研究課題/領域番号 |
21K01936
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
坂田 謙司 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70388081)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 女性 / 声 / ジェンダー / 職業婦人 / 電話交換手 / 百貨店の女性店員 / 社会規範 / 案内 / 補助 / 支援 / 販女 / 路上販売 / 社会史 / アシスト労働 / 感情労働 |
研究開始時の研究の概要 |
われわれの生活社会には、多くの声が遍在している。その多くは「自動音声」であり、「女性の声」というジェンダーバイアスを持っている。例えば、エスカレーターに乗る際に聞こえるアナウンス、電車やバスの車内で流れるアナウンス、自動改札機や券売機のアシストを行うアナウンス、カーナビ、自動精算機、ATM、など枚挙にいとまがない。逆に、男性の声を聴く機会は極端に少ない。なぜこのように「声」と「ジェンダー」には、大きなギャップと強い関係性があるのだろうか。そのメカニズムを社会史という方法で説き明かしていくのが本研究の概要である。
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研究実績の概要 |
2023年度の実績は、以下の通りである。 研究課題である「社会に遍在する「声」とジェンダーの社会史」について、文献及び新聞データベースの関連記事、明治末から大正期初めにかけて登場した働く女性達の存在、女性達に眼差されていた社会的なジェンダー規範などの調査を行った。その結果、単に女性達に求められていた社会的な存在や規範意識だけが現代社会の土台となっただけでなく、女性達の「声」が身体と切り離された状態で社会に立ち現れたことによって、それまで必ず身体とともにあった「声」が改めて独立した存在として社会で認知されたことが重要なポイントであったことが分かった。 その認知を主体は「男性」であり、それまで身体や容姿に対して求められていた「美しさ」という評価軸が、女性の「声」に対しても、異なる美的基準を生み出したうえで眼差されていたのである。そのきっかけを作ったのが1890(明治23)年に、始まった日本初となる東京ー横浜間での電話サービス開始である。電話サービスには交換業務が必須であり、当初男性交換手が担っていた交換業務は次第に女性に置き換わり、その女性交換手の声が見えない身体と容姿を想像させ、また女性交換手の声による接客に対する規範は当時の女性達に求められていた規範が割り当てられたのである。その他、職業婦人の増加によって接客を中心とした職業も増え、そのことが社会のなかに女性達の声を多く生み出したのである。 このようにして、現代社会において遍在する「女性声」のアナウンスが生み出されたとということが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題研究の進捗に関しては、概ね予定通りに進んでいると言える。その理由は、以下の3点にある。 ① 女性の声が身体と切り離されて存在し、その声に関しての「声のルッキズム」的な評価が行われていたことを発見できた。 ② 職業婦人の増加、特に電話と百貨店の登場が大きく女性達の「声」を社会的な存在として位置づけたことが発見できた。 ③ 女性達の「声」の存在は社会に大きく広まったにもかかわらず、その「声」に対する眼差しは常に社会的なジェンダー規範が当てはめられ、現在にいたるまで変わっていないことが明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、明治期及び大正期を通じて女性達の話し方についての指南書を検証し、当時の女性達の「声」の背景にあった社会的な規範内容をより詳細に検証する。また、研究成果を論文や学会発表を通じて社会に発信し、現代社会における「声とジェンダー」の関係がなぜ依然として古いジェンダー規範をまとっているのかを明らかにする。 本課題研究で明らかとなった成果は拙著『「音」と「声」の社会史』法律文化社の一部に収録されており、また毎日新聞の取材を受けて記事化され、当該テーマでの原稿執筆依頼も受けている。このような機会を積極的に活用して、課題研究成果の社会への発信を行っていく。
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