研究課題/領域番号 |
21K02090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
安永 秀計 京都工芸繊維大学, 繊維学系, 准教授 (80241298)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 金属アレルギー / ハプテン金属イオン / 繊維加工 / 金属イオン捕捉機能 / 金属イオン検知機能 / 綿 / ラッカイン酸 / ハプテン / バイオベースマテリアル / バイオカララント / 変呈色色素 / ハプテン金属捕捉機能 / ハプテン金属検知機能 / ハプテン捕捉・検知 / 繊維機能加工 |
研究開始時の研究の概要 |
アレルギー反応を引き起こす金属・アミン化合物等のハプテンを捕捉して身体に侵入するのを防御するとともに、それと反応して呈色によって検知する機能を繊維に付与する加工法を研究する。ハプテン物質の捕捉・検知機能を示すバイオベースマテリアルを繊維材料に固定し、その加工条件とハプテン捕捉能力・呈色性の関係を明らかにし、捕捉能力の向上を目指すとともに、その発色機構を解明する。 さらに、生体が生み出している物質が示す、外的な有害物質に対する作用に関して、本研究で得られる知見を基に、生物の防御における機能物質の働きとその機構を考察する。
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研究実績の概要 |
本年度も、継続して金属アレルギー症状を引き起こすハプテン金属イオンを捕捉して身体に侵入するのを防御するとともに、それと反応して呈色によって検知する機能を繊維に付与する加工法の開発とその作用機構の解明のための研究を行なった。前年度は、ニッケル・コバルトを対象として金属イオン捕捉・検知機能を示す材料物質としてアリザリンを用い、多糖の化学橋かけによる綿布帛への固定化を試み、その変呈色による金属イオンの検知と錯体形成に基づくその捕捉は達成できたが、金属イオン水溶液浸漬中にアリザリンが布帛から幾分か脱離してしまった。そこで、綿繊維への化学結合形成に基づく金属イオン捕捉・検知機能物質の固定化を試みた。ラックカイガラムシが分泌する、アリザリンと同じくアントラキノン構造をもつラッカイン酸(LA)のハプテン金属イオンとの錯体形成と変呈色機能を確認するとともに、カルボキシル基を有するので、LAをセルロースのヒドロキシル基とエステル結合させて綿布帛に固定させた。その結果、金属イオン水溶液浸漬中でも処理加工布帛からLAは脱離しなかった。そして、Ni2+を作用させるとラッカイン酸処理加工布帛(CFLA)は変呈色し、その検知機能を示した。Ni2+濃度が1.50 × 10-4 mol L-1と低い場合でもCFLAは鋭敏に色を変化させ、肉眼による呈色性の確認も可能であった。また、Ni2+の捕捉能力も、吸着量の測定可能な上限において綿布帛1 g当たり約1 × 10-5 molを示した。これは実際に使われている金属製品から実験上設定された条件下で溶出するNi2+量の1000倍以上に当たり、CFLAは十分なNi2+捕捉能を示すことがわかった。そして、LAとNi2+による錯体形成過程を調べた。さらに、CFLAのCo2+・Cr3+・Cu2+・Zn2+などのハプテン金属イオンの検知機能や他の特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ハプテン金属イオン捕捉・検知機能物質の処理加工布帛からの脱離を防止した新たな綿繊維の処理加工方法を創出し、その布帛(CFLA)がNi2+・Co2+・Cr3+・Cu2+・Zn2+などのハプテン金属イオンの捕捉機能をもつとともに布帛の視認性の高い色変化による検知機能を示すことを明らかにした。そして、LAが多数のNi2+と相互作用することが実験で示され、それがCFLAの高いNi2+捕捉能に寄与していることを考察し、本研究での作用機構の解明の手掛かりとした。以上のように、本研究は当初の計画計画通りに進んでいるといえるから。
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今後の研究の推進方策 |
金属アレルギー症状抑制のためのハプテン金属イオン捕捉・検知能を示す繊維材料として、前年度よりもさらに性能の高いものを得る加工法を創出することができたが、その処理過程は非水系で有機溶媒を用いている。当該加工繊維材料は実用的応用において身体に近いところで使用されることから、その安全性が優先されなければならない。また、処理後の廃液の排出や作業者の安全を考えると、さらに安全性・環境適合性・持続性などを高めた処理加工法を生み出す必要がある。したがって、今後は、処理加工繊維材料の性能は維持しつつ、そのような条件を備えた方法をさらに見出すために研究を行なう。 新たな方法は水系での処理となるようにその加工方法を試み、処理条件と得られる布帛の特性の関係を調べる。
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