研究課題/領域番号 |
21K02033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
土屋 典子 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (60523131)
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研究分担者 |
松本 葉子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 准教授 (20586408)
長沼 葉月 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (90423821)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 高齢者虐待予防 / 養介護施設従事者 / 組織マネジメント / ロアー・マネジメント / 心理的安全性 / 解決志向アプローチ / ちょこっとカンファレンス / スーパービジョン / 高齢者介護施設 / 研修プログラム開発 / ちょこっとカンファ |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者介護施設における虐待予防のためには、組織責任を果たし、組織内に心理的安全性を担保するための組織マネジメントが不可欠であり、特に現場監督者によるロアー・マネジメントが重要であるとされる。本研究では、高齢者介護施設における現場リーダーのロアー・マネジメントに着目し、組織内に「心理的安全性」を担保するための「対話型コミュニケーション」技法と、職員の仕事の質を高めるための「対話型ケースカンファレンス」技法を構築し、「対話型ロアー・マネジメントモデル」を開発する。さらに研修プログラムを開発し、その効果を測定し「対話型ロアー・マネジメントモデル」の妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
養介護施設従事者等による虐待発生要因としては、「虐待を助長する組織風土」や「職員間の関係の悪さ」、「組織の管理体制の課題」等があげられる。この背景には、介護労働市場の変化により、慢性的な介護労働力の不足や、非正規職員の割合の増加、外国人労働者を含む多様な労働力の雇用により、勤務体制の編成が大きく変化していることがあげられる。こうした労働環境の変化によって、職員は疲弊し、職員間の対話が失われ、人間関係の希薄化が進んでいると考えられる。このような多様な背景を持つ職員によって構成される職場において、有機的な連携を生み出し、質の高いケアを提供するための土壌づくりを促進するためには、組織内に対話を促し、クライエントへの対応とタスクワークを進めるための新たなマネジメントの仕組みを構築する必要性がある。 ところで、組織マネジメントには上層部のトップ・マネジメント、中間管理職のミドルマネジメント、現場監督者によるロアー・マネジメントの3層が存在する。職員の仕事の質を高め、組織の心理的安全性を高めるためには、現場監督者のロアー・マネジメントが重要とされている。本研究では、介護現場における現場リーダーの担うロアー・マネジメントに着目し「対話型ケースカンファレンス」の方法と、「対話を促進するコミュニケーション技法」を開発することを目的とし、2022年度は次の2点について研究を進めた。 1 「対話型ケースカンファレンス」技法の開発 解決志向アプローチを援用した養介護施設における虐待予防を促進するためのカンファレンス技法(「ちょこっとカンファ」)を開発し、養介護施設従事者に対し計5回の研修を実施、アンケート結果を分析しプログラムを評価した。 2 「対話を促進するためのコミュニケーション技法」の検討 職場内で対話を促進するためのコミュニケーション技法を検討する上で、「スーパービジョン」機能を取り上げ検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は研究実施計画に沿って次の2点を中心に研究を推進した。その結果、本研究は概ね順調に進展していると考える。 1 「対話型ケースカンファレンス」技法の開発と評価 2022年度の研究目的の一つに「対話型ケースカンファレンス」技法の開発があげられた。研究方法としては、芝野(芝野2002)の提唱したM-D&Dの手続きを採用した。2021年度においては、フェーズ1「問題の把握と分析」、フェーズ2「たたき台のデザイン」を進め、解決志向アプローチを援用した養介護施設における虐待予防を促進するためのカンファレンス技法「ちょこっとカンファ」の方法と研修プログラムを開発した。2022年度は、フェーズ3「施行と改良」段階に研究をすすめ、2都道府県、1自治体、2社会福祉施設の養介護施設従事者に対して、延べ5回研修を実施し、開発したプログラムを施行した。さらに研修受講者へ研修前後アンケート調査を実施し、その結果を分析しプログラムの改良を重ねた。 2 「対話を促進するためのコミュニケーション技法」の検討 対話を促進するためのコミュニケーション技法についても、M-D&Dに従って研究を進めた。2022年度はフェーズ1「問題の把握と分析」、フェーズ2「たたき台のデザイン」として「スーパービジョン」を取り上げ、スーパービジョンの基本構造、機能、体制、種類、課題について分析した。その結果、職場内でスーパービジョンを進める上では、スーパーバイザーとスーパーバイジー関係が重要であり、円滑な関係形成を進めるうえで、解決志向アプローチを援用した「コンプリメント」という介入技法や問い詰め型ではない「理解的問いかけの技法」、また、共感的理解を進めるうえでの「スーパーバイジーの世界を知る方法」、さらに、「言いにくいことを伝えるための技法」などの対話を促進するためのコミュニケーション技法が有効であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては以下のように計画している 1 対話型ケースカンファレンスの普及と誂え 2023年度においては、2022年度実施したフェーズ3「施行と改良」の段階をさらに進展させ、フェーズ4「普及と誂え」の段階に研究を進める。具体的には、1カ所の都道府県、2カ所の社会福祉施設での研修実施が予定されているため、研修を施行し、研修前後アンケート調査を行いさらに分析を重ねる中でプログラムの改良を行っていきたい。また、併せて本プログラムを普及するための方法を検討していきたい。 2 対話を促進するためのコミュニケーション技法の開発 2023年度においては、2022年度のフェーズ2「たたき台のデザイン」をさらに精査する。特にロアー・マネジメントを担う「介護主任」「フロアリーダー」と呼ばれる職員は、上司であるトップ・マネジャー、ミドル・マネジャー、部下である一般の介護職員、等との間で質の異なる重層的なコミュニケーションが期待されていると推察される。このような立場で、職場内で対話を促進するために有益とされるコミュニケーション技法とはどのようなものか、解決志向アプローチやオープンダイアローグなど、多くのアプローチを概観しながら、対話を促進するためのコミュニケーション技法について検討を進める。また、研究代表者は2023年度スウェーデンウプサラ大学ソーシャルワーク研究所に客員研究員として受け入れ予定である。ウプサラ大学では、CLARA Iversen氏のもとで学ぶ機会が与えられており、Iversen氏の研究フィールドであるエルダリー・ラインを訪問し、対話を促進するためのコミュニケーション技法のひとつである「スモールトーク」の活用、「重要でない他者の重要性」概念について学ぶ予定である。こうした知見を取り入れながら、フェーズ2「たたき台のデザイン」を構築し、研修プログラムの開発、実施につなげたい。
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