研究課題/領域番号 |
21K02043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
柴田 健 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (50361001)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 人生の樹(木) / 児童養護施設 / ナラティヴ・アプローチ / 解決志向アプローチ / ライフストーリーワーク / ナラティヴ / 人生の樹 |
研究開始時の研究の概要 |
児童養護施設で行われているライフストーリーワークに代わる,またはそれを補完するライフレビュー支援の方法を,ナラティヴ・アプローチの一つである「人生の樹」の実践を通して探索的に検討することを目的とする。 そのために,ライフレビュー実践に関する実施状況やライフレビューに関する考えなどを児童養護施設や児童相談所といった関係機関から聴取し,それを踏まえた上で専門家による研修やスーパービジョンを受けながら,児童養護施設にふさわしい人生の樹アプローチを探索的に作り上げていく。そして最終的に,施設版「人生の樹」実践マニュアルをまとめることとする。
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研究実績の概要 |
児童養護施設(以下,施設)入所中の児童の多くは度重なる分離喪失体験や虐待等の不適切な養育により,記憶の断片化が起きたり,入所に関しての不十分な説明などのために 家族や出自に対して十分理解していなかったりするものが多い。本研究の目的は,こうした児童の生い立ちや自身の人生の理解のために,ナラティヴ・セラピー の応用形態である「人生の樹」を活用することができないか検討することである。 2022年度は当初,フィールドとなる施設での体制整備のための研修及びグループスーパービジョン(以下,GSV)の実施と,専門家によるナラティヴ・アプローチと「人生の樹」に関する研修会の開催を予定した。 施設での研修およびGSVは,各10回計20回実施された。研修では,解決志向アプローチ(以下SFA)の理論をベースとした児童支援プログラムであるサインズ・オブ・セイフティ・アプローチの方法論の理解と児童理解を目標とした。また,GSVでは,問題行動の理解と対応を主なテーマとした。特に,支援者は重篤な問題行動に対しては児童の出自や虐待の影響を想定するのに対し,軽微な問題行動に対しては児童の性格や資質等に原因を帰属させるという昨年度の調査結果を踏まえ,児童への肯定的理解と対応に主眼を置いた。GSVに並行して,SFAによる学級経営プログラムであるWOWW(うまくいっているところに働きかける)アプローチを,研究代表者の授業受講学生が4日間にわたり実践した。これらの試みは,施設における問題行動の低減に寄与したただけでなく,処遇職員に対してこれまでとは異なった児童理解を提供したことが,施設側の調査から明らかになった。 しかし,COVID‐19の諸々の影響により専門家による研修会とGSVは開催できなかった。専門家の招聘により,支援者に芽生えた新しい児童観と「人生の樹」による児童支援をどう結びつけるのかが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染状況下で,対象の児童養護施設で時々クラスターが発生し,その度にフィールドワークが中断してしまった。また大学の方針により,県外からの関係者の受け入れが大幅に制限され,招聘予定の専門家との日程調整が当初予定よりも大幅に遅れ,結果として年度内の招聘が不可能となってしまった。また,昨年に引き続き研究代表者のエフォートを大学の教育領域に咲かなければならない状況が続いた。これらの諸条件が重なる中で,当初の研究遂行に遅滞が生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年も実施できなかった専門家の招聘を最優先事項とする。研究対象としている児童養護施設では,研修とグループスーパービジョンを2年間継続しており,処遇職員の児童に対する対する考えかたも問題行動の修正から,可能性の拡大へと変化していることがうかがわれる。サインズ・オブ・セイフティ・アプローチやWOWWアプローチが比較的スムースに導入されているところはその証左といえるだろう。この点では「人生の樹」のプログラムを導入する下地は十分に出来てるものと考えられる。しかし,同じ年度内に導入と検証をするのは,現在の研究代表者のエフォートを考えると相当困難な面もある。その際には,研究の延長も考えていきたい。
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