研究課題/領域番号 |
21K02071
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
若子 倫菜 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (30505748)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ファスナ / しゅう動 / 引張荷重 / 感覚・感性 / 因子 / 組織 / 定量 / 設計 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の生活に浸透した繊維製品であるスライドファスナにおいて感覚的・感性的性能の向上は重要な設計指針であるが,その定量的な評価方法や設計方法の未解明が課題であった.そこで,触覚に関するしゅう動感を対象として,感覚的・感性的性能に優れたスライドファスナの設計,製造技術を確立することを本研究の目的とした.しゅう動感の判断に関与する評価因子と,その評価因子に影響をおよぼすスライダ引張荷重特性とを明らかにし,さらに,スライダ引張荷重特性とスライドファスナ設計要素とを対応付けることによって本研究目的の達成を目指すものである.
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研究実績の概要 |
本研究は,触覚的しゅう動感に優れたファスナを設計,製造できる技術を確立することを目的としており,3つの課題と5つの検討項目を計画している.課題①は「触覚的しゅう動感の判断に関与している評価因子を明らかにすること」であり,触覚的しゅう動感の評価因子の分析(検討項目①-1)と,スライダのしゅう動速度が触覚的しゅう動感におよぼす影響の把握(検討項目①-2)を検討項目とした.課題②は「触覚的しゅう動感の評価因子に影響をおよぼすスライダ引張荷重の特徴量を明らかにすること」であり,官能評価と同一しゅう動速度でのスライダ引張荷重を測定できる装置の構築(検討項目②-1)と,触覚的しゅう動感の評価因子と対応関係をもつスライダ引張荷重の特徴量の調査(検討項目②-2)とした.課題③は「テープ部設計要素をパラメータにもつスライダ引張荷重(相対値)計算モデルを構築すること」(検討項目③)とした. 令和4年度は,追加課題であるスライダ本体と引手との角度のスライダ引張荷重および官能評価への影響についての調査と,検討項目②-1および②-2について検討した.スライダ本体と引手との角度が垂直と水平とで,スライダ引張荷重の平均値では,サンプルの順序はほぼ一致していた.一方で,官能評価では,引手を水平に維持してのしゅう動を評価者間で統一することが困難であることがわかった.試作したスライダ引張荷重測定装置は,「引張荷重測定部」と「試料把持部」とから構成されるが,両部の検出・制御機構の同期が不十分であることがわかった.そこで,荷重や変位をより正確に測定できるように改良した.本測定装置を用いて実験試料のスライダ引張荷重を測定し,3種類の特性値を算出した.触覚的しゅう動感の評価因子“軽快”を目的変数とする回帰分析から,スライダ引張荷重エネルギと平均スライダ引張荷重が定量的な評価指標として有効であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において計画している3つの課題と5つの検討項目において,令和3~4年度には課題①(検討項目①-1,①-2)および課題②(検討項目②-1,②-1)についての結果を得ることを目標としていた. 令和3年度では,触覚的しゅう動感の判断に関与している評価因子が“軽快”であることを明らかにし,また,しゅう動速度は「滑らか」と「高級な」に影響を及ぼすが,評価因子“軽快”にはほとんど影響を及ぼさないことを確認した(課題①).また,引張荷重測定部と試料把持部とから構成されるスライダ引張荷重測定装置を試作し,官能評価の際と類似したしゅう動速度でのスライダ引張荷重を測定できるようにした(検討項目②-1). 令和4年度では,追加課題であるスライダ本体と引手との角度がスライダ引張荷重および官能評価に及ぼす影響について調査し,角度が垂直と水平との比較において,スライダ引張荷重の平均値に関するサンプルの順序はほぼ一致すること,官能評価では引手を水平に維持してのしゅう動を評価者間で統一することが困難であることがわかった.すなわち,スライダ引張荷重の測定と官能評価とで角度が異なっていても,傾向を把握できることがわかった.加えて,試作したスライダ引張荷重測定装置には検出・制御機構の同期に課題があることが発覚したが,構造やプログラムの修正によってより正確に測定できるようにした(検討項目②-1).また,本測定装置を用いて測定したスライダ引張荷重から3種類の特性値を算出し,評価因子“軽快”を目的変数とする回帰分析をした.その結果として,評価指標として有効な特徴量が得られた(検討項目②-2). 追加課題ならびにスライダ引張荷重測定装置における問題点の特定に想定以上に時間がかかったため暫定的に処置している不十分な点もあるが,追加課題および課題②の結果を得られたことから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度での実施内容は2点である.1点目は,スライダ引張荷重測定装置の安定化と測定データ数の増加である.令和4年度の暫定的な処置の修正であり,スライダ引張荷重測定装置における荷重検出部の位置決めを治具などにより安定化させ,繰返し精度を確認する.その上で,スライダ引張荷重測定データ数を追加し,特性値の確からしさを補強する.なお,官能評価データ数の増加についても継続する. 2点目は,課題③の検討項目としているテープ部設計要素をパラメータにもつスライダ引張荷重(相対値)計算モデルの構築であり,3つの段階を経て検討する.(1)しゅう動時のテープの変形過程を計測して変位量を測定し,テープの変形様態の把握とその簡略化について検討する.しゅう動時のテープの変形過程を計測するためには,3次元での形状の時間変化を計測できる必要がある.本研究課題では,2台のカメラを用いたステレオ法による計測方法を利用する.3次元形状測定装置を構築し,3次元形状データの解析からしゅう動に伴うテープの変位量を測定する.(2)テープの変形しやすさ(あるいは,変形しにくさ,剛性)に関係する諸元を測定する.測定項目は,織組織,糸密度,交錯度(交錯度の値が高いほど経糸と緯糸とがズレにくい組織であることを表す),初期厚さ,交錯領域(経糸と緯糸とが厚さ方向に重なっている領域)の面積等を予定している.交錯領域の特性値に関しては,テープ画像の画像解析により測定する.(3)多変量解析法等を利用して,スライダ引張荷重とテープの変形しやすさ(諸元,設計要素)とを対応付けるモデル式を求める.
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