研究課題/領域番号 |
21K01909
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
横山 寿世理 聖学院大学, 基礎総合教育部, 准教授 (00408981)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 集合的記憶 / 親沢人形三番叟 / アルヴァックス / 伝承 / 伝統芸能 |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀末から人文社会科学分野において、さまざまな記憶研究が盛んである。その記憶研究の動向は、過去についての記憶の変容や継承の断絶である。その変容する記憶という観点は、能や歌舞伎をはじめとして、本研究で事例として扱う人形三番叟という山間の集落に伝わる伝統芸能研究でも前提とされている。 そこで、本研究では、7年で担い手12名が総入れ替えする口承芸能「親沢人形三番叟」を事例とすることで、アルヴァックスの集合的記憶論が、異世代間で継承される芸能の不変性を明らかにできることを提示したい。担い手不足に悩む集落の芸能が変容に晒されながらも、人形三番叟という芸能自体が不変であることを示せると予想している。
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研究実績の概要 |
本研究は「親沢人形三番叟」という伝統芸能を、親沢集落に継承される「集合的記憶」として捉え、その不変性を舞台映像分析から明らかにすることを目的にしている。また、このような伝統の伝承・継承を果たす集合的記憶の働きを明らかにすることで、その集合的記憶の理論枠組みを修正することになると予想して いる。 「親沢人形三番叟」は、7年毎に人形・囃子の担い手(全12名)が交代して、それまでの担い手は指導役に回る。弟子→親方→おじっつぁを7年ずつ合計21年担 当するという芸能である。この芸能は、200から300年あまり続いてきた親沢諏訪神社の春祭り(4月第2日曜日)で奉納され、それに先立ち3月下旬から「 舞台開き」、練習、「検閲」、「舞揃え」という行程で進む季節限定の芸能となる。したがって、本研究の方法は、季節限定的に「親沢人形三番叟」の舞台を撮影することと、その舞台の場面を時間運びや空間配置とともに分析することにある。 令和5年度は、4年ぶりに親沢諏訪神社の春祭りが行われ、親沢集落の人形三番叟だけでなく、川平集落の鹿舞も演じられ奉納された。そのため、3月中旬から開始された祭と芸能の準備と練習を見学させてもらった。特に、4月初旬に見学をした「検閲」は弟子、親方、おじっつぁが一同に会し、舞台の最終確認を行うもので、これを観察できたことは研究の前進につながった。また神への奉納である「舞揃え」と、観客が多く集まる本番についても、観察・録画することができた。これらの参与観察の結果は、令和5年度に開催された学会大会で2回報告した。 その他、親沢人形三番叟と同じ様な担い手継承システムを維持している埼玉県蓮田市「閏戸の式三番」を見学した。 集合的記憶の理論枠組み研究のためのアルヴァックス『聖地における福音者の伝説地誌』結論の翻訳も、例年通り、研究協力者と共に進めて、一部分を発行することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年ぶりに親沢諏訪神社の春祭りが開催され、その準備段階から本番までの参与観察ができ、本来の研究計画を実行することができた。また、春祭り中止期間に収集した資料を、実際と比較検証して、学会大会での報告にもつなげている。 親沢人形三番叟の分析枠組みとなるアルヴァックス自身による「集合的記憶」の実証的研究La topographie legendaire des evangiles en Terre sainte(『聖地における福音書の伝説地誌』)の翻訳を他の研究者とともに進めて、『聖学院大学論叢』36(1)に掲載することができた。 さらに、本研究と併存させている原爆文学批評研究を統合する理論枠組みとして、「集合的記憶の理論社会学」を論文化できた。計画の順としては、本研究を論文化した後に期待された論文であったが、本研究を進める中でこの理論研究が常に意識され、結果として先にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、令和5年度は弟子6年目の舞台であるはずだった。計画通りならば、人形の「しな」や舞台空間の使い方が観察される予定であった。 そこで、今後は、これらの課題を明らかにすべく映像の分析を行いたい。その先、令和5年度に収集した埼玉県蓮田市の「閏戸の式三番」の舞台空間に関する映像記録が大きな助けとなるように予想している。 またアルヴァックスによる「集合的記憶」の実証的研究La topographie legendaire des evangiles en Terre sainte(『聖地における福音書の伝説地誌』)の翻訳を続けたい。
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