研究課題/領域番号 |
21K02062
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08020:社会福祉学関連
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
遠藤 洋二 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 教授 (90588716)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 児童養護施設 / 児童間性暴力 / リスク要因 / アセスメントツール / アセスメント / 実践モデル |
研究開始時の研究の概要 |
児童養護施設・児童自立支援施設・障害児支援施設等、における児童間性暴力は、児童の健全な成長発達を阻害し、放置すれば施設の存在意義をも脅かしかねない事態が生じる。児童福祉施設は、虐待等の被害児童が多数入所しており、その施設で性暴力を受けることはトラウマの再現に他ならない。このような児童間性暴力の予防・早期発見・対応(介入)に対して効果的な方策を講じることは喫緊課題である。本研究は、効果的な方策を策定するために必要不可欠な児童間性暴力の態様を客観的に評価(アセスメント)するツールを開発することが目的であり、ひいては、入所児童の安心安全な暮らしに貢献できるものと考えている。
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研究実績の概要 |
研究者は、児童養護施設等入所型児童福祉施設(以下、「施設」。)における児童同士の性暴力(以下、「児童間性暴力」。)に関する実践モデルを策定する研究を継続している。児童養護施設・児童自立支援施設・障害児支援施設等における児童間性暴力は、児童の健全な成長発達を阻害し、放置すれば施設の存在意義をも脅かしかねない事態が生じる。児童福祉施設は、虐待等の被害児童が多数入所しており、その施設で性暴力を受けることはトラウマの再現に他ならない。このような児童間性暴力の予防・早期発見・対応(効果的な介入)に対して適切な方策を講じることは喫緊課題である。 本研究は、これまでの研究や実践活動の成果を踏まえ、児童間性暴力発生の要因・メカニズムを「児童の特性」と「施設システム」の双方から客観的・科学的に検証し、それを基軸に臨床場面で必要不可欠なアセスメントツールを開発しようとするものである。これまで施設において児童間性暴力が発生した場合、それは加害児の特性の問題として片づけられ、十分なアセスメントはなされないまま「問題行動(あるいは犯罪行為)」であるとの認識のもと、児童を他の施設に措置変更するなど、表面的な解決に留まっていた。児童間性暴力が発生するメカニズムに焦点を当てることなく、十分なアセスメントをしないまま疑似的な「解決」をすることで、加害児・被害児への適切な支援を行うこともなされず、さらには、児童間性暴力の連鎖を生み出してきた。本研究で明示されるツールは、児童間性暴力の態様を客観的に評価(アセスメント)するためのものであり、ひいては、入所児童の安心安全な暮らしに貢献できるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
児童間性暴力のアセスメントツールを開発するにあたっては、過去に調査を行った300を超える事例を、児童間性暴力に関する専門知識と対応した経験を有する専門家の協力を得て、一つひとつの事例の構造(児童間性暴力に至ったプロセス、背景、暴力の構造等)を複数名で検証し、カテゴリー化するための作業を行った。結果的に各事例に、「曖昧な境界線」、「誤学習」、「コミュニケーションツールとしての性」、「再生的被害化傾向」など、29のキーワードがそれぞれ1以上割り当てられた。それぞれに事例に当てはめられたキーワードの組み合わせを分析しつつ、児童間性暴力をカテゴライズすることで、成人の性犯罪やわいせつ事案との差別化を図り、児童間性暴力を適切にアセスメントするためのツールとして活用することを考えている。さらには、当該データに関して、科学的な根拠を見出すため、現在は当該データをクラスター分析し、児童間性暴力全体の構造を一定程度明らかにするよう試みている。 また、本研究に全面的に協力している神戸児童間性暴力研究会のメンバーによる過去の事例に関するケースカンファレンス、児童自立支援施設、児童養護施設職員と研究者との事例分析、過去に児童間性暴力を対応した経験を有する施設職員へのインタビューから、それぞれが事実認定を行う際に、「加害児・被害児との面接や背景調査において、どのような点に着目したのか」、「またその事実を確認することで、何を明らかにしようとしたのか」などを集約し、エキスパートの視点を構造化する作業も行っている。 新型コロナ感染症の影響もあり、施設職員へのインタビュー調査が十分にできていない状況であるが、今後は各データの分析作業と並行し、一定の結果が出た段階でその検証も含めて、施設におけるインタビューを実施したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で明らかになった事実を基盤として、児童間性暴力の背景となる個人および環境(施設)の特性を可視化し、児童間性暴力の支援に必要なアセスメントの構造を可視化する。児童間性暴力の態様はケースにより様々であるが、本研究によって性暴力の構造を一定分類することができた(性暴力の中核的構造)。中核的構造には類似性は認められ、それに加害児・被害児の生育歴・特性、生活する上での環境要因、人間関係等の諸要素が加わり、加害-被害を含む性暴力といった現象が生じるものであることが分かってきた。 本研究は、その中核的構造を援助者が把握し、援助に結びつけるためのツールを開発することが目的であり、そのプロセスとしては、事実認定(アセスメントに必要な材料の収集)→アセスメント(収集された事実を組み合わせ性暴力に至るメカニズムを明らかにする)→課題の抽出(アセスメントで得られた諸課題の中から、援助の対象となる課題を焦点化する)といった段階を踏むことになる。 本研究の最終年度である本年度においては、その各プロセスにおいて援助者がなすべきことを可視化し、アセスメントツールとして明示しようと考えている。 可視化されたアセスメントツールについては、児童間性暴力に関して幅広く知識を持つ実務者等へ意見聴取を行い、アセスメントの構造を改訂する。 改訂されたアセスメントの構造をチャート・シートなどに落とし込むと同時に、アセスメントのプロセス、各プロセスにおける焦点をあてるべき事項、アセスメントに必要な情報を収集するための手法などを明示する。(仮称:児童間性暴力アセスメントマニュアル)「児童間性暴力アセスメントマニュアル」を用いたワークショップを施設職員対象に行い(全国5か所程度)、マニュアルの評価・効果を測定する。測定については、ワークショップ前後のアンケート調査、ワークショップ後のヒアリングを想定している。
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