研究課題/領域番号 |
21K02147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分08030:家政学および生活科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
乾 滋 信州大学, 学術研究院繊維学系, 特任教授 (10356496)
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研究分担者 |
堀場 洋輔 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (00345761)
召田 優子 長野工業高等専門学校, 機械ロボティクス系, 准教授 (20757893)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 立体裁断 / 仮想空間 / 型紙設計 / ダーツ / 輪郭線 / 襟ぐり線 / 袖ぐり線 / ネックライン / 仮想化 / Virtual Reality / アパレルシミュレーション / マンマシンインターフェース |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は衣服の部品である型紙形状の設計手法を仮想化することで,コンピュータ内部で衣服の設計・試作・試着を行うことを目的としている.型紙設計の手法としては,平面作図と立体裁断があるが,ここでは立体裁断の仮想化をVRなどの技術を用い,現実世界と同じ操作で設計のできるシステムを目指している.基礎的なシステムは構築しているので,今回は衣服の各部位の型紙を作成できるようにシステムの拡張を行う.立体裁断は個々人にフィットする心地良い衣服を設計することに適している.このことが実現すると,立体裁断の効率が飛躍的に向上し,サステナブルな社会に貢献することが期待される.
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研究実績の概要 |
本研究は、衣服の設計図である型紙の制作手法の革新を図るものである。型紙作成の手法は平面製図と立体裁断の2手法があるが、本研究では立体裁断を扱う。従来は、人や人台に布を添わせて切り取ることで型紙を作成していたが、これを仮想空間内で実現することを目的としている。先行研究では基本的な型紙設計が可能なシステムを構築しているが、実現した機能が基本的なものに限られていたため、作成可能な複種が限定されていた。そのためより汎用的で様々な服種の型紙設計が可能となるシステムを目指している。そのために必要な主要な拡張が、 “任意の位置で任意の方向にダーツをとることのできる機能”であり、“様々な輪郭の切り取りが可能である機能”である。ダーツとは布に切れ込みを入れて縫い合わせることで衣服を身体の立体形状に沿わせるための切れ込みのことであり、型紙を設計するための基本的な要素である。システム内で任意のダーツを設定できることが、衣服設計にとって必要不可欠である。このために、3次元空間内の仮想的な布の任意の点において任意の方向に任意の大きさのダーツを設定するための機能を構築した。また、輪郭の切り取りについては、人台の中心線などによる外側部分の切り取りは先行研究で実現している。しかし、これに加えて襟ぐり線や袖ぐり線などの他の型紙部品との縫合のある部分の輪郭については、型紙として自然な形状として設定するための処理は外側の輪郭線のように単純な処理では実現できない。これらの部分は3次元空間内に曲線を設定し、それに沿って型紙の輪郭を切り取ることが必要となる。これらの個々の基本的な機能は前年度までにほぼ実現することができた。本年度はこれらの機能をシステムに組み込み操作することができるように統合することができた。このことから、全体的にはおおむね順調に進展していると結論づけることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:先行研究ではコンピュータ内の仮想空間において基本的な型紙設計が可能なシステムを構築している。このシステムでは、布、人台、人間の手など、立体裁断を構成する要素をコンピュータ内にモデル化し、これらのモデルを用いて立体裁断の基本的な操作を行うことのできるシステムを構築した。しかし、このシステムに備えられている機能は基本的なものであるため、様々な服種の型紙を設計するためには不十分で、これらの機能を追加・拡張する必要があった。そのための追加・拡張が「研究実績の内容」の項で述べたような内容である。本研究において、これらの機能の追加・拡張を行い、個々の機能を構築し、これらを統合してシステムを構築することができた。そのため、進捗状況としては概ね順調と考えている。システム全体としてみると、後の項でも述べるように必要な項目がいくつか存在する。一つは、布モデルの操作性である。この項目については現状での力学計算の問題点を明らかにし、計算手法を再検討・改善する必要がある。また、ダーツの調整の部分では、力学計算の再現性が重要な要素となるため、現実との比較検討も必要となる。これらの項目は、現状のシステムの性能向上に関連する項目である。また、本システムの妥当性の検討についても先行研究から継続して行なってきた。具体的には布形状計算の妥当性の検証である。シミュレーションによる布モデル形状は現実の布形状を反映していることが必要であるが、これまでこれを定量的に検証した例は見られないため、これを検証する。 以上のことから、全体的にはおおむね順調に進展していると結論づけることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのシステムでは作成できなかった服種を、作成できるようにすることは重要である。そのため現状では、型紙設計を行うための機能の充実に主眼を置い て研究を推進している。上記のように、必要な機能を作成してシステムとして統合した。今後は、システムを用いて上衣の型紙設計を行い、その型紙に基づいて現実の衣服を作成することで、不具合部分などを確認して改善することができると考えられる。一方、ダーツの操作などにおいて、手モデルによる布モデルの操作によってダーツの位置や量を調整することは本システムの重要な機能の一つである。現状では布モデルが非常に柔らかく感じられ、操作を行うためにはかなりの慣れを必要とする状況である。そのため操作性の向上に取り組む必要がある。また、本システムでは力学計算によって衣服形状を再現している。この力学形状の再現性を評価・確認することも重要な要因であるため、再現性の向上に取りくむことも必要である。
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