研究課題/領域番号 |
21K01901
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
秋谷 直矩 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (10589998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | エスノメソドロジー / 現象学 / ゲシュタルト心理学 / ガーフィンケル / グールヴィッチ |
研究開始時の研究の概要 |
エスノメソドロジー(以下EM)草創期におけるシュッツの現象学的社会学からの影響関係の検討に偏重してきた従来の学史研究と比して、その重要性は認識されていながらも、グールヴィッチの知覚の現象学のEMに対する影響のありようはこれまで十分に検討されてこなかった。この問題意識のもと、本研究は、当時の社会学・心理学・現象学の動向および戦後アメリカ行動科学の展開を視野に入れつつ、EM創成の様相を歴史的に再追跡する。その成果を踏まえて、現在のEMの経験的研究との連続性と断絶性を検討することにより、EM成立期から現在に至るまでの展開について、未整備だった側面からの眺望を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
2022年度の上半期は育児休暇取得により研究することはできなかったが、下半期の復帰後、昨年度までの文献資料の整理・分析の成果として、第95回日本社会学会大会にて「ガーフィンケルによるグールヴィッチの「意図的な誤読」とはいかなる実践か」と題して発表した。内容は以下の通りである。 グールヴィッチの『意識の領野』のテクストのオーソドックスな読解と、ガーフィンケルによるエスノメソドロジーの態度によるその「意図的な誤読」の対照比較作業を通して明らかにしたことは、以下3点である。まず、(1)要素還元主義的な心理学における感覚と知覚の二元論的前提を批判するグールヴィッチの議論の形式を、ガーフィンケルはパーソンズ的な具体的行為/分析的行為の区別を導出するために敷衍している。(2)要素還元主義的な心理学における「感覚的総体はカオスである」という前提を批判し、それ自体秩序立っているとするグールヴィッチの議論の形式を、ガーフィンケルは社会における普通の人びとの具体的行為に敷衍し、人びとの行為は自生的かつ秩序だっているという結論を導いている。そして、(3)グールヴィッチは「文脈」概念を純粋意識のうちに「不変的に」形成される知覚されたゲシュタルトの構成的一貫性として用いているが、ガーフィンケルはこれを行為や活動の組織を意味するものとして読み替えている、ということである。以上の整理を踏まえ、先行研究においては、特に上述の(1)のポイントが十分に議論されていないことを指摘した。 (1)のポイントは、ガーフィンケルがパーソンズ的な社会学における構造ー機能の議論に準拠しつつ、それをグールヴィッチを経由したゲシュタルト心理学の知見を用いてエスノメソドロジー的に読み替えていったことを示すものである。この点は、本研究の課題に照らして更なる検討を要する重要なトピックである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の上半期は育児休暇を取得したため、研究を進めることができなかった。しかし、研究開始初年度である前年度の文献整理・分析作業により、ガーフィンケルに対するグールヴィッチの影響についての基本的な部分を明らかにすることができた。また、その成果を学会発表することもできた。以上のことから、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前年度までで発見された発展的課題である、ガーフィンケルがパーソンズ的な社会学における構造ー機能の議論に準拠しつつ、それをグールヴィッチを経由したゲシュタルト心理学の知見を用いてエスノメソドロジー的に読み替えていったことの内実を検討する。また、資料分析の範囲をガーフィンケルの弟子や共同研究者のテクストにも広げ、エスノメソドロジー草創期における現象学の影響を多角的に検討する予定である。
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