研究課題/領域番号 |
21K01923
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
園井 ゆり 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (40380646)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自立援助ホーム制度 / 社会的養護 / 18歳以降 / パーマネンシー理念 / 自立援助ホーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、自立援助ホーム制度発展のための効果的実践方策を意識的要因と制度的要因において分析し、提言することである。自立援助ホーム制度とは1997年に児童自立生活援助事業として法定化された制度であり、社会的養護の措置を解除された18歳以降の自立支援を目的とする。意識的要因については援助ホームを運営する養育者の自立支援に対する理解度等について分析を行う。制度的要因については有効な進学就労支援制度等について分析を行う。最終的に、自立援助ホーム制度発展のための実践方策を提言する。要保護児童の福祉増進のための社会的養護体系をパーマネンシー理念に基づき構築し、援助ホーム制度を本体系下に位置づける。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、自立援助ホーム制度発展のための効果的実践方策を、自立援助ホームを運営する養育者の意識的要因と、自立援助ホーム制度に関する制度的要因において分析し、提言することである。自立援助ホーム制度とは、1997年に児童自立生活援助事業として法定化された制度であり、社会的養護の措置を解除された18歳以降の自立支援を目的とする。社会的養護を必要とする児童(以降、要保護児童)は、18歳到達後は措置解除となり、自立生活能力が十分ではない場合も自立を強いられる。しかし、一定年齢に達したことで養護が終了するのは問題であり、自立までの継続的支援が必要である。自立援助ホーム制度は、18歳以降の自立支援を目的として設立されたが現在ホーム数は約220カ所程度であり、18歳以降の要保護児童のうち、ホームを利用する児童は約2割にとどまる。また多くは関東地域の大都市圏に集中しており、現状では自立援助ホーム制度は有効に機能しているとは言い難い。 今年度は九州地域における3つの自立援助ホームのホーム長に対する聞き取り調査を実施し、自立援助ホーム制度発展にむけた制度的要因課題について、主に次の3点の知見を得た。第一に、自立援助ホームにおける支援は児童の社会的自立に必要かつ適切な課題(経済的自立基盤の確保や職業的規範の習得等)を統一的に策定した上で行い、これらの課題を児童が達成したとホーム長が判断するまで行う。第二に、進学支援については給付型奨学金制度や公的自立支援資金制度等を活用し、主に経済的に進学基盤を支援する。就労支援については経済的支援に加え職業選択時の相談援助等、精神的支援を行う。これらは例えば地域の就労支援事業を活用するなど、地域社会の協力を得た上で行う。第三に、自立援助ホーム制度は社会的養護措置解除後の全要保護児童のための自立支援制度として機能しうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの本研究の達成度としては、おおむね順調に進んでいる。今年度は九州地域における3つの自立援助ホーム(女子ホーム1施設、男子ホーム2施設。入居児童数は各ホーム6人)のホーム長に対する聞き取り調査を実施した。その調査結果から特に自立援助ホームの制度的課題について次の3点の知見を得た。 第一に、自立援助ホームにおける支援内容についてである。現在自立援助ホームに求められる支援内容は、大きく就労支援、進学支援、メンタルヘルス支援の3つがある。もともと自立援助ホームは就労を希望する入居児童の自立を支援する場として位置づけられていたが、近年は進学を希望する入居児童もおり、さらに心身上の配慮を要する児童も入居している状況にある。しかし、1つのホームでこれら全ての支援に対応することは難しく、それぞれの支援に特化した形(例えば就労支援を専門に行うホーム、進学支援を専門に行うホーム等)でホームを専門化する必要がある。 第二に、行政による自立援助ホームの位置づけについてである。自立援助ホームはその自立援助ホームを管轄する行政により、ホームの設置基準や入居者への利用料徴収の仕組み等が異なっており、行政による自立援助ホームの措置基準等を統一的に策定する必要がある。 第三に、自立援助ホームにおける待遇改善についてである。①調査対象ホームにおける勤務体制についてみると、対象ホームの勤務体制は交替制であったが、雇用できる職員数が限られており、交替勤務に支障が出る場合もあることがうかがえた。②調査対象ホームにおける職員の待遇面についてみると、昇給制度がなく、長期的に勤務継続することに対する見通しが持ちにくい状況にあることもうかがえた。自立援助ホームにおいて入居児童の生活を支える職員は重要な支援の担い手である。職員の待遇を全面的に改善することが今後の自立援助ホームの質的改善を図る上で必要不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究についても研究計画通りに進める。次年度は最終年度であるため、これまでの研究成果をふまえ、自立援助ホーム制度発展のための分析と提言を行うとともに、パーマネンシー理念に基づく包括的な社会的養護体系を提示する。具体的には以下3点を示す。 第一に、自立援助ホーム制度発展のための分析と提言については、意識的要因については、自立援助ホームを運営するホーム長の、自立支援に対する理解度、多人数養育に対する負担感、自立援助ホーム制度に対する認識度についての分析をまとめた上で提言を行う。制度的要因については、自立援助ホームにおける入居児童に対する支援内容の統一的基準、効果的進学就労支援制度、社会的養護制度と援助ホーム制度との機能的連関について分析を行い、提言する。 第二に、パーマネンシー理念に基づく社会的養護体系については、本研究では児童に対して安定的、継続的な養育者及び養育環境を保障する、パーマネンシー理念を提示し、本理念を基盤にした新しい社会的養護体系を構築する。パーマネンシー理念は、要保護児童の福祉増進を目的とする理念であり、その特徴は要保護児童に対する恒久的な支援の提供にある。 第三に、パーマネンシー理念に基づく社会的養護体系下における、自立援助ホーム制度の位置づけについては、本体系下で自立援助ホーム制度は社会的養護の措置を解除された18歳以降の自立に至るまでの、効果的な継続的支援制度として位置づけられることを示す。2016年改正児童福祉法により、自立援助ホームの対象者年齢が22歳までに拡大された。これをふまえ、本体系下では家庭養護における措置解除児童については、引き続き同一の里親家庭又はFHにおいて22歳の年度末まで養育継続されることとし、施設養護における措置解除児童については、当該施設と同一地域にある援助ホームにおいて22歳の年度末まで養育継続されることを提案する。
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