研究課題/領域番号 |
21K01884
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
深澤 弘樹 駒澤大学, 文学部, 教授 (70584499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 放送ジャーナリズム / テレビニュース / ニュースキャスター / キャスターコメント / 共感社会 / 言説分析 / 感情労働 / テレビジャーナリズム / 共感 / 感情 |
研究開始時の研究の概要 |
昨今、インターネットで喜びや怒りが増幅され、人々の情動や共感によって世論が形成される傾向にある。本研究では、こうした共感社会において、世論形成の起点となるニュースキャスターのコメントに着目する。内容分析によってコメントの言語的特徴を分析するとともに、彼/彼女らの共感重視意識をインタビュー調査で明らかにする。それにより、公共的な言論空間構成におけるキャスターのあり方を問い、その役割を再定義する。
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研究実績の概要 |
本研究は共感重視社会におけるニュースキャスターのあり方に注目し、キャスターコメントの言説分析とキャスターインタビューからその役割を問うものである。このうち、2年目にあたる令和4年度は本研究の分析枠組みである感情労働の考え方と言説分析の接合を目指して論文「ニュースキャスター研究の視座:批判的ディスコース分析と感情労働からのアプローチ」を執筆した。『駒澤社会学研究』(第60号)所収の本論文では、感情労働概念を用いたキャスター研究を批判的ディスコース分析 のなかにいかに位置づけるのかを考察した。 本研究ではキャスターを縛り、発話行為へと至らしめる諸力(権力)のありかに焦点をあて、キャスターの振る舞いを感情労働から生じたものと考える。キャスターの振る舞いの準拠枠組みとなっているのが世間で共有されている常識や規範なのであり、それらを感情規則としてキャスターは感情労働を行い、彼/彼女らの発言内容を枠づけている。以上を踏まえ、本論文ではネット社会で進行する共感社会において、キャスターの語りの世論形成への寄与の解明において感情労働を用いて読み解くことの意義を強調した。 このほか、令和4年度については、令和5年度に予定しているインタビュー調査に向けて前述の論文執筆後の2月に数社の放送局に接触を試み、本研究の趣旨を説明する機会を得た。その際、報道部門の責任者へのヒアリングも合わせて行い、現在のテレビニュースやニュースキャスターの現状、ネット社会を迎えての局側がニュースキャスターに望む役割などを聞くことができ、インタビュー調査を行うにあたって有益な基礎資料が得られた。さらに、複数の社からインタビュー調査への協力を前向きに検討するとの返事をもらっており、調査協力を得られるメドがついた。以上が令和4年度の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度においては、本研究における理論的枠組みとなる感情労働と言説分析について改めて先行研究をレビューして本研究の視点を再点検した。今後のインタビュー調査の問題意識を固めることができ、次年度へとつなげる意味で一定の成果を挙げることができた。この取り組みについては、令和3年度の後半に東京五輪報道のキャスターコメント分析を行い、言説分析手法や理論化の検討が不十分なまま事例研究へと移ってしまった反省を踏まえてのものである。このまま進めた場合、依拠する理論が定まらず、分析手法の明確化が不十分なままでは結論の説得力に欠けると感じたため、原点に立ち返る意味もあって令和4年度は研究の土台固めに時間を費やした。 その一方で、当初予定していた令和4年度の研究に着手できなかった部分も生じた。令和3年度末時点ではテキストマイニングソフトを用いたキャスターコメントやーシャルメディアのコメント分析を令和4年度に行う予定であったが、この年度の着手は断念し次年度に行うこととなった。最終年度となる令和5年度は無理のない計画を立てて挽回したいと考えている。 インタビューに関しては、令和4年度は調査の準備期間と位置づけていた。この年度ではキャスターの予備インタビューまでは行えなかったものの、数社に訪問して概要説明を行い、いくつかの社からは調査協力を得られる見通しとなった。この点では当初の計画を完全にクリアしたわけではないが一定の成果を挙げることができた。以上のことから、研究そのものの進展は見られたものの、計画通りに進んでいないことも見受けられることから進捗状況は「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度については、令和4年度に取り組みなかったキャスターコメント分析について具体的なトピックを定めて行うとともに、早い段階から放送局に接触を試みインタビュー調査を行って最終年度のまとめを行う。前者については、令和3年度に行った東京五輪報道でのニュースキャスターコメント分析をさらに進め、テキストマイニングソフトを用いて新たな知見を得たい。同時に、ソーシャルメディアのデータ分析も実施し、世論形成メカニズムの解明と感情や共感重視社会のありようを探っていく。 後者のインタビューについては、最終年度はまとめの時間も必要なことから、年内にインタビュー調査を終えて残りの期間でインタビューの結論づけを行う。スケジュールとしては前期から積極的に放送局にアプローチし、本研究の概要を説明したうえで実際のインタビュー調査の日程を固める。同時に、調査依頼社を増やして本年度中に20名程度のインタビューを行うことを目標とする。時期としては、2023年8月・9月(夏休み期間)、11月(学園祭期間中)を考えているが、できるだけ前倒しで進めたい。 以上の調査により、熟議民主主義を成立させるうえでキャスターに何が可能か、「語る存在」としてのキャスターの存在意義とは何か、ひいてはテレビジャーナリズムの可能性を探る。なお、本インタビューについては、学内の倫理委員会の審査を経たうえで調査を試みることとし、調査倫理にも十分配慮した上で行うこととする。この計画が円滑に進むよう、事前におおまかなスケジュールを設定し、随時、進捗状況をチェックすることを心がけて大幅な遅れが生じないよう気を配りたい。
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