研究課題/領域番号 |
21K01866
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
飯島 祐介 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (60548014)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ハーバーマス / 学生運動 / ドイツの秋 / デモクラシー思想 / 中期ハーバーマス / コミュニケーション論的転回 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、市民的公共性を核とした、ユルゲン・ハーバーマスのデモクラシー思想の全体像を明らかにするための基礎の構築を目的とする。ハーバーマスのデモクラシー思想は、『公共性の構造転換』(1962)を中心とする前期と『事実性と妥当性』(1992)を中心とする後期とでは、明示的に論じられている。しかし、『コミュニケイション的行為の理論』(1981)を中心とする中期では明示的には論じられていない。ハーバーマスのデモクラシー思想の全体像を明らかにしようとすることにおいて、中期Habermasは言わばミッシング・リンクとなっている。本研究はまさに、このミッシング・リンクを埋めることを試みるものである。
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研究実績の概要 |
本研究全体の核心的「問い」は次の2点にある。1990年代の熟慮のデモクラシーの構想に至る、ユルゲン・ハーバーマスの「コミュニケイション論的転回」は、(a)1960年代後半の学生運動と(b)70年代後半の「ドイツの秋」とに対してそれぞれ構成された、デモクラシー思想上のいかなる課題に対する、いかなる応答であったのか。 2022年度は、(1)2021年度の研究成果である、上記(a)の点について学会発表を行った。また、(2)その発表を踏まえて論文としてまとめる作業を開始した(23年度に公開する予定である)。(3)上記(b)について基礎的な文献の読解を進めた。この作業を通じて、とくに次の2点を確認した。①ハーバーマスは、1960年代後半以降に学生運動の急進化――暴力を容認する傾向――を厳しく批判するようになってから、むしろそれにともなって、彼自身が1970年代を通じて「生活世界」の概念へと結晶化させる思想の萌芽を、学生運動に見出していること。すなわち、ハーバーマスの「生活世界」の概念は、学生運動と批判的に対峙するなかで形成された可能性があること。②「ドイツの秋」にいたるドイツ赤軍のテロリズムに直面して、暴力の問題とあらためて対峙するなかで、生活世界とシステムの二元論の構想されていること。すなわち、この二元論は、理論史的にはニクラス・ルーマンの社会システム論の批判を通じて形成されたことは論を俟たないとしても、同時に暴力の問題を背景として形成された可能性があること。(4)以上の作業の副次的な成果として、他の研究プロジェクトでの成果とあわせて、フランクフルト学派における疎外の概念について、学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は当初、1970年代のハーバーマス理論の展開を、(a)『後期資本主義における正統化の問題』(1973)、『史的唯物論の再構成』(1976) 等から再構成すること、その際、(b)とくにマックス・プランク研究所――ハーバーマスは1971年に同研究所の「科学的・技術的世界の生活諸条件に関する研究」のディレクターに就任していた――での協働作業としての側面に立ち戻って再構成することを目指していた。 以上の課題のうち、(a)については一定の見通しを得る段階にまで達したが、(b)については十分な成果を挙げるには至らなかった。進捗が遅れた主な理由は、2021年度の研究開始当初から、新型コロナウイルス感染症の流行のなかで、ドイツに渡航して集中して資料を収集・閲覧することが困難となり、研究の進捗が遅れたことがある。日本での資料収集は進めたが、入手困難な資料が残るだけでなく、効率性に大きく欠けるところがあり、研究の進捗に影響を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
日本での資料収集に限界があり、研究の進捗に影響を与えていた。そこで、今年度中にドイツでの集中的な資料収集を計画している。これによって研究を効率的に進め、2021年度以来の遅れを取り戻していきたいと考えている。しかしながら、資料の読解等の時間を考慮すると、遅れを取り戻すことが難しいことも予想され、研究期間の延長もあわせて検討している。
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