研究課題/領域番号 |
21K02088
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
天木 桂子 岩手大学, 教育学部, 教授 (80193019)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ウルトラファインバブル水 / 洗浄液 / 流動挙動 / 界面活性剤水溶液 / 抗力 / 抵抗減少効果 |
研究開始時の研究の概要 |
洗浄における汚れの除去機構を,物理的視点の一つである洗浄液の持つ流体力から明らかにする研究である.ここでは,環境負荷低減を視野に入れた界面活性剤水溶液に代わる新たな洗浄液候補として,(ウルトラ)ファインバブル水を対象とした.すなわち,ファインバブル水の流動時の特徴を,布モデルであるメッシュ間隙を通過する際に生じる抗力測定から明らかにし,結果を通常の水や界面活性剤水溶液と比較し,その違いから洗浄における優位性を探る. 併せて,ファインバブル水の持つ様々な物性測定を行って,流動特性で得られた結果の原因につなげるとともに,最終的には,ファインバブル水の洗浄への利用可能性を流体工学の面から解明する.
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研究実績の概要 |
洗浄に関わる物理作用の一つである洗浄液の持つ流体力の解明を目的として実験を行った.対象流体はウルトラファインバブル水で,単純化した矩形流路を作成し,中央フランジ部に挟んだ布モデルであるメッシュ間隙を通過する際に生じるエネルギー損失をメッシュ前後の圧力差から抗力として算出し,各種条件下で比較することで洗浄にウルトラファインバブル水を活用する可能性を探った. 初年度に,6種のポリエステルメッシュを対象に,各種界面活性剤をウルトラファインバブル水に溶解させた水溶液を対象とした流動実験を行ったのに引き続き,2年目の昨年度は,織り密度の異なる3種の金属製ステンレスメッシュを対象に同様の実験を行い,メッシュ素材の違いが流動挙動に与える影響を探った.併せて,マイクロバブル水による流動実験も行い,ウルトラファインバブル水と比較した. 用いた界面活性剤は,アニオン系の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)およびアルキル硫酸ナトリウム(SDS),カチオン系界面活性剤の塩化ベンザルコニウム(BC),ノニオン系のポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル(AE(10)) の4種で,すべて0.01mol/Lに調製した. その結果,①界面活性剤不添加のバブル水のみではイオン交換水に比べて抗力が低く,さらにメッシュの種類に関係なくマイクロバブル水はウルトラファインバブル水よりさらに低い抗力を示した.②メッシュの構造として抗力に影響を与える要因は,織密度ではなく厚さやオープニングエリアであり,これはすべてのメッシュに共通していた.③界面活性剤添加バブル水では,マイクロバブル水の抗力に活性剤間の差は見られず,イオン交換水に対する抵抗減少効果は高Re範囲でのみ認められた.一方ウルトラファインバブル水では活性剤間の差がみられ,抵抗減少の相乗効果も全Re範囲で現れた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は,ウルトラファインバブル水に各種界面活性剤を添加した界面活性剤ウルトラファインバブル水溶液の流動挙動を,単独のウルトラファインバブル水および界面活性剤水溶液の流動挙動と比較し,ある程度の成果を得ることができた. 2年目はこれに引き続き,布モデルとなるメッシュ素材をこれまでのポリエステル(PET)から金属製ステンレスメッシュを用いて同様の実験を行った.その結果,ポリエステルメッシュで行った実験条件のすべてをステンレスメッシュでも行うことができ,両メッシュのデータをすべてそろったため,おおむね当初の予定通りの進捗状況であると判断した. 一方,今回実験を続ける過程で,ウルトラファインバブル水調製後の経過時間によって同一条件下であっても結果の数値に違いが出る可能性を示唆する兆候がみられた.数年前までは,実験時にヘッドタンク内でウルトラファインバブル水製造装置を稼働させながら(常時バブルが供給される条件下)行っていたが,今回は常時稼働ではなく調製後ただちにヘッドタンクに汲み上げて行ったため,実際には調製後30分程度時間経過したウルトラファインバブル水を用いた結果となっている.そのためか本実験では従来に比べて全体的に抗力が高くなり,通常のイオン交換水の値に近づく結果となり,両者間の差が小さくなる傾向が疑われた.このことからウルトラファインバブル水は調製後の短時間に急激に性質が変化することが疑われ,流動挙動にも影響を与えた可能性がある.しかし,この点については今後のさらなる検証が必要で,現時点では明言できないが,抗力以外の他の物性測定も併せながら調製後の時間経過の与える影響の有無について将来的にもはっきりさせる必要が感じられた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2023年度は,2022年度に購入した加圧溶解方式のウルトラファインバブル発生装置を用いて試料流体を調製し,引き続き流動挙動に関する実験を行う.2022年度までは,高速旋回方式の発生装置で調製したウルトラファインバブル水を対象に実験を行ってきた.本年度は発生方式の違いによるウルトラファインバブル水の流動挙動を比較しそれぞれの特徴を明らかにする予定である. また,第2の実験として,これまで単独で実験試料流体としてきたマイクロバブル水とウルトラファインバブル水を混合させ,サイズの異なるバブルを含包した試料流体を用いた実験を行う.すなわち,マイクロバブルとウルトラファインバブル単独の流れと両者を混合した試料流体の流れ挙動の比較,さらには2種類のバブル水の混合比率を変えた様々な試料流体を調製して結果の比較を行うなど,バブルのサイズが流動挙動に与える影響をより詳細に探る予定である.これにより,実験者がこれまで求めてきたより流れやすい(抵抗の少ない)流体の条件に影響を与えるバブルの寄与をまとめる予定である. さらに,最終年度であることから,3年間の実験データを総合的かつ詳細に分析し,関連学会で成果を発表したいと考えている.
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