研究課題/領域番号 |
21K02141
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
|
研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
和泉 秀彦 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 教授 (80351211)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 鶏卵 / アレルゲン / 溶解性 / アレルギー |
研究開始時の研究の概要 |
鶏卵アレルギー児には、ゆで卵を用いて経口免疫療法(OIT)が実施されており、OIT後に摂取可能となった鶏卵量を含む加工食品の摂取を推奨する場合が多い。その際に、摂取可能な鶏卵量を含むクッキーを摂取した場合には無症状がであったのに対し、同量の鶏卵を含むボーロでは症状が誘発された事例が報告された。この症状の違いは、鶏卵タンパク質が副素材と混ぜることで溶解が変化するのではないかと仮定し、本研究では鶏卵加工食品中でのアレルゲンの溶解性の違いを明らかにするとともに、それらの消化性・吸収性についても解明する。さらにその溶解性とアレルギー誘発との関連、およびOITに有効な加工法を見出すことを目的とする。
|
研究実績の概要 |
2021年度の研究において、鶏卵白を小麦粉、米粉、および片栗粉と混ぜ、焼成してモデル鶏卵加工食品(小麦クッキー、米粉クッキー、卵ボーロ)を作製し、鶏卵白以外の副素材の違いにより、鶏卵白タンパク質の溶解性の違いがあることが明らかとなった。タンパク質を含有する小麦粉や米粉を副素材として使用すると、鶏卵白タンパク質のほとんどが不溶化するのに対して、タンパク質をほとんど含有しない片栗粉では、鶏卵白タンパク質は一部可溶化していることを見出した。 そこで、2022年度は、片栗粉(60g)に対して卵白(10もしくは20g)及び卵黄(10もしくは30g)を混捏し、オーブンで焼成(170℃、15分)することでモデル鶏卵加工食品を作製した(全4種)。凍結乾燥後の試料中のタンパク質量は、ケルダール法により定量した。試料中の卵白タンパク質量が等しくなるように試料を量り取り、塩溶性タンパク質をPBS溶液、不溶性タンパク質をSDS+urea溶液及び2-メルカプトエタノール(2-ME)溶液にて段階的に抽出した。その後、SDS-PAGEでタンパク質の組成及び溶解性を解析した。また、Lowry法で塩溶性タンパク質量を定量した。 SDS-PAGEの結果、全ての試料においてPBS画分よりもSDS+urea溶液画分及び2-ME溶液画分でバンドが濃く検出された。PBS画分のLowry法の結果、同じ卵白含有量の試料間で比較すると、卵黄含有量が多い試料の方が塩溶性タンパク質量は多かった。一方で、PBS画分のSDS-PAGEの結果、卵黄含有量が多い試料の方がオボアルブミン(OVA)と推定されるバンドは薄かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの成果により鶏卵白タンパク質は、他のタンパク質の存在により、不溶化することは明らかとなった。タンパク質の消化性は、タンパク質の未変性、変性、不溶化が寄与している可能性があるが、精製した特定の鶏卵白タンパク質(オボアルブミン、オボムコイド)を、完全に変性および不溶化させる方法を確立させることに手間がかかり、消化性および吸収性の実験になかなか取り掛かれない状態であった。
|
今後の研究の推進方策 |
鶏卵アレルギーにおける主要アレルゲンであるオボアルブミンおよびオボムコイドを変性あるいは不溶化した試料を作製し、その消化性を未変性状態のもものと比較する。さらにそれらをマウスに経口投与した後、小腸を取り出し内容物をPBSで回収して、SDS-PAGEおよび卵白アレルゲンに対する特異抗体を用いて、卵白アレルゲンの小腸内での状態を解析する。さらにそれらを胃内投与し、門脈血あるいは末梢血を採取した後、吸収された鶏卵アレルゲン量を阻害ELISAあるいはサンドイッチELISAにより定量する。 未変性、変性および不溶化卵白アレルゲンの消化性および吸収性に顕著な差異が認められれば、卵白に対するアレルギー反応にも影響を及ぼすことが考えられる。そこで、まずマウスにオボアルブミンあるいはオボムコイドを繰り返し腹腔投与し、アレルギーを誘導する。感作されたかどうかは、血中のアレルゲン特異IgEを測定することに判断する。アレルギーマウスに対して、各試料を経口投与した後のアレルギー反応について直腸温度、症状観察(死亡・痙攣・不自然な呼吸・行動減少・鼻や頭を掻く)、自発運動量などの項目について解析する。
|