研究課題/領域番号 |
21K01958
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
武川 正吾 明治学院大学, 社会学部, 教授 (40197281)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 新型コロナ / 福祉意識 / 福祉レジーム / パンデミック / 社会政策 |
研究開始時の研究の概要 |
社会福祉学,社会学,政治学などを中心に,福祉レジームの研究は国内外で行われている.これまでは各国の福祉レジームを脱商品化(市場から独立して生活することのできる可能性)と階層化(社会政策によって不平等が再生産されているか否かの程度)の視点から分析されることが多かった.この研究も基本的に福祉レジームの研究の潮流のなかにあるが,それだけでなく,社会意識を焦点化しているという点に特徴がある.福祉意識のパターンが福祉レジームの決定にどの程度反映しているのか,反対に,福祉レジームの形態が福祉意識のパターンにどの程度の影響を及ぼしているかを追求するための出発点である
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研究実績の概要 |
本研究では福祉国家の社会政策に関する価値意識や社会的態度を「福祉意識」と呼ぶ.従来の福祉レジーム研究では,「脱商品化」(no work no payからどの位自由となっているか)や「階層化」といった社会政策に関する客観変数の分析が中心だったが,本研究では,福祉意識といった主観変数を主として扱う.本研究における問いは,(新型)コロナ前,コロナ期.コロナ後で,日本人の福祉意識(高福祉高負担,普遍主義,必要原則,政府役割など)がどのように変化したかという点に絞られる. 「高福祉高負担」の支持率はコロナ前の安倍政権(2011-2020)の時代は低下の傾向にあったが,コロナの期間に上昇に転じた(60.9%).しかしコロナ収束後の2023年にはコロナ前よりも低い水準となった(47.2%).「普遍主義」の支持率もコロナ禍によって減少から上昇に転じた.しかも「高福祉高負担」と異なり,コロナ後も上昇を続けた(56.1%). これら二つと異なり,「必要原則」の支持率はコロナ前から上昇傾向にあり,コロナ期にピークとなった.しかしコロナ収束後に低下した.「公共部門」の支持率は2010年代には相対的に低かったが(68.8%),コロナ期に急増し,コロナ収束後はさらに増加した(77.3%). 以上から総じて言えることは,コロナ禍を契機に福祉国家に親和的な福祉意識が形成されたということである(新自由主義の終焉).とはいうものの,「普遍主義」と「公共部門」の支持率はコロナ後も上昇を続けているが,「高福祉高負担」と「必要原則」の支持率はコロナ前の水準に戻った. 社会サービスは普遍主義的(所得制限なし)に公共部門中心に提供されることを望むが,負担の増加に対しては消極的で,貢献原則(拠出に応じた給付)もあるていど受け入れるというのが,コロナ後の福祉意識の現在(2023年8月)である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの収束が当初予測よりも遅れたため,コロナ後の福祉意識に関する調査の実施が当初計画の最終年にまで持ち越されてしまった.このため分析は単純集計レベルでとどまっている.また国際比較についてはデータの入手ができていない.
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今後の研究の推進方策 |
現在,単純集計レベルの分析にとどまっているが,今後は,福祉意識に影響を及ぼす要因を含んだ多変量解析へと進まなければならない.また国際比較データの入手可能性について検討を要する.本研究における現在の,暫定的結論については,「研究実績の概要」のところで述べたが,各福祉意識が必ずしも同じ方向で変化していないことや,「概要」では触れなかったが,格差是正に対する政府責任への支持の低下が続いていることなど,上記暫定結論との整合性について検討する必要がある.
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