研究課題/領域番号 |
21K02099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
大嶋 正人 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20223810)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 色素化合物 / 紫外可視吸光スペクトル / カルサミン / DFT計算 / 汎関数 / B3LYP / ωB97XD / 核磁気共鳴スペクトル / DFT計算 / ベニバナ色素 / 分子軌道計算 / 構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
ベニバナの色素化合物について、芸術学の表現にかかわる領域から光学、ナノ構造構築、有機合成化学、理論計算化学にまたがる学際的な探求をつぎの5つの観点から進める。 1.伝統的な工程、手法を後世に伝える記録として残す、2.光学的計測、電子顕微鏡等の現代の機器による色素膜の構造解析で赤色から緑色金属光沢が発現するまでの原理を明らかにする、3.色素化合物を単離して構造を明らかにする、4.理論計算化学を2および3の実験と相補的に組み合わせ、研究の展開を加速する、5.金属光沢が発現する原理を解明し、さまざまな色合いの金属光沢を有する有機色素化合物を設計する方法論を提案する。
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研究実績の概要 |
令和4年度までの検討で、カルサミンは大きな平面構造が2つ交差しているような外観をしており、この交差の角度やねじれなどの程度を詳細に検討した。2つの平面構造の相対配置を、局所安定構造が予想される角度ごとに、十数種類の構造を作って詳細に検討した。また、天然物の単離、構造決定を行った先行研究では立体化学が明記されていない4置換炭素の部分についても異性体を組み立て、それらについても構造最適化計算を行い、その検討を年度終了後の現在でも続けているが、現時点では明らかに安定構造とみなされるものが発見されておらず、難航している。実測の核磁気共鳴スペクトル(NMR)での分析では立体構造は1種類しか観察されておらず、この測定の感度から考えると分子の95%以上は一つの立体構造だとみなされる。そのためには十数kJ/mol程度は他の構造よりも熱的に安定である要因があると予想されるのだが、その解析は未達成である。 上記の構造最適化の計算では、密度汎関数法で用いる汎関数はこれまでに多くの実績のあるB3LYPを用いていたが、最近の研究で用いられる汎関数としてωB97XDを併用したところ、紫外可視吸光スペクトル(UV-VIS)のシミュレーションでは、これらの汎関数によって結果が大きく異なることがわかった。汎関数としてB3LYPを使用したカルサミンのUV-VISのシミュレーションでは、カルサミンを誘導体のカリウム塩にすると分子のアニオン部に相当する構造の電子密度を高くなって紅色の発色が確認できていたが、汎関数をωB97XDに変更すると同様な紅色の発色が確認できない構造もあり、さらなる検討が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計算シミュレーションによる立体構造の特定が遅れており、さらに紫外可視吸光スペクトルのシミュレーションの結果が密度汎関数法による計算で用いる汎関数の種類によって大きく異なる可能性が出てきたなど、2022年度の結果に加えて不確定な要素が増えてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
カルサミンの構造の可能性のある立体構造のうち、当初の最も有力と考えられたものが充分なものではなかった。2023年度は引き続き、計算量を増やして実測の核磁気共鳴スペクトルに最も合致する立体構造の探索を進めたが、まだ十分ではない。立体構造の解明は本研究申請時に目標とした金属様光沢を発現する機構の解明などにも影響を与えるため、候補となる構造を増やして引き続き検討する。また、汎関数によって紫外可視吸光スペクトルの結果が異なる点についても、原因の究明のため、類縁の化合物についても検討を行い、シミュレーションの精度を上げていく。
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