研究課題/領域番号 |
21K02224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
前田 耕司 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60219269)
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研究分担者 |
佐藤 千津 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20271356)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 教員研修 / Two-Way Learning / 先住民族の権利に関する国際連合宣言 / オーストラリア教師の専門性基準 / ポストコロニアル / Two-Way Science / 西オーストラリア州教育省 / ポストコロニアリズム / 先住民族 / アボリジナル / 先住民族の権利宣言 / オーストラリアの教師の専門性基準 / モナシュ大学 / 教師教育 / 文化的に安全で歓迎される環境 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、先住民族アボリジナルの主体形成を意図した教師教育がどのように構築されているか、2007年に国連総会で採択された先住民族の権利宣言をポストコロニアリズムの指標とし、考察する。 ①「オーストラリアの教師の専門性基準」に権利宣言の規定がどのように反映されているか、②教員養成における授業指針の中に権利宣言の視点がどのように組み込まれているか、③②を受けて大学の講義では権利宣言の視点からどのような授業が展開されているか、④学校における学習指導に権利宣がどう位置づいているか、といった要件の相互関連性を教師の専門性に即して実証的に分析し、先住民族主体の教師教育のオーストラリアモデルを抽出する。
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研究実績の概要 |
2023年9月2日に、釧路公立大学で開催された日本学習社会学会創立20周年記念シンポジウム(テーマ:共生社会における複合的な生涯学習支援の可能性 -先住民族への支援の課題について考える)-において、2023年8月23日にクイーンズランド工科大のアンダーソン教授教授から入手した資料に基づき「先住民族との共生とパートナーシップ―オーストラリアの先住民族主体の教育からー」という演題で研究報告を行った。2007年の国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」をポストコロニアルの起点法的な枠組みとして 、先住民族(Australian First Nations)独自の価値体系を組み入れた先住民族と非先住民族との和解を促進するパートナーシップの関係を構築する双方向のTwo-Way Learningの検討を通して、先住民族主体の教師教育の視点から先住民族との共生モデルの可能性について考察を行った。例えば、国連宣言を実現するに当たり、先住民族主体の教育体系を構築する上で、「全豪教師の専門性基準」などを設定して取り組んでいる状況について現地調査を踏まえて具体的に明らかにした。「全豪教師の専門性基準」は、国連宣言の15条を反映したもので、先住民族の児童・生徒に向き合うための教師の態度や教授方法を示すガイドラインとして位置づけられる。 また、2022年の国際教育学会第33回研究大会の課題研究Ⅱの報告2「アボリジナル主体のオーストラリアの教師教育─ポストコロニアルの視点から─」(オンライン開催)が2023年9月上梓の第29集の学会紀要に収録された。オーストラリアでは、先住民族の権利宣言の文脈を受けて、非アボリジナル社会に統合されているアボリジナルの児童・生徒に向き合うための教師教育の仕組みがどのように構築されているのであろうか。主としてモナシュ大学の取り組みの考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響による渡豪の制限により、オーストラリア先住民族現地調査を延期せざるを得なかった。当初、予定していたノーザンテリトリーのアボリジナル・コミュニティやトーレス海峡諸島系民族のコミュニテイの学校に勤務するアボリジナル教師や非アボリジナル教師の教育実践に関する実態調査を行うことができず、調査計画の変更を余儀なくなれた。 したがって、昨年の8月20日~23日のフィールドワークでは、トーレス海峡諸島系民族が集住するとされるクイーンズランド州のクイーンズランド工科大学(QUT)クリエイティブ産業・教育・社会正義学部のDr. Juliana Mclaughlinとミーティングを持った。QUTは先住民族研究に特化した研究所を有し、当該分野において先進的な研究と実践の蓄積がある。また、先住民族出身のDr. Mclaughlinはポストコロニアルの視点から教師教育支援について研究と実践を行っている。今回は、先住民族出身学生に対する教師教育支援体制及び具体的な教育支援内容などについて調査するとともに、今後の研究の展開可能性について意見交換を行った。 次に、まず多様性の点で優れた教育実践を有するグリフィス大学を訪れ、新設された先住民族研究部門(Indigenous Research Unit)のProf. Peter Anderson及びDr. Thu Pham(Senior Research Assistant)とミーティングを持った。Prof. Andersonは本研究課題の研究協力者でもあるが、グリフィス大学における教師教育の実態について、コロナ禍での取組状況を含めて調査を行うとともに、新たな動向であるReferendum 2023(法体系における先住民族に関する条項新設)が今後の先住民族政策及び教師教育政策に与える影響等について意見交換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として2つの学会における研究成果の報告とオーストラリアの研究者との研究成果の報告( Post-Imperial Perspectives on Indigenous Education: Lessons from Japan and Australia翻訳本の出版)および本科研の関連項目を踏まえた事典の出版を考えている。 まず、学会発表については、2024年9月6日~8日にかけて早稲田大学で開催される日本社会教育学会第71回研究大会で本科研に基づく研究成果の報告を行う予定である。次に、2024年11月(日程は未定)にオーストラリアのMonash Universityで開催予定のOceania Comparative & International Education Society (OCIES)の第52回 年次カンファレンスにおいて本科研の研究成果について研究発表を行う予定である。次いで、研究成果報告の一部として、本年度内に本科研の研究協力者であるグリフィス大学のアンダーソン教授も編者の一人であるAnderson,P.J., Maeda,K., Diamond,Z.M. and Sato C. (Eds.) (2021)Post-Imperial Perspectives on Indigenous Education: Lessons from Japan and Australia, Routledge.の翻訳書を明石書店から上梓する予定である。また、現在校正中であり、日本社会教育学会70周年記念事業として東洋館出版社から出版される『現代社会教育事典』の執筆依頼項目「多文化・多民族共生と社会教育」には本科研の研究成果の一部が反映されている。
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