研究課題/領域番号 |
21K02129
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
藤平 眞紀子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (90346304)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 住まいの管理の変遷 / 居住者の管理意識 / 婦人雑誌 / 持続可能な管理 / 住まいの管理の意義 / 住宅の持続可能性 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで住まいの管理に関する情報や方法はどのように伝えられ、また、管理する人々の意識はどのように形成され実践されてきたのだろうか。生活や住宅の変遷の中に埋もれている住まいの管理に着目し、居住者の意識と必要な情報、方法や道具、住宅の材料や間取りなどとの関連について、文献資料を中心に検討する。そして、これからの持続可能な住まいの管理について考察し、社会的なシステムを提案する。
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研究実績の概要 |
わが国における居住者を主体とする住まいの管理の変遷を明らかにし、これからの持続可能な住まいの管理について考察して、社会的なシステムを提案することを本研究の目的としている。 昨年度に引き続き、第二次世界大戦後の住居管理に対する居住者の意識および実践に視点をあて、人々の考え方、社会の様子、時代の流行が表れやすく、生活に影響を与えると考えられる婦人雑誌掲載記事を対象とした。今年度は婦人雑誌『暮しの手帖』を対象とした。昨年度行った第2世紀を含む、創刊から2023年発刊までの427冊を対象として、住まいや住生活、家事に関する記事、住まいの管理に関する内容や当時の取り組みなどを把握し、居住者主体の住まいの管理の変遷を検討した。 創刊初期は、衣食住をまとめた内容で「生活・暮らし方」「住生活」に分類される記事が多かった。1970年代にかけて狭い住宅での暮らしが対象となりやすく、棚や家具の製作を勧める記事も多かった。また、連載記事はコンスタントに掲載されており、建築家の住宅への雑感や女性の視点を重視した台所の設計、家事や暮らし方のヒントなどであった。また、近年に近づくにつれ、「住居管理」に関する記事の掲載割合が高くなっていた。「住居管理」の内訳では、「掃除・清掃」が約6割と多く、次いで「整理整頓」「補修・修繕」であった。掃除を科学的に捉え、道具の重要性が述べられており、2000年以降は時短や手軽につながる内容が多かった。また、広告を掲載しないことから商品紹介や商品テストは生活者の視点から行われており、メーカーへの要望が挙げられていた。このように、戦後の住宅不足から住宅の質の向上、一方で、使い捨てや環境問題などを背景に、住まいの管理の考え方や実践の変化を婦人雑誌記事から読み取ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的には、1948年から2023年に発刊された婦人雑誌『暮しの手帖』427冊を閲覧し、住まい、住宅、住生活、住居管理、住環境、家計や家事に関する記事の分析から、その内容や当時の取り組みなどを把握した。対象記事1187件について、生活・暮らし方、住生活、住居管理、住環境・設備など「家庭生活」に関する内容が約9割を占めていた。戦後を大きく4時期に区分してみると、1948年から1959年は戦後の住宅難や狭いながらも住まいがあることへの思いに関する記事、1960年から1979年は狭い住宅での暮らし方の工夫や、住居管理を含む家事の工夫、日曜大工での家具製作など、1980年から1999年は快適性や環境問題に関すること、2000年以降は住居管理においては掃除・清掃としてこまめな掃除や手軽な掃除に関することが掲載されており、生活や社会の変化とともに内容もかわり、住まいの管理は対象が狭く限定的で、手軽さに視点が移っていることが明らかとなった。 また、商品テストに特徴をもつ『暮しの手帖』において、1961年に「電気掃除機をテストする」から2000年「<排気カット>という掃除機を使ってみると・・・」まで20記事が掲載されていた。1960年代は、新しい掃除道具である電気掃除機に対する生活者の思いが、メーカーに向けられていた。掃除機の性能向上を評価しつつ、それぞれの時代の住宅の様子や掃除の仕方を考慮しながら改善点が挙げられていた。 『暮しの手帖』2世紀の検討結果を家政学会(2023年5月)で口頭発表した。令和4年度に日本家政学会に投稿した論文が掲載された(2023年7月)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず『暮しの手帖』の検討結果を学会発表するとともに論文としてまとめる。そして、『婦人之友』、『暮しの手帖』の読み取りを総括して、第二次世界大戦後から現在に至る約75年間における住まいや住生活、家計や家事に関する記事の分析から、住まいの管理に関する内容や当時の取り組みなどを把握し、住まいの管理の変遷をまとめる。そして、社会の変化を行政データ等より把握して、それらとの関連を整理して考察を深める。また、住まいに関する教育について、家庭科教育から検討した結果を基礎として、住まいの管理に関わる教科書の記述内容およびその変遷を明らかにして、検討を深める。 また、住まいの手入れの道具および住宅の材料等の変化と住まいの管理の関係を読み解く。住まいの手入れの道具や方法について、掃除道具をはじめとする住まいの手入れに関わる道具の変化や家電製品の普及の実態とともに、生活労働の変化、家事労働や清掃時間の変化にも着目して検討を進める。材料に加えて、設備や間取りの変化、住宅の商品化についても対象とする。これらは、材料メーカーや設備メーカーへのヒアリングおよび関連企業の報告書や社史などの文献調査より検討する。 得られた結果を取りまとめ、学会等で成果の発表を行う。
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