研究実績の概要 |
年齢調整死亡率に関する政府統計の発表が予想より遅れ分析ができなかったため、当該年度においては主に研究成果のとりまとめと公開を進めた。実績としては次の3件である。〔学会発表〕1件:江頭大蔵「災禍の時代と自殺問題」第96回日本社会学会大会シンポジウム(2023年10月9日・立正大学品川キャンパス)。〔著作〕2件:江頭大蔵,2023,「コロナ・パンデミックと日本の自殺」遠藤薫・山田真茂留・有田伸・筒井淳也編『災禍の時代の社会学――コロナ・パンデミックと民主主義』東京大学出版会,67-83.;EGASHIRA, Daizo, 2023, " L’augmentation des suicides des femmes au Japon ," in ANDOLFATTO, Dominique(ed.), Citoyens dans la crise sanitaire, Classiques Garnier, Paris, 313-323.具体的内容としては、下記の通りである。 従来から日本における自殺の要因については男女による性差が存在することを指摘しており、2020年から全世界に影響をおよぼした新型コロナウイルスの感染拡大も、男性と女性で自殺傾向に異なる影響を及ぼした。2010年から減少してきた日本の自殺者数は2020年には反転して増加傾向を示したが、この反転現象は女性の自殺者数の増加によるもので、男性の自殺者数は減少傾向を維持したままであった。都道府県別に算出された2020年の年齢調整自殺死亡率は未公表であったため、2015年のデータを分析したところ、男性は収入を一定にすると労働時間と自殺率の関係は見られないが、女性は労働時間と自殺率の間に強い負の相関関係(-.789)が見られ、女性は男性と比較して行動制限による他者との対面的接触の減少が自殺傾向を促している可能性が示された。
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