研究課題/領域番号 |
21K02079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
横山 嘉子 聖徳大学, 人間栄養学部, 准教授 (40202395)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | パルミチン酸 / LPS / アポトーシス / 歯周病 / 歯周病菌LPS / リポポリサッカライド |
研究開始時の研究の概要 |
歯周病菌の膜糖脂質であるリポ多糖(LPS)は全身にさまざまな悪影響を及ぼし、2型糖尿病、心血管疾患などの循環器疾患、肺炎などを引き起こす。さらに近年、高脂肪食を摂取するとこれらの疾患が増悪すること、また細胞を用いた実験でも、パルミチン酸とLPSが相乗的に炎症性サイトカインの産生を亢進することが報告されている。このことは歯周病に罹患した場合、脂質の摂取状況次第で負のスパイラルに陥り、場合によっては生命の危険をももたらすような疾患に重篤化する可能性がある。本研究では、歯周病に伴う疾患の栄養学観点からの防御法、予防法の礎を構築することを目的として、パルミチン酸とLPSとの相乗作用機序を解析する。
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研究実績の概要 |
血中のパルミチン酸がLPSの作用を増強するとの報告がなされている。本研究では、パルミチン酸などの脂肪酸と歯周病菌LPSとの相乗作用の機構について、受容体を中心に解析することを目的としている。パルミチン酸の炎症促進作用は、トール様受容体4(TLR4)を介した信号伝達経路での炎症抑制物質の作用を阻害する可能性がある。令和4年度の研究では、このような作用をもつことが報告されているタモキシフェンの抗炎症作用に対するパルミチン酸の影響を検証し、タモキシフェン誘導性アポトーシスに対してパルミチン酸が阻害することを見出した。これに加えて、令和5年度の研究では、抗炎症性物質であるアディポネクチンに対するパルミチン酸の作用を検討した。RAW294.7細胞において、大腸菌由来LPSはTLR4を介して、炎症性サイトカインMCP-1mRNA産生を誘導するが、アディポネクチンはこのMCP-1の発現を抑制した。しかし、パルミチン酸存在下ではアディポネクチンの抑制効果が減少することがわかった。このパルミチン酸の機構についてはさらに解析を進める必要がある。さらに、TLR4阻害剤、TAK242により、LPSとパルミチン酸によるMCP-1mRNA産生の相乗効果が阻害された。このことから、LPSとパルミチン酸の相乗効果にはTLR4が関与していることが示唆される。LPSはTLR4を介してMyD88依存的、非依存的にMAPK経路あるいはNFκB経路を経て炎症性サイトカイン産生を上昇させる。そこで、MAPK阻害剤を用いてLPSおよびパルミチン酸投与で観察されたMCP-1mRNA産生上昇に関与する情報伝達経路を検討した結果、p38MCPK, JNK, ERK経路の関与が示唆された。これらについて歯周病由来LPSの炎症亢進効果とそれに対するパルミチン酸の作用の解析も進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたDNAマイクロアレイ解析ではなく、PCRを中心とした手段で確認実験を行う必要があると考え、以下の実験を遂行した。①RAW264.7細胞を用いて、歯周病菌LPS+パルミチン酸あるいはそれぞれを単独で投与した際に産生されるマーカー炎症性遺伝子の発現についてのリアルタイムPCRでの確認。②LPSの細胞受容体TLR4とMCP-1の発現についてのリアルタイムPCR解析。③LPS+パルミチン酸を投与した際のアディポネクチン作用についてのリアルタイムPCR解析。細胞を良好な状態に保つことが実験を行うためには必須である。血清のロットが変わったため、安定した実験結果を得ることが一時難しい状態であった。そのため、現在は安定した結果が得られているが、歯周病菌由来LPSに関する解析にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、交付申請書に記した項目の中で、DNAマイクロアレイ実験についてはマイクロアレイ受託会社の事情もあり、十分な量の委託が困難であった。そのため、PCRを含めた他の手段で確認実験を行う必要があると考え、前項でも記したような実験を実施した。今年度は、LPS刺激による炎症性サイトカインの遺伝子発現抑制に対する抗炎症性サイトカイン、アディポネクチンの作用がどのような機構でパルミチン酸によって抑制されるのかについて、TLR4、TLR2を介した経路の関与についての解析を行う。また、アディポネクチン受容体の発現量の変動を調べる。さらに、MCP-1mRNA産生におけるLPSおよびパルミチン酸の相乗効果に、p38MCPK, JNK, ERK経路の関与が示唆されたが、この下流で相乗効果にTLR2、TLR4発現の量的変動が関与するかについてリアルタイムPCRで解析を行う。歯周病菌由来LPSについても調べ、上記で得られた指標遺伝子の変動をもとに、抑制作用及び作用点に関しての解析を行う。これにより、相乗作用に関わる経路を明らかにし、その抑制法を構築する予定である。
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