研究課題/領域番号 |
21K01905
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
前田 尚子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 研究員 (50320966)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 小農世帯 / 家族戦略 / 地域的多様性 / マッピング / モノグラフ / 農家経済調査 / ライフサイクル / 戦間期農家 / 労働配分 / 福岡県 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1921年から1941年にかけて実施された福岡県農会「農家経済調査」報告書データを用いて、戦間期都市近郊農家における家族戦略の実相に迫る。この調査は同一世帯を追跡するパネル形式の簿記調査で、世帯員の労働時間調査も併せて実施している。本研究では、対象農家31世帯について、経営収支と労働時間を相互に関連づけながら生活史を描き出すという独自の方法により、各農家の戦略的対応とその帰結を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は福岡県農会刊行の報告書データを用いて福岡県下17農家の事例分析を行うという計画のもとに始められたが、昨年度より、全国の個票データを収めた一橋大学「戦前期農家経済調査データベース」の利用が可能となり、さらに京都大学所蔵の個別原票閲覧も許可された。使用できるデータが質量ともに飛躍的に拡大したことをふまえ、農業地図と工業地図を組み合わせて地域産業構造を可視化し、特徴ある地域を選んで個別農家の事例分析を行うという、新たな分析枠組みを構築した。これまで取り組んできた福岡県の事例分析は、鉱工業が発達し男性の農外就業機会が豊富な水稲蔬菜畜産(二毛作)地域のモノグラフとして、新たな分析枠組に包摂される。 以上の分析枠組みのもと、今年度は以下の研究を行った。 1.データベースの619農家(3280世帯年)の家族形態の標本バイアスを検討した。その結果は3点にまとめられる。①直系家族システムの典型的な周期から外れた世帯はごくわずかである。②直系家族システムの家族周期の中で夫婦家族の形態をとる世帯の出現率は過小である。③家族規模の標本バイアスには地域差があり、九州・四国地方では比較的大規模な(子ども数が多い)農家が過大である可能性がある。 2. 福井県の人絹織工を擁する農家6農家を対象として、人絹織物業の盛衰と家族戦略という観点から事例分析を行った。人絹織工農家6世帯(29世帯年)の特徴としては、(a)「水稲単作1町と人絹女工1人」が世帯経済の2本柱、(b)「稲作は経営主とその父母、人絹工場勤めは妻」という分業関係、(c)家事時間の大幅な切り詰め、(d)工場労働に稲作労働の季節的変動が組み込まれていることがある。また、時系列的にみると、稲作と織工への労働配分のバランスは、歴史的な社会変動に応じて変更されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、上述した、マッピングとモノグラフの組み合わせによりマクロとミクロを連接するという分析枠組みのもと、福岡県とは工業および農業の構造特性が異なる地域として福井県(人絹織物業が発達し女性の農外就業機会が開けた稲作単作地域)ならびに岩手県(男女ともに農外就業機会が少ない一毛作地域)の事例分析を行う予定であった。しかし、研究代表者の体調不良により、福井県の事例分析のみにとどまったために、やや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新たな分析枠組のもとで、事例分析を積み重ねていく。令和3年度~4年度は福岡県17農家を、令和5年度は福井県の人絹織工を含む6農家の事例分析を行った。令和6年度は、岩手県13農家の事例分析を行う。 それと並行して、同じ繊維産業地域でも、生産品目の質的な違いが家族戦略に及ぼす影響を検討するために、輸出向け量産型の福井絹人絹産地とは対照的な地域として、多品種少量生産の毛織物生産が行われていた愛知県に焦点化し、毛織物織工を擁する農家の家族戦略の析出を試みる。
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