研究課題/領域番号 |
21K01874
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所 |
研究代表者 |
中田 英樹 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (70551935)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ナショナリズム / ナショナル・リベレーション / 「グローバル・サウス」ラテンアメリカ / 無政府主義 / マルクス主義 / 国民国家統合 / ルンペンプロレタリアート / コミュニティの同化作用 / グローバリゼーション / 新自由主義 / 移民 / 外国人排斥 / マイノリティ / 国家統合 / 多文化主義 / 移動民 |
研究開始時の研究の概要 |
戦前の中国大陸への「侵略」は、満蒙への「開拓者」を膨大に抱えるものだった。アメリカ大陸への移住者は、移住先での「優秀」な労働力を供出する国家発展への「国民」として受け入れられながらも、時には「棄民」と表されることもあり、現地での需要が下火になれば「黄禍論」や「恐日病」のように「侵略者」として嫌煙された。そしてこれは現在、「多文化共生」「多民族共存」を基盤とした社会づくりが必至となった日本でも同様である。 本研究ではこのような移動民たちに焦点をあて、都合よく召喚したり、問題があれば排除するような国家やホスト社会ではなく、そのなかを生き抜いてきた移動民のミクロ史からの研究の意義を問うものである。
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研究実績の概要 |
22年度、23年度の「研究状況実施報告書」に基づいて、2023年7月末から9月上旬、および、同年12月末から24年3月末まで、メキシコシティやメキシコシティ東部*にて、フィールドワーク及び、(ヴァスコンセロス図書館などでの)資料閲覧・研究作業を展開した。とくに、メキシコシティでの(ここでは個人の情報は控えたい)貴重な人物**から、多くの通常では得られない資料を閲覧させていただいた。 当初の構想からは、コロナ禍や、ウクライナ戦争などにより、根本的なフォーマットの見直しを迫られることとなったが(これらは22・23年度報告書参照のこと)、そのうえで、きわめて有意義な見解が得られた。出版社にもその再構想を説明し、評価・承認され、現在、本研究の最終成果としての単著発表へ向けて、鋭意執筆中である。 出版前という状況もあり、クローズではあるが、研究会などでも本研究で得られた知見は高く評価されており、結果的には申請時から(プラスの方への)想定外の成果が得られた、充実した有意な研究であったと思われる。出版をもって、社会や学会への成果還元をはかりたい。 *メキシコシティ東部にて、長らく参与観察を行ってきた。これに関しては、申請者の所属する社会理論・動態研究所からのBrill社から出版が確定している論集のワン・チャプターとして、成果発表する。(だが、個人情報の観点から、一切の場所や人物が特定できないようにしている)。 **この人物からのアドヴァイスで、本研究が最終成果として考えている単著における、もっとも核心たる論点が、まったくこれまで思っていたものとは異なることを教えられ、かつ、その実証のための図書館などには所収されていない私信含めた貴重な個人所有の資料を写真撮影させていただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍によって初年度の海外調査がほぼできなかったことにより、本研究はまずは大幅に遅延した。そして、ポストコロナでの円安によって、ラテンアメリカにおける「デカセギ先」としての日本のプレゼンスが根底から変容した。また、その後に起こったウクライナ戦争によって、これらコロナ禍やポストコロナの物価上昇、あるいは戦争以前に設定していた本研究の構想自体が、根本から再構築する必要があると認識し、一年度時、二年度時において、そのような旨を報告しつつ、この認識にしたがって、本研究の核心である、周辺からデカセギ移動民を考える研究を、遅れを取り戻すべく精力的に展開した。 ヴァスコンセロス図書館や、メキシコシティでのフィールド調査の調査協力者のおかげで、まったく想定していなかった貴重な資料や意見、歴史的事実を本研究に含むことができた。これが、とりわけ初年度には遅延していたものの、最終的には「当初の計画以上に進展している」と認識した最も大きな理由である。 コロナ禍での調査の難航や、戦争勃発による国際秩序の大きな変化など、この三年度のあいだ、世界は本当に大きく変わったが、それら諸変化を含み込んだ上での、適切な研究スキームの組み替えを経た、予想を遙かに上まわる成果が得られ、単著として発表できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
23年度は、夏に二カ月、冬に三カ月と、上欄に記したように、精力的に研究を新たに進め、そして再構想した研究プラットフォームの上で、斬新かつ独創性のある成果が実現しつつあると考えている。研究予算をほとんど使用し、残る作業は、最終成果としての単著発表のみである。現在、ILLでの図書貸し出しにおける「取り寄せ料金」や、現在、執筆中である最終成果としての単著作成時において発生する、新たな書籍購入などで、予算を使い切ることは間違いない。 多くの本研究申請時には想定できなかった世界史的出来事が起こり、本研究にも多大な変更を余儀なくされたが、それらに対応したうえでの、本来的な本研究の意義とは逸れない、最終成果を発表する。
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