研究課題/領域番号 |
21K01967
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
中塚 晶博 岐阜聖徳学園大学, 看護学部, 教授 (20597801)
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研究分担者 |
山本 克司 修文大学, 健康栄養学部, 教授 (50389201)
森下 直貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (70200409)
目黒 謙一 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (90239559)
吉田 輝美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90517153)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 認知症 / 介護負担 / 人権保障 / 虐待防止 / 介護者の人権 / 認知症者の人権 / 寛容社会 / 医師患者関係 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、医療・介護現場での事例の収集・分析等を通じて、以下のテーマに対し医学、医療、倫理学および法学の専門家らによる協働的なアプローチを行い、認知症患者の人権保障と家族の幸福を両立させるためのケアの確立を目指すものである。 (1) 認知症の「精神・行動症状」への対応方法を倫理的観点から再構成する (2) 法律上の限界を踏まえた上で、認知症者の自由と介護者負担の軽減を両立するために医療者が担うべき役割を明らかにする。
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研究実績の概要 |
研究代表者・分担者による研究会を実施し、認知症者の人権と家族の利益、公益との利益衡量の問題を中心に、医学的見地、法的観点、哲学的視点から議論を重ねた。(第1回:2022年8月28日、老成学研究所(静岡県浜松市内)、第2回:2023年3月11日~12日、安田女子大学(広島市内)) 家族に要介護者のケアが事実上強制されるような状況を生じさせる法律上の責任は、刑法上の責任(保護責任者遺棄罪、刑法218条、等)と民事上の責任(不法行為、民法709条以下、扶養義務、同法877条以下、等)に大別される。そして、刑事責任が問題となる場合は通常は民法上の不法行為の要件も充足する。さらに、民事上の責任は金銭的な責任(賠償責任)が無限定に拡大しうる場合(不法行為責任など)と限定的なものに留まる場合(扶養義務等)に大別することができる。従って、「家族に要介護者のケアが強制されるのはどのような場合か?」という問題の焦点は、「民事上の責任は金銭的な責任(賠償責任)が無限定に拡大しうる場合(不法行為責任など)」に絞ることができる。 以上を踏まえ、現行法の解釈によって認知症者の自由を拡大し、要介護者の家族の負担を軽減できる可能性について検討した。その成果は以下のとおりである: 不法行為責任の成立範囲を拡大することによって認知症者の自由を拡大する方法としては、「衡平責任」の原理の導入等によって責任無能力者自身が不法行為責任を負う場合を設けるという方向性が考えられる。その反面、不法行為責任の成立範囲を限定することによって認知症者の自由を拡大する方法としては、「監督義務者責任」に基づく帰責範囲の限定によって、第三被害者の受忍すべき範囲を広く認めるという方向性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研代表者・分担者らによる議論を継続的に実施した。法学的な視点を基本として、介護者・要介護者の人権(自由を中核とする個人の利益)の制約や個人間の人権の衝突が問題となる状況を類型化するとともに、倫理的および哲学的観点からの分析を行った。研究分担者の吉田輝美が中心となって「親の介護をしたくない人」「親の介護をしたい人」を対象としてインタビューを実施した。 研究活動の成果として以下の原著論文を発表した: タイトル:親を介護したくないと感じている人の介護負担感についての検討 介護する側の子が感じる親子関係に着目して(著者:吉田 輝美, 中塚 晶博, 山本 克司、掲載誌:日本ヒューマンリレーション研究学会誌(2436-0813)3巻 Page31-42(2022.12))
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今後の研究の推進方策 |
本科研研究の研究成果を国内外の学会(International Society for Clinical Bioethics、日本生命倫理学会等)で発表することを予定している。 研究代表者は、丸善出版より刊行予定の「未来社会を哲学する(仮)」全12巻の第4巻「2章 家族介護という地獄と希望」を担当執筆しており、2024年に公刊を予定している。
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