研究課題/領域番号 |
21K02186
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
圓入 智仁 中村学園大学, 教育学部, 教授 (00413617)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | タイ / ルークスア / ナショナリズム教育 / ラーマ6世 / ラーマ7世 / 子ども / ラーマ7世 / 立憲革命 / 人民党 / 第2次世界大戦 |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀前半のタイにおける、王位継承や立憲革命、第2次世界大戦の勃発など政治体制の移行や、政治状況の変化によって、子どもの組織であるルークスアを通した「民族・宗教・国王」からなる「三位一体論」に関する教育内容の変遷、また、その教育を受けた子どもたちの受け止め方を、当時の資料に基づいて解明する。 先行研究は、絶対王政期のルークスアが、公定ナショナリズムの典型的な教育施策であり、現在に至るまで、ルークスアがタイのナショナリズム教育に重要な役割を果たしていると指摘する。しかし、それらは主に第2次世界大戦後の資料に依拠している。本研究は当時の公文書や関係団体の機関誌などを分析し、先行研究を乗り越える。
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研究実績の概要 |
研究3年目である本年度は、論文執筆の他に2度にわたってタイに渡航して資料調査をすることができた。 5月の調査では、第二次世界大戦下においてタイの子ども組織ルークスアを吸収した青少年の軍事組織「ユワチョン・タハーン」(男子の組織、女子は「ユワナーリー」)に関する史料を探索した。タイ国立図書館では1936年の中学3年生向けの道徳教育に関する冊子、1937年のユワチョン・タハーンの教育カリキュラム、1939年のユワチョン・タハーンのカリキュラムに沿ったガスマスク使用法に関する冊子、戦前のルークスアやその大人組織スアパーとユワチョン・タハーンを関連させた論考、そして1940年から翌年までの雑誌『ユワチョン・タハーン』を発見し、必要な箇所を写真撮影できた。また、チュラーロンコーン大学の図書館では第二次大戦下のタイを描いた冊子や、チュラーロンコーン大学の学内誌におけるユワチョン・タハーンに関する記事を発見することができた。その他、ルークスアに関する未見の資料も見つけた。これらについても写真撮影した。 2月の調査では、バンコク市内の(古)書店を回って必要な書籍を購入すると共に、主にタマサート大学の図書館で、20年以上探していた書籍『スアパー・ルークスア教範』を発見した。この本を含め、本研究に必要な複数の書籍の複写を入手できた。また、5月に続いてタイ国立図書館でも資料の写真撮影をした。 これまでの研究成果として、単著論文を2本発表した。1本目では、1910年代から1920年代にかけての、タイのルークスアと日本の少年団の制度の違いを比較検討した。両者は英国に起源を持つボーイスカウトに由来するが、国王が組織を設立したタイと、民間の篤志家が主に設立した日本の、相違点を明確にした。また、日本の少年団の指導者による「東南アジア観」の第二次世界大戦前と戦中の違いについても、単著論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響はほぼなくなったが、研究初年度と2年目にタイに渡航できず、資料を収集できなかった影響が続いている。収集を予定していた資料を十分に入手できていない状態のまま、研究に取り組まなければならない状態である。 それでも、今年度は本研究課題として初めてタイで資料収集を行うことができた。新型コロナウイルス感染症が蔓延する前にタイの大学図書館や国立図書館などで資料調査したときよりも、閲覧手続きに時間を要するようになっている印象があった。そのため、資料調査の進捗も思うようにはかどっていない。引き続きの資料調査と、それらの資料の精査をする必要がある。また、複数の論文発表や口頭発表発表を行ったが、もともとは研究2年目に行うべきものであったと考えている。 現在、所属機関における授業を対面だけでなくオンラインを含めたハイブリッド形式で行っており、その準備に通常以上の時間を要している。そのため、タイ語を集中的に読むためのまとまった時間を確保することができにくい状況が続いている。 以上の理由により、全体的な進捗状況はやや遅れていると評価する。 なお、本研究の成果を一般の方々に向けて発信する機会もあり、研究計画当初には想定できなかった取り組みだったことを付言しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本来、この研究課題は3年間で取り組むことを予定していた。新型コロナウイルス感染症の影響などにより、予定していたタイでの資料調査ができないなど、進捗状況が予定よりやや遅れている。延長を認めていただいた次年度は、改めてタイでの資料調査を行うと共に、これまで収集した資料などに基づいて複数の研究成果を発表し、本研究課題の成果を集めた報告書を発行できるように、時間をかけて研究に取り組みたい。その際、これまで日本研究課題において収集した文献や資料を丁寧に読み込み、研究成果に反映させたい。
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