研究課題/領域番号 |
21K02184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
土井 貴子 岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (00413568)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 労働者教育協会 / 成人教育 / イギリス / 全英教師組合 / 基礎学校教師 / 教員組合 / 成人教育史 / 労働者成人教育協会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,1903年にイギリスで設立された成人教育団体である労働者教育協会(WEA)に焦点を当て,労働者教育協会を学校教育の伸展の中に位置づけ,成人教育と学校教育の関係を明らかにしようとするものである。とくに,1918年教育法の制定とそれによる18歳までの補習学校の義務化,学校教育福祉領域の拡大に着目し,労働者教育協会が果たした役割について検討する。その際,労働者教育協会の中央当局が何を主張し,どのような活動を展開したのかという全国レベルでの関与と,バーミンガムやマンチェスタといった都市における地方レベルでの関与の双方において,成人教育と学校教育との関係の一側面を実証的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は,労働者教育協会(Workers' Educational Association : 以下WEAと略記)に焦点を当て,WEAを学校教育改革の伸展の中に位置づけ,成人教育と学校教育の関係の一側面を実証的に明らかにしようとするものである。WEAはこれまで、大学成人教育史の中に位置づけられ労働者への高等教育機会の組織化に焦点があてられてきた。しかしながら、WEAはその設立当初から教育に関する労働者の要望や意見を調査し、それらを教育院、大学、地方教育当局、教育関係諸団体に示すことによって学校教育を含む教育改革運動の推進も目的の一つとしてきた。 本研究は、第一次大戦下にWEAが加盟団体である全英教師組合(National Union of Teachers:以下NUTと略記)、生活協同組合(co-operative society)、労働組合会議(Trade Union Congress)などの労働者組織と連携して展開した、教職員の削減、学校医療サービスの制限、離学年齢の引き下げ、農業労働に従事する子どもの教育機会をめぐる問題に対する議論と活動を考察している。本研究を進めるにあたってWEAだけでなく、NUTやTUCに残る史料を調査、収集し分析を進めている。NUTの教育委員会議事録によれば、1915年9月から”Economy in Education”と題して教育費の削減問題が議論されている。また1915年12月末にはNUTが、他の教師組合、全国農業者経営者同盟や英国医師会(British Medical Association)といった関連団体、そして生活協同組合とWEAとが参加した全国規模の会合を組織し、教育費削減に反対する運動を展開した。こうした全国規模での運動は、WEAやNUTの地方組織による各地方教育当局への働きかけへとつながっていった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
21年度からの遅れが影響をしている。本年度も渡英して史料調査を実施できた。しかしながら、22年度と同様に2回の渡英を計画段階では予定していたが、本年度も年度末に1回しか実施できなかった。全英教師組合は本研究ではじめて分析対象としたため、ようやく年度末の史料調査で主要な史料を収集することができた。しかしながら、ウォリック大学等に残る全英教師組合の主たる史料はマイクロフィルムで保存されていたものをPDFにして持ち帰っている。そのため、分析に時間がかかっている。こうした状況のため,研究の進捗は当初の見込みよりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、全英教師組合(NUT)や生活協同組合と連携した労働者教育協会(WEA)による教育費削減反対の議論を第一次世界大戦下の社会のなかで検討し、その成果をまとめる。WEAとTUCは,何を主張したのか、どのような論理で教育費削減反対を訴えたのか、かれらの議論と活動を実証的に明らかにし、論文にまとめる。主たる史料は、WEAの年次報告書、機関紙、パンフレット、NUTの年次報告書、教育委員会議事録、機関紙である。1915年から1918年までの史料を引き続き重点的に分析する。また、TUCや生活協同組合の1915-18年の次集会等の史料を収集し、複数の労働者組織の史料から分析をすすめる予定である。 WEAはこれまで、主としてリベラル・アダルト・エデュケーションを推進した労働者成人教育団体と捉えられてきた。WEAによる大学チュートリアル・クラス運動は、高等教育を受けた後に「仲間への奉仕」のために自らの階級に戻り、「自分の階級と社会一般の向上」に寄与することをめざす労働者たちの教育運動と評価されてきた。本研究で取り上げているWEAの教育費削減反対運動は、「仲間のために」を標榜する同団体のあり方とどのようにつながるのか検討する。自分たち労働者階級の子どもの利益を守るための反対運動を分析することは、WEAの新たな側面を明らかにすることにつながると考える。合わせて、学校教育をめぐる課題に連携して取り組むなかで、WEAがTUCや生活協同組合といった労働者組織の結節点となっていたのか考察する。
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