研究課題/領域番号 |
21K01828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 四日市大学 |
研究代表者 |
奥原 貴士 四日市大学, 総合政策学部, 特任教授 (50711090)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | IFRS / IAS38 / 開発資産 / 利益調整 / 研究開発投資 / 開発費 / 研究開発費 / 資金力 / 将来利益率の水準 / 将来利益率の不確実性 / 価値関連性 / 資産性 |
研究開始時の研究の概要 |
日本ではIFRS (国際財務報告基準) の任意採用が認められており現在、200社以上、時価総額で見ると東証全体の約40%がIFRSを採用している。そして、今後もIFRSを採用する企業は増加していくと見込まれている。IFRSは一定の要件を満たした開発費を資産計上することを求めており、この会計処理方法は、研究開発費のすべてを費用処理することを求めている日本基準や米国基準とは大きく異なる。 そこで本研究では、IFRS採用日本企業を対象として、IFRS特有の会計処理により資産計上されている開発資産と、株価や将来利益との関係について検証を行う。本分析により、開発資産の資産性が明らかになるだろう。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、製造業に属するIFRS(国際財務報告基準)適用日本企業を対象として、IAS 38(国際会計基準第38号「無形資産」)により資産化される開発投資が利益調整に用いられているか否かを実証的に調査することである。続いて、利益調整により資産化された疑いのある開発投資に関して、市場がどのように評価しているのかを検証することも目的である。企業が開発投資を機会主義的に資産化することで利益調整を行ってでも達成しようとする可能性があるベンチマークとして、経営者予想利益・前期利益(増益)・利益ゼロ(損失回避)の3つを用いている。 最初に、開発投資の資産化の決定要因に関する分析では、資産化を行うか否かの決定が3つのベンチマークすべてに影響を受けていることが明らかになった。3つのベンチマークを統合した変数を用いた場合でも同様の結果が示された。続いて、資産化の金額については、資産化により経営者予想を達成できる企業年では、開発投資資産化の金額が増加する影響があることが示された。そして、3つのベンチマークを統合した変数を用いた場合でも同様の結果が示された。これらの結果から、IFRS適用日本企業において、ベンチマーク達成のために開発投資の資産化が使用されていることが示唆されたといえる。 次に、価値関連性に関する分析では、特にベンチマークとして前期利益を用いた場合においては、市場は利益調整のための資産化を見透かしており、資産化された開発投資に関して、利益調整を行っている企業年とそうでない企業とを区別して評価していることが明らかになった。さらに、開発投資をすべて資産化しても前期利益を達成できない企業年と、資産化を一切しなくても前期利益を達成できる企業年とも区別して評価していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍において研究会が中止になった期間があるため予定より若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究では、IFRS適用日本企業において、業績ベンチマーク達成のために開発投資の資産化が使用されていることが示唆された。この結果をふまえて、今後はベンチマーク達成のために使用された可能性がある資産化開発投資 (開発資産)と将来業績との関係を検証する。 IFRSではIAS 38により一定の要件を満たす開発投資を資産計上するよう要請されている。すなわち、開発投資の中でも、将来便益が得られる可能性が高いと見込まれる部分のみを開発資産として資産計上するよう義務付けられている。しかし、利益調整のために資産化された開発資産は、将来便益との関係が不確実であると推測できる。そこで本研究では、この関係を明らかにするために実証分析を行う。 本年度の研究と同様に利益調整に関するベンチマークには、経営者予想利益・前期利益(増益)・利益ゼロ(損失回避)の3つを用いる。また、3つのベンチマークを統合した変数を使用した場合の検証も行う。
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