直す」)において、「国際会計研究とは何か -会計と環境要因との関係-」と題する基調講演を行い、共通の問題意識を持つメンバーと討論を行った。その成果は、国際会計研究学会の学術雑誌(『国際会計研究学会 年報2023年度第1号』に所収されている。 本研究で、時系列的な変化があるとはいえ会計基準と環境要因との関係をある程度所与とすることのできる一法域内の議論とは異なり、国際会計研究においてはその関係自体が重要な議論となりうること、会計基準と環境要因との関係を分析する際に、会計基準の新設・改廃・法域外からの導入の際に発生する「コンフリクト」に着目する必要があること、またその析出のためには当該コンフリクトがより顕在化しやすい開発途上国の研究が有効であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者はこれまで、一時的に民主化が進んだ時期のミャンマーで2度の面接調査・質問票調査を行うことができた。カンボジアでも1度の面接調査を行い、経験とデータを蓄積している。 ミャンマーでは、軍事独裁政権から民主的政権への短い移行期に調査を行うことができたが、その後、再び軍事クーデターが発生し、2023年も軍事独裁政権は続いた。そのため、カントリーリスクと新型コロナ感染症により、実地調査はできなかったが、当初の計画通り、先行研究の渉猟を行ってきた。しかし、もともとミャンマーに関する文献が少ないことから、主に他の開発途上国の研究書と国連の報告書の整理を行った。また、これまでに得た知見について、問題意識を共有できる国内の研究者と意見交換を行った。 カンボジアに関しても相変わらずカントリーリスクが高く、個人的な調査は困難である。また、複数の研究仲間が他国に移動したため、現地の研究協力者を新たに探しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、文献研究によってこれまでに得た知見と過去に行った訪問面接調査に基づいて仮説を構築しているところだが、訪問予定国での調査が可能となれば、それを可能な限り多数・多面的な訪問面接調査を利用して検証する。とりわけ、IFRSは当該法域のどの環境要因との間にコンフリクトを生み出しているか、及びどのような具体的な方法でコンフリクトの回避・解消・緩和が行われたのかについてのリサーチ・クェスチョンの解明に焦点を絞ることを続けており、訪問国の政治情勢が安定すれば、すぐに調査を開始できるように準備をしている。それが困難な場合には以下の2つの方向での研究を計画している。 欧米の開発途上国に関する会計研究者(例えば、フランスのAlain Burlaud教授[アフリカ諸国の会計実務の実態調査に関して著名な研究者])との意見交換・共同研究を行う予定である(Burlaud教授とは2024年5月29日より渡仏して4日間の意見交換を行う)。 ミャンマー、カンボジア両国との対比という点から重要度の高いASEAN内のベトナムで調査を行う予定である。現在、ベトナムを含むASEAN諸国で活躍する日本人公認会計士とのネットワークづくりを行っており、それを利用して情報収集も行う。
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