研究課題/領域番号 |
21K01953
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
増子 正 東北学院大学, 教養学部, 教授 (80332980)
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研究分担者 |
金 美辰 大妻女子大学, 人間関係学部, 准教授 (30517222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | デンマーク / インフォーマル活動 / 活動財源 / ボランティア憲章 / 福祉レジーム / ファンドレイジング / 地域福祉 / ボランティア / 市民活動 |
研究開始時の研究の概要 |
地域の福祉課題解決を公的サービスのみに依存できないことは明らかで、住民ボランティア組織やNPOの活動が欠かせないが、その多くが活動資金の調達に苦慮している。一方で、デンマークやフィンランドなど北欧諸国では日常生活支援部分に関するすべてを公的サービスがカバーするのではなく、市民ボランティアが市民や自治体から十分な活動のため原資を獲得して持続的な地域福祉活動を行っていることから、本研究では地域福祉活動を行うための財源的基盤を形成するための仕組みを北欧のモデルから考察して、わが国における地域福祉活動の財源確保のためのファンドレイジング(資金調達)のマネジメントモデルを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域福祉活動を行うための財源的基盤を形成するための仕組みを北欧のモデルから考察することにある。当該年度では、デンマークでは2番目に大きい規模のボランティアの組織であるFaglige Seniorを対象にインフォーマルな活動のための財源確保の状況について現地でヒアリング調査を実施した。デンマーク労働組合連合会をはじめとする14の労働組合で組織し、当該組織の活動は労働組合運動の一部に位置付けられている。調査結果から、Faglige Seniorの活動財源の調達が次のようになされていることがわかった。①労働組合の支援:Faglige Seniorの主な活動財源の調達方法は、会員としての会費を納めてもらう必要はなく、在職または過去に在職していた労働組合が一人あたり毎年5DKKを会費として支払っている。②コミューン(市町村)からの支援:Faglige Seniorの地方支部が置かれているコミューンから会員の人数に応じた負担金が支払われている。③公的資金からの寄付:宝くじ協会から年間1,000万DKKが配分されている。また、複数の労働組合で設置する企業基金から年間350万DKKが配分されている。④独自の資金調達:高齢者ハンドブックの販売収益とHPのバナー広告の収益が年間150万DKKある。Faglige Seniorではデジタルプログラムに力を入れていて専任のデジタルコンサルタントの担当職員を配置していることもあり、185,000件のメーリングリストの登録数がある。 デンマークでは2013年に中央政府により「ボランティア憲章」が発布され、地方自治体も2015年末までに「自治体のボランティア憲章」を策定していることが背景にあり、自治体が国民・市民のボランティア活動を支えていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会福祉基礎構造改革の一環で2000年に改正された社会福祉法の第1条の目的には「地域福祉」という言葉が明文化され、同法第4条に、「地域福祉の推進」が掲げられ、地域福祉の担い手を行政や福祉サービスを提供する事業者などに限定せず、広く住民組織やボランティア団体、NPOなどであることが示されている一方で、住民組織や市民団体が行うインフォーマルな地域福祉活動の活動資金が確保されていない。 本研究の方法は、①わが国におけるインフォーマルな組織が抱えている活動の財源確保に関する課題を整理するとともに、②国民のボランティア参加率が高いデンマークとフィンランドに焦点をあて、インフォーマルなセクターの活動資金調達の状況を調査して、地域福祉活動の財源を確保するためのファンドレイジングのあり方を検討することである。 ①については、日本におけるインフォーマルな活動の財源が確保されていない理由を、日本国憲法第89条(公の財産の用途制限)による公私分離の政策がとられ、措置委託を受けた事業でないインフォーマルな活動には公金が配分されることはないことと、福祉の分野の事業は、措置制度と呼ばれるように公的な財源(助成金・補助金)を受けてサービス提供をしてきた経緯があることが理由であることを導くことができた。②については、デンマークでは、「ボランティア憲章」のもと、国と地方自治体が市民のボランティア活動を資金面でバックアップしているとともに、当該年度に現地調査したFaglige Seniorでは、労働組合活動の一環として複数の労働組合や民間企業による財団の支援が活動財源を支えていると同時に、独自のICTを活用した広告収入の確保、非営利くじ(宝くじ)の発行などさまざまな手段でインフォーマルな活動の財源を確保していることがわかった。 以上のことから、本研究はおおむね順調に実施できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
公的サービスだけでは解決できない地域の福祉課題解決のために多くの住民組織やNPOが活動しているが、その多くは活動資金の確保に苦慮している。社会福祉法では社会福祉の基本理念に地域福祉を掲げているにもかかわらず、地域福祉活動を支えるための財源の担保がなされていないことが背景にある。本研究では、地域の住民組織やボランティア団体が継続的に地域福祉活動を行うための財源的基盤を形成するためのファンドレイジングの仕組みづくりのマネジメントモデルを体系化することを目的としている。 当該年度では、デンマークで2番目に大きい規模のボランティア組織を対象に現地調査を実施することができ、国及び地方自治体が「ボランティア憲章」によりインフォーマルセクターの活動資金を、かなりの額配分していることと、ボランティア組織が独自の方法で活動資金を調達していることがわかった。次年度では、ボランティア天国と呼ばれるほど多くのインフォーマルな組織が活動しているフィンランドにおいて、日本の地域包括ケアシステムに相当するケアシステムの日常生活支援を担っているインフォーマルな組織を対象とした活動資金確保のファンドレイジングの仕組みをインタビュー調査で明らかにしていく予定である。
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